福岡で2009年のテルグ映画、「マガディーラ勇者転生」を鑑賞

 

Posted on 11 Nov 2018 21:00 in エンターテインメント by Yoko Deshmukh

※個人の感想です。



「マガディーラ勇者転生」とは、今年日本で異例の大ヒットを記録したテルグ映画「バーフバリ」二部作、「伝説誕生」および「王の凱旋」と同じラージャマウリ(S.S. Rajamouli)監督が手掛けた、「原点」と呼称されている2009年の作品だ。
KBCシネマで短期間限定上映中だったところ、福岡在住のAしゃんが誘ってくださったので観に行ってみた。

Magadheera - Wikipedia


Geeta Arts公式YouTubeより15分間のシーン総集編

 

あらすじ等は、上記Wikipediaをはじめ、幾多のサイトで紹介されているので、こちらでは割愛する。
簡単に言うと、愛する人と結ばれることのないまま壮絶な死を遂げた中世の戦士が現代に蘇り、運命を辿りなおすというストーリー。
以下はあくまで、テルグ映画はもちろん、インド映画であろうが何だろうがまったくのド素人であるわたしの、個人的な感想である。

まず鑑賞後の何とも言えない気分を強いて比べると、まだ神奈川県在住者だった2002年ごろ、相模大野図書館でビデオカセットを借りてきたラジニカーント主演作、「パダヤッパ」を観た時の気分と似ていた。
この作品を鑑賞後、圧倒的な異文化感、違和感を抱えながら驚嘆しつつ、爆笑しながら鑑賞したことを憶えている。

しかし、インドに住む前だったあの頃のわたしには、「共感」どころか「理解」の範疇を超えたものであり、両頬を引っぱたかれるような衝撃を受けたことも事実だ。
以来、特に忌避しているわけではないが、これ以外にラジニカーント主演作を含めたタミル映画をほぼ観ていないのである。
「パダヤッパ」はわたしにとってのタミル映画、もといラジニカーント主演作の入口であり出口でもあった。

仮にわたしがインドに住んでおらずインドを知らない人間であって、「マガディーラ」が最初に出会ったテルグ映画であったなら、同様の現象が起きていたかもしれず、当日KBCシネマにいた他の観客の皆様はどういった経緯でこの作品を鑑賞することになり、どう受け止めたのだろうかと、ものすごく気になる。
同時にこの作品を、満を持して日本で公開することを決断したラージャマウリ監督はもちろん、配給会社ツイン(TWIN)さんの思惑に想いを馳せている。

鑑賞中の戸惑いと衝撃、および鑑賞後の脱力感を、少し落ち着いてから分析してみる。
「マガディーラ」はストーリーこそ誰もが結末を予想できる分かりやすいものであるが、間違いなくテルグ語圏ローカル観客を強く意識した作品であり、2009年当時ということを考慮してもツッコミどころ満載の服装センスから、恋愛模様の過剰な甘さ、アクションのキレ不足、ダンスシーンの謎ステップ、ぼてっとした田舎っぽい顔の表情などを見守るところがあり、それがまたある意味でツボであり、魅力であるように感じた。

ただし2018年現在の観客であるわたしたちにとっては、「マガディーラ」は空前絶後の大ヒット作となった「バーフバリ」二部作(2015年、2017年にそれぞれインドで公開)の原点なのだと言われると、戦闘シーンにシヴァ神が登場したり、キメポーズのところでコマが一瞬停止したりといった、なるほどと納得できる効果はいくつか見受けられたので、「バーフバリ」と合わせて観ることで価値が高まり、また楽しいのかもしれない。


なおWikipediaによると「マガディーラ」の脚本家は、プネー郊外にいまも遺跡が残るシンハガード砦を拠点に、タナジ・マルサレ(Tanaji Malusare)将軍率いるマラータ軍と、ジャイ・スィング(Jai Singh)率いるムガル軍との死闘、「シンハガードの戦い」を描いたマラーティー映画にインスピレーションを得た、とある。
ということは「バーフバリ」の原点は、強豪であることで知られるマラータの、戦に倒れた屈強な将軍にあったのだとも言え感慨深い。

「マガディーラ」の主なロケ地がハイダラーバード周辺(一部チェンナイ、ラジャスターン、カルナータカ州等)だったのも好感が持てた。

個人的に文句なしに傑作だったと感じたのは、「基礎テルグ語」を著した山田桂子さんが手掛けた日本語字幕だった。
山田桂子さんは「バーフバリ」の字幕も担当していることは言うまでもない。

最後に、印象に残った点や気になった点を書き留めておく。
- 冒頭のグラマラスなギャル(金のメンドリ)と「ボス(※『ス』にアクセント)」
- 「運命の君」を嫉妬させるためのデート場所がゴールコンダフォート
- マガディーラを演じたラーム・チャラン(Ram Charan)さんと狂気の敵役デーヴ・ギル(Dev Gill、プネー出身)さん、美しい姫君役のカジャル・アガルワル(Kajal Aggarwal)さん3主役はグッドルッキング(演技は...)
- この3人以外についてはメイクからファッション、キャラ作りまで中途半端なのは笑わせるための故意なのか
- わたしは今回も悪役デーヴさん()推し
- 一部明らかにセリフが棒読みの人がいた
- 現代版衣装の普段着感
- 中世版衣装にまさかの化繊っぽさ
- エンドロール(インド人観客はほとんど視聴せず席を立って劇場の出口に向かっている部分)では、ラージャマウリ監督も混じってキャスト陣が謎のダンス
- 一部インド青少年(成人)の教育上よろしくない表現もあり(女性を殴る、引っぱたく、消費対象のような表現等)
- 400年前の太鼓が...



 

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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