プネー日本語教育の隠れたメッカ、ティラク・マハーラーシュトラ大学日本語学部

 

Posted on 08 Aug 2019 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

写真はアトレ学部長よりご提供いただきました。昨年のBA卒業生だそうです。



ティラク・マハーラーシュトラ大学(Tilak Maharashtra Vidyapeeth、通称TMV、ティマヴィ)について、思うところを綴ってみたい。

Tilak Maharashtra Vidyapeeth

現在、夫の姪Rちゃんが、3年次に在学して日本語を学んでいる大学だ。
これが良い意味で普通じゃない、おもしろい大学なので、改めて紹介させていただきたい。

どんな大学か。
TMV日本語学部シュリカント・アトレ(Shrikant Atre)学部長に直撃メール取材したところによると、1921年にインド建国の父マハートマー・ガーンディー(Mahatma Gandhi)が、インド伝統学問であるアーユルヴェーダ、数学、サンスクリット語を教授することを目的に創設した由緒ある教育機関が前身。
1987年から「Deemed to Be University」、つまり「みなし大学」となり、毎年インド教育評価認証審議会(National Assessment and Accreditation Council、NAAC)による教育内容の審査を受けている(2018年の格付けはB++++)。
現在の学部数は12、学生数3,000人。

うち日本語学部(学士課程、Bachelor of Arts [BA])の設立年は2008年(2011年より修士課程 [Master of Arts、MA] も開設)で、現役学生数は2019年8月現在、BAが110人、MAが11人。
学部の設立以前は2004年から社会人向けに夜間などのパートタイムで日本語教育を実施していた。
これまでの日本語学部学生数、つまり日本語能力人材の輩出数は、累計3,000人にのぼる。

日本語学部BA課程に関しては入学試験はなく、高校(High SchoolまたはJuniour College)卒業資格があって、授業料を支払えば、ほぼ誰でも入学できる(MA課程は入試あり)。
入学希望者が定員を上回る場合は、入試ではなく高校卒業時試験の成績順で合否が判定される仕組み。
語学専門学校のようでもあるが、修了者には正式な学位(学士や修士)が授与される点が大きく異なる。
その授業料も、3年間で15万ルピーほど(2019年現在、学士と修士ともに昼間の一般課程の授業料; このほかに夕方からのコースもあり)と、信じられないほどリーズナブル。

インド人講師19名のほか、国際交流基金派遣の日本語教師以下、3名の日本人講師が常駐している。
国立では大阪大学、金沢大学、広島大学、そして埼玉大学、私立では関西外国語大学、亜細亜大学、神田外語大学、事業創造大学院大学(新潟県; N1合格者を対象に文科省による国費で2年間のMBAコースを実施、TMVからは過去4名が留学)などの日本の大学と提携している。
こうした大学からは日本人学生も交換留学生として渡印してきて、数週間ないし1年程度在学して学んでいるので、入学と同時に日本人講師とはもちろん、同年代の日本人の若者と生の交流ができる。

このように、日本の文部科学省や国際交流基金、国公立、私立の大学や教育機関と密に連携しているイメージがある。
人材派遣会社からの勧誘も直接入り、就職斡旋やフェアへの招待のほか、経済産業省主導の国際化促進インターンシップ事業(Rちゃんも狭き門をかいくぐり今年度のインターン生に選ばれ、10月より大阪の会社で2カ月間お世話になる予定)など、学生が応募できる様々なプログラムを積極的に紹介している。

「がんばれば報われる」という仕組みになっているのは、この究極の弱肉強食、熾烈な競争社会インドにおいては、非常に重要なポイントだろう。
学校側からの情報提供よりも、学生同士での情報共有の方が盛んなイメージで、わたしのように偏屈な者でない限り、普通に学生生活を送っていれば次々に有益な機会を手にすることができるようになっていそうだ。

日本の大使館推薦国費留学生(日本語・日本文化研修留学生、日研生)として、全国各地の国立大学で高度な日本語を学習する機会を獲得する学生も毎年何人も輩出している。
今年はデリーの名門ジャワハルラール・ネール大学日本語学部を上回る学生が、日本に1年間の国費留学をすることになっている。

個人的には、こうしたインド人学生は日本各地で質の高く手厚い待遇を受け、快適で充実した学生生活を送れるようになっている一方で、同じ天秤にかけるべきではないのかもしれないが、来プネーして学んでいる日本人学生の住環境等は決して快適なものとは言えないようなので、そうした生活面での配慮やサポートをもう少し充実させた方がよいのではないかとは思う。

また、TMVで学ぶ学生たちは卒業時の就職率9割以上(うち日本や日本系の企業に就職できるのはごく一部)ということで、大学生活が恵まれている分、社会に出てからは自分の力で何もかも開拓しなければならなくなることを、ひとりひとりがしっかり自覚し、行動するように準備しておかなければならないだろう。

改めて、アトレ学部長にはお忙しいところ、数時間以内にご回答いただき、この場を借りてお礼を申しあげたい。



プネー出身の言語学者、国立国語研究所のプラシャント・パルデシ教授も
たびたび来校の上、特別講義されている。

 

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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