大好きなタイの中でも、ちょっと苦手な部分
Posted on 17 Feb 2019 21:00 in トラベルASKSiddhi by Yoko Deshmukh
写真は夜のパタヤは「Walking Street」です。時間帯が早かったため、営業している店はまばらだったが、観光客であふれ、トルコアイスやドネルケバブなど、トルコ料理の屋台が人気でした。
この記事がASKSiddhi(アスクスィッディ)に公開されるころには、1週間あまりのタイ滞在を終え、ムンバイーに向かうエア・インディア航空機で空の上にいることだろう。
今回のタイ滞在は少し慌ただしかったし、しかも仕事は通常通り対応していたので、会いたかった友人への連絡が遅れて会えずじまいになってしまったり、バンコク滞在時の秘かな楽しみとしている激痛台湾式(若石法)足裏マッサージに予定したほど通い詰めることができなかったりといった、心残りもあった。
しかしそれ以上に、いろいろと思うところのある旅であった。
旅の始まりに訪れたパタヤは、バンコクから南にわずか〇キロの地点に位置し、日帰りでも行きやすいビーチリゾートということになっている。
何も知らずにパタヤ中心部に滞在していたところ、夕方、下手をしたら早朝でも、ビーチへぶらっと散歩に出かけるたびに、外国人、特に西洋人や日本人と見られる男性たちと、現地女性たちとおぼしきカップルがやたら目に入る。
ビーチ沿いや路地裏には、夕方になるとピンク色の怪しげな照明を灯したゴーゴーバーがずらり開店、露出度の高い服装に派手な化粧を施した女性たちが、道行く外国人男性の腕を取り店に引きずり込もうとする。
また、「Walking Street」という名の一大レッドライト地区があったりして、こちらはすっかり観光地化していた。
これまで幾度となく訪れてきたバンコクでもある程度見慣れた光景のはずだが、「ビーチリゾート」という言葉の魔法からか、街全体がすっかり開放的、というよりも、あからさまに白日の下に様々な欲望の渦を照らし出す。
短い滞在を終えて向かった次の目的地サメット島の滞在先は、島の中心部からずっと離れた奥地にあるファミリーリゾートのようなところだったので、一瞬こうした喧噪の世界を忘れた。
その後バンコクに移動して、よく宿を取っているスクンビット通りを昼夜ともなく歩くと、やはり外国人男性と現地女性のカップルたちがうようよいる。
中には愛情で結ばれている人たちもいるのだろうが、商売関係が圧倒的に目立つので、「外国人とタイ人のカップル」というだけで色眼鏡で見られてしまうのではないか、などと同情し、次の瞬間そういうレッテルを無意識に貼っているわたしこそ色眼鏡で見ていると反省する。
ある日の午前中、大きな商業施設内のスタバで仕事していると、日本人の中年男性グループが大声で、「女」をどこに買いに行くかだの、「相場」はいくらだの、「安い」だの喚き合っている。
スクンビット通りでは子供も通る夜の露店に、際どい造形の玩具類が堂々と並んでいるのを見て考えさせられるが、そういえば彼らの出身国日本では、つい最近までコンビニの一角に成人雑誌が堂々と並べられ、ようやく「オリンピックのために」撤収を決めたぐらいだから同じような感覚なんだろう。
インドに長く暮らすわたしにとって、貧困や衛生をはじめとする諸問題は常に顕在し、それを見た一般の日本人や海外の人から懸念や疑問を投げかけられるたびに、「見えないからと言って存在していないわけではない」ことを強く意識することになる。
タイで見られるあからさまな性風俗関係の商売についても同様のことが言えるが、対象が「女性の消費」であることから、同じ女性としては、あからさまな情景には不快感を禁じ得ない。
もちろん、コンビニの成人雑誌どころか、商売の広告が見渡す限り偏在していたり、誰もが観ているテレビ番組で出演者が嬉々として体験談等を語ったり、また近年は学費のためと称してそうした収入手段に頼る若者が増加している日本についても、やはり悲しい気持ちだ。
なお、この記事で、性風俗産業の存在について、その歴史や社会を取り巻く状況、倫理や心理といったものに無知なわたしが善悪を論じるつもりはない。
正直に感じたこと、考えたことを記録しているまでのことだ。
ただ、「からゆきさん」の話を持ち出すまでもなく、今も昔も従事する人々が抱える背景に、それほど大きな変化はないだろうし、そうすることでしか生きられない人もいると思う。
どの国にも同じような産業が存在していて、それがバンコクのようにあからさまに見えるところと、インドのように極端に見えにくいところがある、というだけのことなんだろう。
付け加えると当事者にとっては、見えることによって衆目や監視の目が集まり、かえって身の安全を確保しやすいという利点もあるに違いない。
しかし、単なる観光客であるわたしにとっては、こうした刺激につい過敏になり、男性がこちらに顔を向けているだけでも気色悪く感じる自意識過剰に陥ってしまうのは精神衛生上よくない。
いわんや女性を「対象」としてしか見ていないような人々は、とても直視できるものではない。
このように自分の中で許容できること、許容できないことが形成されつつあるのは、2010年ごろから何度も渡航する機会に恵まれてきたタイという国が、もはやよその国ではなく、自分の人生の一部になっており、当事者意識が芽生えているからでもあるのだろう。
バンコクの街を歩いてみると、ただでさえ飽和状態であろう土地のあちらこちらで、ビルの建て替えや再開発が進められている。
今後も、首都バンコクはどんどん表情を変え、発展していくのだろう。
どんな街、どんな国になっても、堂々たる歴史と豊かな文化を誇るタイに住む、笑顔が美しくて大好きなタイ人のみんなが、外国から短期間遊びに訪れる誰かの搾取に、陰で泣くようなことが少なくなればいい。
タイにおける風俗産業については、バンコク滞在中にいくつか書籍をチェックしたので、インドに帰国したらKindleで読んでみたい。
ひとまず参考資料を豊富に掲載しているWikipediaリンクを貼っておく。
Prostitution in Thailand - Wikipedia
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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