ご飯を水に浸して発酵させ、酸味を楽しむベンガルのパンタ・バート

 

Posted on 24 Jul 2021 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

発酵の仕方を間違えるとひどい味になりそうで、怖くて挑戦できませんが、マハーラーシュトラ州ならダヒ・バート(curd rice)みたいなものかな。写真はチェンナイのマレーシア料理店でいただいたナシレマです。



西ベンガル州をはじめインド東部で広く食されているという「パンタ・バート(Panta Bhat)」という聞き慣れないライス料理を「NDTV Food」が紹介していたが、これはいつかどなたかに伺ったことのある「水飯(みずめし)」ってやつなのかなと思った。
つくづく、インドは広く、食習慣は多様だ(日本も東西南北津々浦々、巡ってみれば、そうなのだろう)。

Panta Bhat Recipe: History, Myths And What To Pair With This Fermented Rice Dish

パンタ・バートとは炊いたご飯に同量程度の水を加え、酸っぱくなるまで発酵させたものだそうだ。

マハーラーシュトラ州出身の夫を含め、インド人でも知らない人の多いパンタ・バートは、「MasterChef Australia」という〇〇で「スモークライスウォーター(Smoked Rice Water)」と紹介されると、一躍注目されるようになったようだ。
しかし元記事では映画「Namkeen(塩スナック)」の歌「Aanki Chali, Baanki Chali」を観るがよいと勧めていた。
さっそく検索してみたら、若き日のシャルミラ・タゴール(Sharmila Tagore)さんとシャバナ・アズミ(Shabana Azmi)さんが楽しそうにパンタ・バートを作っている、かわいらしい動画がヒットした。



 

パンタ・バートがベンガルの人々の日々の食卓に欠かせないものであることが、この華麗かつ素朴な動画からもよくうかがい知ることができる。
ちなみに、歌の中で引用されている「Tatka Begun Pora」とは、パンタ・バートの付け合わせとして最も愛されている、焼きなすのマスタードオイル和えだそう。

しかし一般的には、パンタ・バートとはあくまで「手抜き料理」であり、前夜の残り物のご飯に水を加えて1時間から最大24時間ほど置いて酸味が出るまで発酵させ、そこへみじん切りにした玉ねぎや唐辛子、コリアンダー、そしてライムジュースなどを加えてささっとかきこむことが多いようだ。
日本人にとってのお茶漬けのような位置付けだろうか。

パンタ・バートは、バスマティ米など香りのある長粒米よりも中粒米が向いており、可能であればパーボイルド米([ジャパンナレッジ、世界大百科事典(平凡社)「強化米」項より引用] インド,ミャンマー,パキスタン,中近東,アフリカの一部などで古くから常食されている。原始的な方法はもみを水に漬け,壺に入れて加熱し,日光にさらして乾燥後搗精(とうせい)する [引用終わり])を使うと、水に浸した時にご飯が崩れず食感が保たれる。

「NDTV Food」では、人気のベンガル料理YouTuberが、そのチャンネル「BongEats」でパンタ・バートを詳しく解説していると記していたので、さっそく覗いてみた。



※1 幸い英語で解説してある。
※2 いかにもベンガルスタイルの料理で非常に興味深い。
※3 このチャンネル自体がイカしてる。
 

ドゥルガー・プージャー(Durga Puja)など盛大な祭りに疲れたヒンドゥー教徒たちのお手軽料理としても、断食月を耐え忍ぶベンガルのイスラーム教徒たちのイフタールとしても、等しく愛されている点もすばらしい。

特にイフタールとしては、パンタ・バートが自然に育てるバクテリアが腸によい働きをしてくれるので、「(バクテリアを殺してしまうので)再加熱せずそのまま食べるのがよい」とのこと。
また、発酵により米に含まれる糖分が分解され、わずかなアルコール成分が染み出すことから、就寝前に食べると寝つきがよくなるとも書いている(あれ、イスラーム教徒の方々、いいのかい)。

パンタ・バートは西ベンガル州のほか、オリッサ州ではパカラ(Pakhala)、アッサム州ではポイタ・バート(Poita Bhat)などと呼ばれ愛されているそうだ。

マハーラーシュトラ州で愛されるレンズマメの炊き込みご飯、キチョリに位置付けだけは似ているけどまったく非なるもので、わたしにはとても想像できない味だが、日本酒を醸造する過程で発酵しつつある米を食べるような感覚なのだろうか。

本日最も読まれている記事
購入後半年で故障したフォッシルのスマートウォッチを巡る、意外な顛末 Posted on 16 Sep 2019
オンラインでサリー会 On 18th July☆ Posted on 19 Jul 2021
今年プネーで最も「痛い」かもしれない花嫁を検挙 Posted on 17 Jul 2021
アスファルトも溶ける!?猛暑のグジャラート州で人を飲み込む道路 Posted on 26 May 2016
14日間の自主隔離生活で気づいたことを軽くメモ Posted on 20 Nov 2020


-----
なお、現状に何ら役立つ情報をご提供できていない「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」なので、せめて「在ムンバイ日本国総領事館」より日々発信されている州内の状況や州政府による措置に関する最新情報を、今後はこちらにも転載させていただきたい。

=== 以下、同掲題メールの転載 ===
※7月17日付けのメール、件名「海外在留邦人向けワクチン接種事業:接種までの流れ」


●日本に一時帰国してワクチン接種を行うことを希望する方々を対象としてワクチン接種の予約受付を7月19日から開始します。
●インドを含む指定宿泊施設での10日間の待機が必要とされる国・地域からの入国者に対しては、医師等が週に2日(月曜日及び金曜日)宿泊施設を巡回し、接種希望者に対して接種を行うこととなります。

1 7月19日正午(日本時間)から、在留先でのワクチン接種に懸念等を有する海外在留邦人等を対象とした新型コロナ・ワクチン接種事業のインターネット予約受付を開始します。本事業での接種を希望される方は、特設サイトを通じて事前の予約をお願いします。
なお、特設サイトへのリンクは、予約受付の開始と同時に外務省海外安全HP(https://www.anzen.mofa.go.jp/covid19/vaccine.html)に掲載いたしますので、そちらを御確認ください。

2 インドを含む指定宿泊施設での10日間の待機が必要とされる国・地域からの入国者に対しては、医師等が週に2日(月曜日及び金曜日)宿泊施設を巡回し、接種希望者に対して接種を行うこととなりますので、「巡回接種予約枠」で予約を行ってください。(巡回接種枠を予約できなかった方及び待機期間後に接種を希望される方は空港の接種会場で接種いただきます)。
(ご参考:接種までの流れ)
https://www.mumbai.in.emb-japan.go.jp/files/100213787.pdf

【問い合わせ先】
在ムンバイ日本国総領事館・領事班
電話(91-22)2351-7101
メール ryoji@by.mofa.go.jp

=== 転載終わり ==


☆本日の1曲☆

 






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



Share it with


User Comments