ある報道に接して感じた、日本の残念さ
Posted on 18 Apr 2021 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh
少子高齢化が加速していて、年齢による線引きをしている場合じゃないのにね。
先日たまたま、ある中国残留邦人2世男性の、日本での生活についての報道を目にする機会があった。
「自分はどちらの国に属しているのか」というアイデンティティの葛藤について、気づくと共感していた。
境遇はまったく異なるが、わたしもインド在住歴がこれまでの人生の半分に達しつつあり、似たようなジレンマを抱えることがよくある。
男性は特に就職面で困難に直面されていた。
中国では会社役員を務めていたほどの立派な経歴の持ち主でありながら、(帰国した高齢の母親 [つまり戦後の混乱期、中国に取り残され帰国できなくなっていた残留邦人] を追って)日本に帰国後は、「バイトしかない」(ホテルの客室から送られてくる使用済みのシーツを選別し、洗浄する仕事)とおっしゃっていた。
21世紀のこの時代、世界で最も求められているスキルのひとつである中国語をネイティブ言語とし、中国事情に精通し、もちろん日本語でのコミュニケーションができる日本人である。
年齢こそ70歳近くであるが、本来であれば希少かつ引く手あまたな人材であるはずの、そのような方が、「祖国」日本に帰国してしまったばかりに、職業的に不利な境遇に甘んじざるを得ないという事実に、衝撃を受けた。
日本は雇用条件に占める「年齢」の重要度が非常に大きい。
一定の年齢を過ぎているというだけで、その人の経歴や能力は、ほとんど見られていないのではないかと感じることが度々ある(時々スパムや広告に出てくる、ウザい「年収2,000万円以上の高収入転職」とやらが実在するものであるならば、それ以外に)。
「30歳になったら」、「35過ぎたら」、「40過ぎたら」、日本の就職市場では「絶望株だ」と、日本の友人知人から、たびたび聞いてきた。
仮に今後、日本に帰国することになったとして、現在のようなフリーランス稼業に就いていなければ、わたしだって例外なく、日本の会社に就職して安定した収入を得る生活を送ることは、ほぼ不可能なのだろう。
インド企業に就職する場合のことを考えてみると、職種によってはもちろん年齢条件がついていることもあるが、日本ほど露骨に重視されていない。
ちなみにリモートワークは、(当時現地採用で働いていた会社が先進的かつ協力的で理解があったおかげで)10年以上前にすでに実践していた。
そしてインドでは特に、外国人であるというアドバンテージは大いにある。
テック系などでは、外国人は価値を付加する存在とみなされ、就職市場で優位になりやすい。
LinkedInなどの就職・転職系の交流サイトでは、日々いろいろなインド企業からのスカウトメールがやってくるが、業界での経験年数は問われても「年齢」を問われたことは一度もない。
そして、ある企業経営者に話を伺ったところ、年齢によるハンデは若い人のように無理がきかないだろうという身体的な制約以外に、特に感じられないという。
民間企業ではむしろ、豊富な経験や能力が買われるケースが多数派ではないかということだった。
それは多様性を抱え込んで成立している国家では避けられない、寛容とも言えるのかもしれない。
一方、コンセンサスに基づく意思決定を重視する日本社会では、多様性はかえって邪魔になるのだろう。
「老害」という言葉があるが、それは(高度成長期の)日本型年功序列レールの上を外れることなく今までやってきて、自分より若い世代や外国人などの「異質な人たち」に真っ向から意見されることもなくやってきた、自我の恐ろしく強い人たちのことだ。
年齢による足切りには、こうした人々に潔く退いてもらうこと以外に、ほとんど意味を感じない。
多様な経験を積んだ多彩な人たちの採用が進まなければ、日本経済はもはや国際競争から取り残されていくだけではないだろうか。
まるで、あなた方が切り捨てている人たちのように。
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なお、現状に何ら役立つ情報をご提供できていない「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」なので、せめて「在ムンバイ日本国総領事館」より日々発信されている州内の状況や州政府による措置に関する最新情報を、今後はこちらにも転載させていただきたい。
=== 以下、同掲題メールの転載 ===
※4月16日付けのメール、件名「日本入国時の検査証明書等の扱いに関する注意喚起」
●日本入国時に必要となる検査証明書は、日本の検疫所が有効と判断している検体、検査方法等が記載されたもののみ認められます。要件を満たさない場合は、空港でのチェックインの際に搭乗を拒否されることがありますのでご注意ください。
●スマートフォンの携行について、アプリインストールのために必要なOSバージョンは、iPhone端末でiOS 13.5以上、Android端末でAndroid 6.0以上となっています。
1 有効な検査証明書の提出
(1)日本に入国する場合に提出が求められる新型コロナウイルス感染症に係る検査証明書については,厚生労働省検疫所において有効と判断する「検体」,「検査方法」,「検査時間」が指定されているほか,原則として,厚生労働省所定の書式を用いた証明書を提出することとされています。
(2)これらの要件を満たさない検査証明書を持参した場合に,空港におけるチェックイン時に搭乗を拒否される等のケースが発生しています。今一度,厚生労働省ホームページで,検体,検査方法,検査時間,所定書式をご確認ください。
(3)最近の感染の急拡大により,インド国内において検査証明書の取得に時間を要するケースが発生しているとの情報があります。日本への渡航のために検査を受ける方はご注意ください。
(4)詳細は、以下当館ホームページ URLをご参照ください。
https://www.mumbai.in.emb-japan.go.jp/files/100177260.pdf
●厚生労働省ホームページ(検査証明書の提示について)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00248.html
2 スマートフォンの携行
(1)日本入国に際して提出する誓約書の誓約事項を確保するため,位置情報を提示するために必要なアプリ等を利用できるスマートフォンの所持が必要となります。アプリインストールのために必要なOSバージョンは,iPhone端末でiOS 13.5以上,Android端末でAndroid 6.0以上となります。
(2)スマートフォンをお持ちでない場合またはアプリをインストールできないスマートフォンをお持ちの場合は,日本入国時に,ご自身の負担によりスマートフォンをレンタルすることが求められていますのでご注意ください。
●厚生労働省ホームページ(スマートフォンの携行、必要なアプリの登録、利用について)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00250.html
3 インド国内での感染が拡大していますので,在留邦人の皆様におかれては,最新情報の入手に努め,十分な感染予防対策を講じてください。
【問い合わせ先】
在ムンバイ日本国総領事館・領事班
電話(91-22)2351-7101
メール ryoji@by.mofa.go.jp
=== 転載終わり ==
☆本日の1曲☆
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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