インドで、建築材を見直してエアコンの必要性を極力排する住宅建設の動き
Posted on 02 Jul 2019 21:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh
エアコンが必需品なのは建物の構造のせいで、エアコンが不要な建物を作れば室外機からの二酸化炭素や熱風の排出を抑えられ、必然的に外気も下がる、ということなのでしょうか。写真はまったく関係ありませんが、エアコンがんがんのタイ・プーケット国際空港です。
インド、特にマハーラーシュトラ州の一部地域は年中乾燥しており非常に暑く、酷暑期には苦しいほどの熱波が容赦なく人や動物、植物を襲う。
もともと暑さが苦手なわたしにとって、そうした地域に住んでいる人たちのほとんどがエアコンを使わず、代わりに気化熱で空気の温度を下げる水冷式のクーラーを使っていることに当初は驚いたが、乾燥した空気にはこちらの方が効くし、また電気代やエネルギーの消費も最低限に抑えられるのだという。
確かに、インド国民が全員エアコンを稼働させるようになったら、現状出回っている商品設計では二酸化炭素の排出量はとんでもないことになるだろう。
21世紀も人類が生き残るためには、エアコンに代わるサステナブルな空調手段を考えなければならないのかもしれない。
「The Better India」では、建築方法そのもので室内の空気を下げることを試みている、「エアコン要らずの住宅」を3通り、紹介していた。
Dump the AC, Use These 3 Green Cooling Solutions While Building Your Home!
国際エネルギー機関(International Energy Agency)の試算によれば、都市化の推進や人口増加、収入の増加やエアコン価格の下落などを背景として、2050年までに地球上で稼働するエアコンの台数は、現在の16億台から3倍以上の56億台に爆増するとしている。
これにより、室外機から排出される熱風により、特に都市部の気温が上昇するヒートアイランド現象が加速し、エアコンに手の届かない低所得世帯の生活の質に一層の悪影響が及ぶ恐れがある。
そうしたことを背景に、快適な生活をエアコンなしで送ることのできる工夫を、以下のように建物の構造に取り入れることを提案している。
1) 石灰と泥のモルタルを使用
タイルやブロックを繋ぎ固めるため、従来はセメントが用いられてきたが、建物の通気性が悪くなり熱がこもりやすくなる。
代わりに石灰や泥モルタル、また自然界に存在する石や岩を用いることで、断熱効果が高くなるとしている。
この性質をうまく利用して建てられたのが、プネーの建築家夫妻、ドゥルヴァン・ヒングミレ(Dhruvan Hingmire)さんとプリヤンカ・グンジカル(Priyanka Gunjikar)さんが最近、マハーラーシュトラ州トーラン(Thoran)村に建てた新しい住宅だ。
この記事は公開当時、かなり興味深く読んだ。
Pune Couple Builds Cement-Free Breathable Homes That Don't Need ACs or Fans!
「外気温が摂氏38度の時でも、建物内は摂氏25度に保たれ、エアコンは必要なかった。天井ファンすら屋上以外はほとんど使わずに済んでいる」
2) 屋上の放熱対策
アーメダーバードの非営利団体、マヒラ・ハウジング・トラスト(Mahila Housing Trust)は、低所得世帯の住宅向けの空冷策として、屋根上に使用済みの紙とココナッツの殻でできた耐水性の屋根材として、持続可能な屋根材を製造する会社「レマテリアルズ(Rematerials)」が開発した「モッドルーフ(Modroof)」を採用、室内の温度を屋外よりも7~8度下げることに成功している。
3) 伝統的な設計
こちらは住宅の設計そのもので涼しくしてしまうおうと言うものだ。
ケーララ州の著名建築家、ヴィヌ・ダニエル(Daniel)さんは、自身の叔父宅の建築材として、泥を主原料とする圧縮安定型土壌ブロック(Compressed Stabilised Earth Blocks、CSEB)材と、壁面などには無数の空気穴を開けるために、使用済みビール瓶を採用した。
また昔ながらの中庭(Nadumuttam)を取り入れることで、重量がより軽い熱気を効率よく屋外に逃がし、屋内の空気の循環効率を向上している。
さらに集めた雨水を住宅周囲の植生に散布する仕組みを作り、「エアコンは実質上必要ない」構造にしている。
まとめとして、インド国民栄誉賞に当たるパドマシュリー(Padma Shri)賞受賞の建築家、シャンカル(G Shankar)氏は、次のように警鐘を鳴らす。
「天候変動を引き起こすに至った主たる責任は、我々建築家による建築材料選びにある。この30年もの間、持続可能性については議論されてきたのにも関わらず、我々は何も学ばず、その間にも世界にはどんどん選択肢を失っている。これから先、建築材として選ぶものはすべて環境に配慮し、エネルギー効率が高く、コスト効率が高く、人を中心に据えた価値観に基づくものではければならない。さもなければ、もはやどうにもならなくなってしまうだろう」
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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