インドに流れ着いた「ロスト・ジェネレーション」
Posted on 02 Jun 2019 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh
結果が出るまでは割と時間のかかる国なので、チャンスに賭けたら、じっくり腰を据えて付き合ってみましょう。街角の神様もお待ちしています。
今回、日本に来てみたら、「ロスト・ジェネレーション」の特集記事や報道をたびたび見かけるようになっていた。
中でも朝日新聞ポータルの「ロスト・ジェネレーション特集」ランディングページがとても分かりやすい。
ロスジェネ、置き去りの20年 いま再び注目される訳 - 朝日新聞
「ロスト・ジェネレーション」という言葉は、「(引用開始)1990年代後半から2000年代前半の「就職氷河期」に社会に出た世代の呼び名として、日本社会に定着(引用終了)」している。
ここへ来て日本政府が、この世代を対象に何らかの支援を提供する計画があることも分かった。
たった数年間の支援が、困っている人にどの程度の恩恵になるかは疑問だし、わたしも含めた「ロスト・ジェネレーション」たちは、暗く厳しい経済情勢と、理不尽なほどに過酷な競争しか知らず、ゆえにこれらに勝ち残れなかった自らの無力や無能をひたすら責める傾向にある。
役人らによる投げ銭的な、形だけの「支援」であれば、それを受け取ってもなお自己実現できなかったりするとかえって致命傷になりかねない点は注意する必要がある。
しかし、少なくとも日本社会全体の中でも「不利な世代」として認識されるに至っていることは、大きな進歩なのかもしれない。
「ロスト・ジェネレーション」ど真ん中であり、しかも国立大学を中退している「どん詰まり」のわたしが、いまなんとかこの場所に立っていられるのは、インドに来たからに他ならない。
何の取り柄もない若者が「とりあえずインドに行く」など、絵に描いたような飛躍した一歩のようだが、これまでを振り返ってみると、取るべきして取った、ごく自然なステップだったようにも思えてくる。
もしかしたら無意識の生存欲求が、わたしをインドに向かわせたのだろうか。
2003年後半にインドのプネーに移住してから、わたしは「ロスト・ジェネレーション」どころか、日本からのドロップアウトをした。
その決断がどれほど重要なものだったのか、あの時のわたしはほとんど、いやまったく気づいていなかったし、意識していなかった。
「いったんレールを外れると、軌道修正はほぼ無理」とされる日本社会に、こだわる必要はないとは考えていた。
実際には英日・日英翻訳者となったいま、「日本」がなければどうにもならない生活をしている。
皮肉なことだ。
ただし、この仕事にも日本を出てインドに来て、日本との取引が盛んな現地のソフトウェア会社で働くという経験を積んでいなければ、決して就くことはできなかっただろうと断言できる。
細々とした人生の記録は、ここでは割愛するが、インドへの移住により、期待していた以上の大きな収穫を得ることができた。
いまだって成功者と自負できるものでは決してないし、職業的にも精神的にも浮き沈みの激しい日々を送っているが、少なくとも家族や前職場の雇用主や同僚たち、環境やタイミング、そしてまだまだ全然足りていない自らの努力と勤勉で、なんとか生きてはいる。
暗い穴に落ちてしまいそうだった自分を、インドが救ってくれたのだ。
安易にこのようなことを言うのは憚られるが、もし悩み苦しんでいる人がいたら、新しい一歩を踏み出すことは年齢や場所にかかわらず、勇気さえあればいつでもできると伝えたい。
インドを訪問したり、滞在してみたりするのも、もちろん1つの方法だ。
日本人の少ない海外の街に滞在すると、地位や状態がどうであれ、自分が日本を代表する存在であるかのように周囲から見られることになる。
自らの出身地を強く意識するだけでも、これまで抱いたことのない種類の責任感が生まれたりするものだ。
また、例えば就職したりなどして知識層のインド人たちと会話すると、そのほとんどが現在のところ日本人に対して、特別な尊敬の気持ちを抱いていて、尊重してくれる態度を隠さない。
そうしたエネルギーのやり取りによる気持ちの変化が、自信に繫がり、謙虚な気持ちも育み、人格として形成されていくことは、心を開いてさえいれば何歳であっても可能だと思っていて、同じことを自らにも言い聞かせている。
本日最も読まれている記事
1 空前のインド料理ブーム、でもスイーツはノーマークなあなたへ 29 May 2019
2 A Memorable Day in Fukuoka 26 May 2019
3 誰がなんと言おうと追及し続けたい翻訳者としてのキャリア 30 May 2019
4 ポルトガル鉄道のインターネット事前切符予約 26 Oct 2016
5 最近発掘したサリー着こなし9選と、ブラウスになりそうなZARAのクロップドトップ9選 #福岡サリーおしゃれ会 24 May 2019
About the author
|
|
Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
|
User Comments