インド鉄道で、社会の着実な変化を鮮やかに象徴した、ある非常事態

 

Posted on 18 Jan 2019 21:00 in トラベル・インド by Yoko Deshmukh

戸惑いつつも、停滞しつつも、変化を徐々に受け入れているインドに幸あれ。



インド鉄道(Indian Railways)に乗車していた男性客が想定外の事態を迎えた女友達のために思いがけない行動を取り、その要求が速やかに叶えられていく様子がリアルタイムで展開し、大きな喝采を起こしている。

Railways pads up for passenger on period - The Times of India

今月14日、ある女性客がインド鉄道に乗車した長い旅の途上で突然の腹痛に見舞われた。
想定外で月経がやってきたのだった。

それを見た友人はためらうことなく、鉄道省(@RailMinIndia)と鉄道大臣その人(@PiyushGoyal)の公式ツイッター・アカウントにサニタリーパッドと鎮痛剤を手配してもらえないかと希望するツイートを送った。



もちろん状況は生命の危険に及ぶものではなく、公式アカウントに直接メッセージを送る必要はなかったかもしれないが、それでも一般市民による要求が受け入れられ、満たされたという事実が積み上げられていくことが、混沌の価値観が顕在するインドにおいて重要なことだと、各紙ではこの出来事を絶賛している。

「The Times of India」によると、男性がツイートを発信したのは午後11時。
その数分後には、鉄道職員から連絡が入り、必要なもの、乗客名簿上の個人情報と携帯電話を求められた。
午前2時を回ったころ、列車が南インドの主要駅のひとつに到着した時、マイソール管区の職員が現れてサニタリーパッドと鎮痛剤が手渡されたという。
「迅速な対応にとても驚いた。感謝している」男性は述べている。

鉄道警察側は、「ツイートでも『138』をダイヤルすることによっても、緊急事態を通報して欲しい」と説明している。

インド鉄道の対応は称賛に値すると同時に、国内で起きている変化を強調するものである。
わずか10年前には、男性が女性の友人のためにサニタリーパッドを要求するなど、考えられなかったことだろう。
同時に、現代のインドにおいてさえ、誰もが利用するインド鉄道に、女性にとって毎月当たり前に到来するニーズに対応できる設備がほとんど整っていないことを露呈したことにもなる。

インドの光と影を同時に浮き彫りにした、この小さくて大きな出来事は、今のインドを最も鮮やかに象徴するものであるかもしれない。

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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