農村女性などを在宅事業者として自立させる、サリー売買プラットフォーム
Posted on 06 Jul 2019 21:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh
つい「サリー」に反応してしまいました。写真はディワーリーの時ぐらいしかサリーを着ていなかった2013年ごろのものです。
インドで、農村部の女性をはじめとする、これまで自立の手段が限られていた人々が、オンラインでサリーなどの女性用アパレルを売買することで、在宅事業者として収入を確保できるような仕組みを、IITカンプール校出身、技術畑の起業家が構築した。
「The Better India」が伝えた。
How Smartphones & Sarees are Helping Women Earn a Steady Income with Zero Investment
このアプリを活用すれば、パソコンなどを使ったことがない人でもスマートフォンさえあれば、一端の商店主になれる。
もちろん、業者ごとに信頼性を担保するための評価システムが導入されているので、安心して取引できるようになっている。
代々事業を営む一家に生まれたアーヴィンド・サラフ(Arvind Saraf)さんは、超名門のインド工科大学(Indian Institute of Technology、IIT)カンプール校でコンピューターサイエンス(Computer Science)を専攻、卒業後にグーグル(Google)のエンジニアリングチームに参加して新興国向けの製品開発に携わりながら、自らの事業を立ち上げる機をうかがっていた。
最初に立ち上げたベンチャー会社では、インド全土のスラム街に居住する低所得層の人々に医療サービスを提供することに専心した。
7年前にそのベンチャー会社を譲渡後、テクノロジーの力でインドが必要とするソリューションを、商業的可能性と人々の生活、社会への影響を好循環させながら構築する事業について考え始めた。
その結果として設立されたのが、零細事業者に女性用アパレル商品を販売し、投資する必要なしに収入を得る機会を提供する、モバイルアプリのプラットフォーム「Wishbook」である。
「既に組織化されたかに見えるセクターで、まともに競争する力がなく、また女性を戦力として活用して事業を拡大する余裕もない中小企業に、能力と権限を与えたかった。父の経営するサリー製造事業を観察することで、どうすればもっとよくなるのか考え続け、自分なりにひらめいた。」
自らの知識を武器に、2016年「Wishbook」を設立したアーヴィンドさんは、まず既存の小売業者の取引効率を上げる方法を考え始めた。
「より多くの人々に意味のある影響を与えることが、当初の目的だった。」アーヴィンドさん。
「『Wishbook』は、在宅事業者を含む小規模小売業者が、販売したい製品を調達できるファッション系のB2Bマーケットプレイスで、価格は競争を反映した最善のものとなるようにしている。」
小売業を運営する側にとって、製品の調達と選別といった問題が一挙に解決する。
また、オンボーディングと呼ばれるチュートリアルや検品などのプロセスを分かりやすくすることで、購買時の透明性を確保している。
現在「Wishbook」では、月間1,000社のサプライヤーと5万人のアクティブユーザーが、6万点を超えるデザインの中から商品を選べるようになっている。
スマートフォンの急速な普及により、仕入れ品の閲覧と購買を手の平でいとも簡単に行うことに、農村部でも抵抗がなくなってきており、小売業者もビジネスツールとしてスマートフォンを活用している。
ただし、モノであふれるマーケットプレイスでは、信頼性と品質の確立と、その表示が非常に大切だ。
厳格なオンボーディング(ここではマーケットプレイスへの参加審査のことか)プロセスにより、業者の品質は保たれ、またアプリの各機能についてのトレーニングが実施されるため、誰もが最大限に活用できるようになっている。
「各事業者にはウェブサイトの構築指導も実施し、消費者にとって魅力的なソーシャルネットワーキングページ作成の方法も教えている。在宅事業者が売り上げを伸ばすことができるよう相談に応じる、一対一のメンターシッププログラムも提供している。」
当然課題もある。
「ほとんどの人が、オンライン取引などのデジタルプラットフォームを個人的な買い物に利用したことはあっても、B2B取引にはない。そこで事業者としてオンラインでの仕入れや販売などにデジタルを活用することに慣れるような工夫を、かなりの時間を割いて取り入れている。
もう1つの課題は、購買時に人的介入がないことを不安に思う事業者がまだ多い点だ。
「これに対応するため、専任の販売サポートチームを立ち上げ、電話ひとつで取引を支援できるように準備しているほか、積極的なフォローアップにより問題解決を試みている。」
ポートフォリオも紹介されていた。
一身上の都合で会社を辞めなければならなくなったムンバイー在住の女性はある日、収入の機会に繋がるアプリの存在を誰かに聞き、さっそくダウンロードすると、最初は自分のためのサリーを購入した。
その高い品質にとても満足したため、サリーを着た写真を動画に撮ってソーシャルメディアに公開したところ、大きな反響を呼んだ。
以来「Wishbook」で仕入れた商品を販売して収入を得る在宅事業者として活動している。
「Wishbook」に登録している製造業者の大部分はグジャラート州スーラトとアーメダーバードに拠点を置いているが、バイヤーはインド全土に広がる。
その多く、特に女性は、それまで小売業で収入を得る機会など考えられなかったような町村に住んでいる。
社員数55人の「Wishbook」は、さらにユーザー数を拡大して収入を得られる人を増やすとともに、事業を拡大するための資金調達を試みている。
アプリはiOS版とアンドロイド版があり、公式サイトからアクセスできるようになっている。
Wishobook公式サイト
Wishbook - Facebook
スマートフォンと4Gネットワークの爆発的な普及により、このような低予算でも莫大な効果を発揮するビジネスモデルは、今後インドでどんどん生まれていくだろう。
そうした動きを牽引しているのが、インド最高峰のエリート養成機関であるIITを卒業し、アメリカのトップIT企業から引く手あまたの、若き有能な頭脳である点にも注目したい。
この分野に、日本との絡みはあるのだろうか。
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
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