エベレストに凝縮して届く気候変動の影響がもたらした「副産物」
Posted on 11 Jul 2019 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
福岡からバンコク行きの飛行機の中で取り組んでいた話題ですが、読みやすくまとめきれていません。
気候変動の影響がエベレストに凝縮された形で届き、意外な形でその異常を緊急に知らせていることを伝えており、驚いた記事だ。
変化の速度が驚くほど速く、強い危機感を抱いている。
Everest: ‘Record number’ of bodies appear as melting glaciers means 'finding bones is the new normal'
経験のある登山家でガイドでもあるカミ・リタ・シェルパ(Kami Rita Sherpa)さんは数年前、エベレストのベースキャンプで恐ろしい光景に遭遇した。
地中から覗いた、氷殻に覆われた人骨だった。
これは偶発的なものではなく、その後のシーズンで、頭蓋骨や指、脚の一部などの、さらなる遺体を見つけることに繋がっていった。
エベレスト山のガイドは、この現象は世界最高峰の山の広範囲な開発と符合すると考えるようになってきている。
つまり、気温の上昇が、帰らぬ登山者を掘り起こしているのだ。
「万年雪が溶けて(中に埋まっていた)遺体が表面に現れるようになった。近年は、(登山中に)遺体を発見しない方が珍しいぐらいだ」
エベレスト登頂が24回を数える世界記録保持者のシェルパさんは語っている。
登山者らによれば過去数シーズンほどは、かつてないほどの頻度で凍った斜面に横たわる遺体を目撃するようになったという。
その原因は地球温暖化であるというのが、登山者らとネパール政府の共通する見解だ。
つまり、山中の氷河が急速に溶けていて、それまで埋もれていた数十年も前に死のミッションに参加したまま行方が分からなくなっていた往時の登山者らの、遺骨や登山靴、また完全な遺体を露呈しているのだ。
ネパール政府は対策に頭を悩ませている。
エベレストには100を超える遺体が眠っているとされ、それらを回収すべきか、そのままにしておくべきかという議論が巻き起こっている。
一部の登山者らは、滑落死した仲間は山と一体になっているので、そのままにしておくのが本人にとっても本望だろうと語っている。
遺体の多くは、気温と酸素濃度が低いため、保存状態が極めてよい。
6回のエベレスト登頂経験のあるゲルジェ・シェルパ(Gelje Sherpa)さんによれば、2008年に初めて登山に挑んだ時には3体の遺体を見つけた。
それが近年は2倍ぐらいの頻度で見かけるようになったという。
この60年ほどの間、300人の登山者がエベレスト探検中に亡くなっているが、そのほとんどが嵐や滑落、高山病が原因とされている。
今シーズンは特に状況が過酷を極めており、少なくとも11件の死亡事故が発生した。
原因の一端は登山者が増え過ぎたことによる。
ネパール政府は最近(Wednesday)、登山者の過密状態と頂上での勝手気ままな行動を忌避し、登山に資格を設ける新しい規則を検討している。
ネパール登山協会(Nepal Mountaineering Association)の前理事、アン・ツェリン・シェルパ(Ang Tshering Sherpa)さんは、エベレストで亡くなった人のうち、少なくとも3分の2の遺体はそのまま残っているものと試算する。
あるものは、雪崩によってバラバラになっているという。
山の頂上付近から遺体を撤去するのは非常に危険だ。
凍結した遺体の重量は140キロほどにもなる。
その過重を担って、急峻な斜面や不安定な天候に見舞われる、深いクレバスを下ってくることは、登山者らの命をさらなる危険にさらすことになる。
にもかかわらず、回収を望む家族らの要請を受けて別のミッションが結成されるが、その費用は数十万ドルに及ぶことがある。
一般的に、海抜6,400メートルよりも高地で亡くなった登山者の遺体は、そのままにされる。
「山ではあらゆることが死のリスクと隣り合わせだ。もちろん可能であれば遺体を下山させた方がいい。しかし、登山者は安全を第一に行動すべきでもある。遺体が別の命を奪うことにもなりかねない」前述のアン・ツェリン・シェルパさん。
こうした遺体の表出は、エベレストが経験している大きな変化のうちのひとつである。
この10年で、気候変動によりヒマラヤ地域の地形はみるみるうちに変化した。
エベレストの雪線は、過去数年のうちにより高地に上がっている。
かつて厚い氷に閉ざされてきた一体は、地表が現れている。
登山者はピッケルをハーケンに持ち換え、山肌に食い込むスパイクが必需品になっている。
2016年、氷河が急速に融解したため、壊滅的な洪水の恐れがあるとしてネパール軍がエベレスト近くの湖を放水した。
今年は、エベレスト地域全体の、融解の懸念が高まっている氷河源流付近にある池のサイズが、この3年だけでも大幅に拡大しており、その速度は2000年代に入ってから最も著しいことを示す調査結果が出た。
カミ・リタ・シェルパ(Kami Rita Sherpa)さんは、大規模氷河付近からネパールとチベットの国境をまたぐ、エベレストの大きさは、年々より複雑化していると懸念する。
これは、山を商業化し、これまでより多くの経験が浅い登山者を誘引している背景を考えると、由々しき展開である。
「氷が解け続ければ、今後数日間の登頂の危険性はますます高まるだろう」シェルパさん。
展望は暗い。
2月に発表された高地温暖化に関する研究によると、科学者らは
世界で最も野心的な気候変動目標を達成したとしても、21世紀末までにヒマラヤの氷河の3分の1は溶けるだろうと警告している。
そしてヒンドゥー・クシュ・ヒマラヤ評価会(Hindu Kush Himalaya Assessment)のまとめた報告書によれば、地球温暖化と温室効果ガスの排出が今ままのペースで継続すれば、融解する氷河は3分の2に達する。
報告書では、高度依存型温暖化(elevation-dependent warming)についても触れている。
これは、温室効果ガスによる気温の変動は、北極などの高緯度地域で増幅されることでもよく知られている。
しかし、気温の上昇率が高度になればなるほど著しいことを示す証拠も次々に上がっている。
昨年10月には、国連の科学パネルが発表した気候変動に対する重要な報告書の中で、温室効果ガスの排出が現在のペースで継続すれば、平均気温は2040年までに、産業革命以前から摂氏1.5度上昇すると警告している。
同一の筋書きをヒマラヤに当てはめると、これは摂氏2.1度の上昇を招くことになると、ヒンドゥー・クシュ・ヒマラヤ評価会は指摘する。
登山探検活動を監督しているネパール観光管理庁のダンドゥー・ラージ・ギミレ(Dandu Raj Ghimire)長官は、遺体の発見が相次いでいることは、この地域に既に訪れている大きな変化を警告するものだと語っている。
シェルパたちが昨年、複数の遺体発見を報告後、ギミレ氏の指示でそうした遺体を安全に撤去する方法について、観光管理庁が模索し始めている。
今年春、例年5月末まで続く登山シーズンを前に、ネパールの観光省は登山運営会社に、エベレストなどの山頂を目指したが、中途で亡くなった登山家の一覧を作成するように依頼している。
今年に入ってから、ボランティアたちがエベレストから、ペットボトルやロープ、空き缶など、合計2万ポンドものゴミを回収した。
この活動の一環として、遺体の撤去も行われており、4月には4名の身元不明の遺体が新たに見つかっている。
ギミレ氏によると、こうした遺体はカトマンドゥに移動され、検視される予定だ。
それでも身元が分からない遺体については、警察が火葬する。
ただし、気温が摂氏マイナス18度近くにまで下がり、酸素濃度が海抜ゼロ地帯の3分の1になるエベレスト山頂については、こうした活動の対象外となる。
(後略)
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
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