Netflix Indiaでハッサン・ミナージ(Hasan Minhaj)さんが製作・出演した2017年の「Hasan Minhaj: Homecoming King」を視聴した。
Hasan Minhaj: Homecoming King
同じくハッサン・ミナージさん製作・主演のネットフリックス・シリーズ、「Patriot Act」が大好きで、全エピソードを視聴の上、現在2回目を視聴している。
「Homecoming King」はたまたまネットフリックスの番組をザッピングしていた時に見つけた。
70分ほどの、ハッサンさん流コメディー調一人語りは軽快だが、時に深い感情もこもり、集中して真剣に耳を傾けずにはいられない強烈な引力があった。
ウッタル・プラデーシュ州のアリガール(Aligarh)という小さな町から、カリフォルニア州デイビスに両親が移民、高校当時からコメディアンになりたいという夢に一直線で邁進してきたハッサンさんの半生は、おそらく多くのインド系やアジア系の移民とその子供たちに共通するであろう、痛みや葛藤に満ちたものだ。
なお両親の米国移住ストーリーはなかなかぶっ飛んだ展開になるのだが、それはぜひよろしければ本編を視聴の上で堪能して欲しい。
さて、「米国への移民」という、どことなく華やかなワードとは裏腹に、一般人による悪意のあるなしにかかわらぬ潜在的および顕在的な偏見、そして社会情勢の突発的な変化によって、日常生活が左右され、直接または間接の影響を受けやすい存在だ。
特に心に残ったのは9/11の直後、イスラーム教徒一家であるというだけで心ない人々に自家用車の窓ガラスを割られ、高校生だったハッサンさんが怒りに震える一方、父親は「仕方がない」と黙ってガラスの破片を集めていた時、「(自らの決断で米国に渡ってきた)親父には受け入れられても、アメリカで生まれ育っている俺には納得がいかない」と失望したこと。
また、「世間にどう思われるか(Log kya kahenge?)」、つまり自分の気持ちよりも他人からの評価が絶対的な拘束力を持つインド的(またはアジア的)な価値観により、愛するヒンドゥー教徒女性との結婚が危うく破談になりそうになったエピソードを紹介。
「I bet when Gandhi told his parents he wanted to stand up to the British, even they were like, 『Arey Mohandas, log kya kahenge?』」と痛切に表現した。
似たような考えが通説となっているアジアの片隅、日本で生まれ育ったわたしにとっても、大変興味深い。
実はハッサンさんが語るストーリーそのものが、全編を通してこの「Log kya kahenge?」を繰り返し問いかけるものとなっている。
そして「個人主義」の価値観が主流と考えられてきた、典型的なアメリカ社会にすら「Log kya kahenge?」は蔓延っており、自らの半生がいかにこれに振り回されてきたかということを、面白おかしくもシビアに浮き彫りにしている。
日本でも有名な人気コメディーショー、「The Daily Show」にも出演され、今や文句なしの世界的な大スターとなったハッサンさん。
誰にでも、表舞台やSNSで垣間見られる華やかな部分だけでなく、移民を決断し、実行する人たちを含め、それぞれの秘められた、人知れぬ事情やストーリーがあることを心に刻み込んでくれる番組だった。
なお、「Patriot Act」のスピンオフとして、「Queer Eye」のタン・フランス(Tan France)さん(パキスタン系イギリス人)がハッサン・ミナージさんの服装チェックをする、というミニ編も好きだ。
But First, Tan ft. Hasan Minhaj | Patriot Act | Netflix
こちらはYouTube特別編。
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