物乞い経験のある女性が、生涯をかけて貯めた60万ルピー

 

Posted on 22 Feb 2019 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

金額の多寡とか、貧乏とか金持ちとか、そんなものは年齢と同様、数字に過ぎないのだなということを日々教えてもらえる国インドです。※写真はバンコク中心部エーラーワン寺院近くのインドラ神社で、地元の方が熱心に参拝されていました。



カシミール地方プルワマ(Pulwama)で14日に発生した、インド治安部隊である「中央警察予備隊(Central Reserve Police Force:CRPF)」の車列を狙った自爆テロ事件と、その後のパキスタンとの緊張状態は、日本でも報じられている通りである。

インドが強硬 「パキスタンが関与」 カシミールの自爆テロ巡り - 毎日新聞

インド北部でテロ捜査中に銃撃戦 治安部隊要員ら7人死亡 - 毎日新聞


テロ行為は卑劣で許し難く、もし自分の家族が巻き込まれていたらと考えると胸が苦しい。
しかしパキスタンもインドも、もとはひとつの国であり、文化も民族も宗教も繋がりがあるのだから、近付く総選挙を睨み、国民の大部分を占めるヒンドゥー教徒たちの歓心を買うことばかりに躍起になっている某インド首相以外に、両国間での憎悪や溝が拡大することは誰も望んでいないと思う。

同時に、わたしたちが日々、無意識にも「取るに足らない存在」だと決めつけている対象はいないだろうか。

というのも本日付のNDTVで、かつて物乞いでその日暮らしをしていた女性が、実はコツコツと貯金していて、その生涯をかけて貯めた60万ルピーをカシミール地方で発生したテロ事件の被害者に寄付したという話題が紹介されていた。

Beggar's Life Savings Of Rs. 6 Lakh Donated To Families Of CRPF Soldiers

かつて路上生活を送り、道行く人に物乞いをしないと生きられない生活を送っていた、この女性はナンディニ・シャルマ(Nandini Sharma)さん。
昨年、ラジャスターン州アジメール(Ajmer)近郊の村で亡くなったが、生前、少ない収入の中からコツコツと貯金をしており、その額は66万ルピーを超えていた。
亡くなる半年前、女性は遺言とともに「死後、高尚な目的のためにこのお金を役立てて欲しい」と、通っていた寺院の管財人に貯金を託していた。

そこで寺院はナンディニさんの遺志を受け、ラジャスターン州首相の救済基金に貯金を全額寄付することにした。
この基金は、テロ攻撃で命を落としたCRPF隊員の遺族らへの援助資金として役立てられることになっている。

わたしたちが暮らすインドの都市には、依然として街角にはたくさんの人々が、物乞いをしていたり、危険な交差点に立って、売れるかどうか分からないような商品を売りに来たり、路上生活をしていたりする。
それが「インドだから」存在すると思っているのかもしれないが、実は「見えないからと言って存在しないわけではない」。
日本にだって、どこの国にも、見放された人々はいるはずだ。
もっと言えば、今は安泰な生活を享受しているかに見えるわたしたちにも、いつ何が起こるか分からないし、貧困や混乱に陥ることはあり得る。

自分の勝手な基準で「取るに足らない存在」として見くびってきた相手が、実は計り知れない力を秘めているかもしれないし、将来そのような存在になることだってある。
常にこのことを念頭に置いて、人との関わりを考えたい。

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Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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