プネーつれづれ:無用のアドバイスでも、じっくり聞いてネタに

 

Posted on 24 Oct 2019 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

企業社員としてのキャリアを積み重ねてきた人と、フリーランサーとの姿勢の違いなのかもしれません。そして相手に対する尊敬の気持ちは今も変わりません。



今年は異例にも、ディワーリー迫る現在も依然として、まとまった雨の降り続いているプネーに、日本から友人Sさんが訪問している。

Sさんは自身の古くからの知人宅にホームステイしながら、時々わが家にも遊びに来てくれるので、その際にはコーヒーやフードがヘルシーでおいしく、お気に入りのカフェ「ワンオーエイト(One-O-Eight)」でお茶をしながら、イケメン店員さんたちの爽やかで行き届いた、温かな接客に耽溺したり、道路挟んで反対側のアノーキー(Anokhi)や近くのショッピングモールへ移動し、心ゆくまで買い物をしたりして楽しんでいる。

なお、わたしはなぜか毎年ディワーリーの時期になると仕事が猛烈に忙しくなる。
今年は犬との留守番を仰せつかって、恒例のアコラ(Akola)訪問はキャンセルになったので、ひさしぶりにのんびりプネーでディワーリーを過ごせるかと思っていたが、そうでもなさそうだ。

さて、某社とのミーティング。
この方もだいぶ以前からの知人で、兼ねてから尊敬する相手だ。
ご自身の勤務する会社の支社がプネーにあるご縁で、もしかしたら定期的な仕事をいただけることになるかもしれず、必要な契約書等の締結は既に済ませていたこともあり、この日は東京からの出張を機に一度、仕事について整理しようという目的で、オフィスに呼んでくださった。

しかし残念ながらミーティングの内容は、自分(自社)側の事情だけを一方的に語り、その便宜上、利益があるからという理由で、わたしの都合や興味、適性などほとんど顧みずに、新しい行動を起こすようにひたすら要求するものだった。
具体的には現在フリーランサーのわたしが、今後は(同社からの)大口の仕事でも受けられるよう、会社を作るべきだ、というものだった。
そして案の定、それはわたしの能力等を考慮しての提案ではなく、「日本語学習歴のある主婦などに声をかけて集め、それを元手に会社化すればよい」というアプローチで、あくまで翻訳業とは「そういうもの」という、ありがちな価値観によるもののようだった。

また、はっきりと言いこそしなかったが、フリーランサーは常に仕事が不足していてヒマだろう、という先入観からなのか、時々オフィスに来てソフトウェアテストや通訳などを手伝ったらどうか、という助言もあった。
実はこの日、わたしは納品が少なくとも2件迫っており非常に忙しく、ミーティング後のランチの誘いも断っていたのだが。
結局、口を挟む間を一切与えてもらえなかったこともあり、発言を諦めてひたすらメモを取りながら耳を傾け、早めに切り上げることに専念した。

相手に発言する隙を与えず延々と自分の事情だけを話し続ければ、話している側はその場がうまく収まったように感じるだろう。
しかし聞かされた相手は、その場を離れてからもそのことを考え続けることになり、時が経つにつれて実際よりもネガティブな方向に拡大解釈してしまいがちである。
少なくとも、わたしにはそんな経験がたくさんある。

会話はキャッチボールである。
相手が黙って聞いているからといって合意を意味しないことは、よくわきまえておきたい。

一方、わたしが毎週お世話になっている某社の経営陣や社員たちは、先手でこちらが必要なことを推し量り、よく気配りしてくれ、自分側の要求はあくまで控えめに出していきながら、お互いの妥協点を探ろうと努める合理的かつ知的な人が多いように感じている。
だからわたしもそうした人たちに憧れ、この会社のことを好きになり、色々な人に知ってもらうために行動を起こしたい、そのためのアイデアを真剣に考えたい、と自然に考えられるようになる。

フリーランスとして活動する醍醐味は、このようにいろいろな会社や担当者と付き合い、それぞれの態度を冷静に受け止め、比較して、どちらと長期的な取引をしたいか、またはどちらの会社の力になりたいかを吟味できるところにある。
そしてふと、自分もある会社の社員だったころ、相手の立場や事情を考えず、頼まれもしないのに自らの主張をねじ込むようなアドバイスをしていたことがあったなと思い出した。
もしかすると、会社勤めしかしたことのない人の方が、世間の常識が分からなくなることもあるのかもしれないと、自戒を込めて結論付けている。

また、こうした事例にたびたび遭遇するようになった最近は、興味がなかったり、反論があったりしても、とにかく相手の話を最後まで黙って聞くよう心がけている。
そうすることで、相手は意図していないかもしれないが、少なくとも自分では今まで気づかなかったようなことを、年齢や立場を問わず、どんな人からも学ぶことができることもある。
ひるがえって、自分は他人に対して、無用のアドバイスや講釈を垂れるような人にならないようにしなければと心に誓うのである。

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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