メキシコ国境を経てアメリカへ渡ろうとする、インド人不法移民たちの悲劇
Posted on 15 Jul 2019 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
記事中で紹介したパンジャーブ州の社会問題を扱う2016年作品「Udta Punjab(飛ぶパンジャーブ、麻薬常習者らの間での隠語か)」では、最近日本でも全国公開された映画「パドマーワト」でラタン・スィン王を演じたシャヒード・カプールさんが主演を務めています。
アメリカ南側の国境を越えようと詰めかけているのは、メキシコや中南米からの難民たちだけでなく、移民を望むインド人たちも多くいるのだということを初めて知って、衝撃を受けている。
CNNが伝えるところによると、パンジャーブ州ハサンプル(Hasanpur)という貧しい村出身の6歳の女の子が、母親と一緒にメキシコからアメリカへの国境を越えようとして、砂漠の過酷な暑さに倒れ、命を落とすという痛ましい事故が発生、女の子の両親はもちろん、出身地に残った祖父母や近所の村人たち、ニューヨークに本部を置くスィーク教徒の連合団体「Sikh Coalition」、捜索にあたったアメリカの国境警備隊をはじめとする、多くの人々が悲しみに暮れている。
This 6-year-old from India died in the Arizona desert. She loved dancing and dreamed of meeting her dad
この女の子は母親と一緒に、先にアメリカに亡命し、ニューヨークに住んでいた父親と合流するために、密入国あっせん業者の手引きでメキシコに入り、そこから国境を越えてアメリカに入国しようとしていた。
ところが先月、その業者が手引きをした亡命希望者たちに、何もない砂漠地帯を1日で歩ききるよう無理強いし、母親は女の子を別の母親に託して、土地勘どころか商店すら見当たらない、乾いた大地で水を求めてさまよっている間、二度と元の場所に戻って来られなくなってしまったようだ。
女の子の捜索にあたったアメリカ側の国境警備隊員がその翌日、女の子の遺体を発見した。
死因は無理な行程がたたった熱射病によるものだと推定されている。
記事によれば、世界全体の移民数を国籍別に分類した結果、割合が最も高かったのはインド人で、実に移民20人中1人をインド出身者が占めている。
考えられる原因として国連薬物犯罪事務所(United Nations Office on Drugs and Crime)では、特に若いインド人移民は自国インドでの就職に漠然とした不安があり、割のいい仕事を求めて国外に出る傾向が続いているという。
特にアメリカ国境警備隊の統計によれば、メキシコ国境から不法にアメリカ入りしようとするインド人移民申請者の数が増え続けており、その多くはインドのヒンドゥー至上主義政府による迫害に遭っていると主張し、亡命を求めている。
女の子の父親も、そんな宗教的少数派のひとりで、迫害に遭っていたことを在米の人権弁護士に相談していたようだ。
生後数か月のころにアメリカへ渡った父に、ついに会えることを楽しみにしていた女の子の、道半ばでのあまりにも惨い死に言葉も出ない。
世界第3位の経済大国入りも秒読みかなどとされているインドだが、逃げ出そうとする人々も後を絶たないとなれば、現状は予想以上に厳しい。
特にパンジャーブ州は乾燥しがちな気候も一要因として、人々は昔から厳しい生活環境に直面してきた。
同州の社会問題がよく分かる映画として、「Udta Punjab」という作品を勧めてもらったので、折を見て鑑賞してみたい。
Udta Punjab | Official Trailer
本日最も読まれている記事
1 ポルトガル鉄道のインターネット事前切符予約 26 Oct 2016
2 生きるとは祭りである 07 Jul 2019
3 意外に低かった?世界の大学ランキング200校中のIITの位置は 09 Jun 2017
4 農村女性などを在宅事業者として自立させる、サリー売買プラットフォーム 06 Jul 2019
5 自らの美しさに気付き、目覚め始めたインドのモデルたちが世界で争奪戦に 13 Jul 2019
About the author
|
|
Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
|
User Comments