日本で歴史大作「パドマーワト 女神の誕生(Padmaavat)」を鑑賞
Posted on 20 Jun 2019 20:18 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh
豊富な周辺知識を有し、また貪欲に追及され掘り起こしている、尊敬する方々がしたためた、熱量と質ともに高いそうそうたる記事へのリンクを挙げていますので、それだけでもご覧ください。※Photo from India Today.
※写真は「India Today」ウェブ版記事「Did Rani Padmavati meet Alauddin Khilji - Movies News」より。映画「Padmaavat」の背景についての基礎知識を得ることのできる良記事。
日本滞在中に公開されるインド映画は、なるべく都合をつけて鑑賞してみたいと思っていて、インドでの公開時にはまったく関心を持てなかった「パドマーワト 女神の誕生(Padmaavat)」を観てきた。
パドマーワト 女神の誕生
教養のないわたしには、この映画を観て語れることはほとんどないので、この記事は素人の一般観衆としての、個人的な感想を記録しているのみである。
映画「Padmaavat」に関心がある方は、わたしの尊敬するこちらの四方の日本語ブログ記事をぜひ精読していただけたらと思う。
わたしは鑑賞後に熟読させていただき、「なるほどそういうことか」と再び楽しむことができた。
3Dの『Padmaavat(パドマーワト)』@ムンバイ - アジア映画巡礼
※ムンバイーの映画館で鑑賞中のハプニングなど思わずクスッと笑える。人間らしい要素の不足とか、登場人物の話すヒンディー語感で思わず現代に引き戻される、とかいう指摘には膝を打った。
【Padmaavat】 ポポッポーのお気楽インド映画
※どんな物議があったのか、どのように収束したのかといった、社会背景もよく分かる。
アッチャー・インディア 読んだり聴いたり考えたり 史劇映画『パドマーワト 女神の誕生』はほぼ実写版『北斗の拳』だった!(絶賛です)
※大絶賛の中で、きちんと音楽にも絡めているところがさすが。
【ネタバレ全開ご注意ください】『Padmaavat』を観てきました! – MASALA PRESS
※物語の背景もよく分かるし、重要なセリフの意味も解説してある。必読としか言いようがない。おもしろすぎて止まらない記事に、ただただ羨望。
インドの歴史や伝統、言語、宗教、慣習など、複雑な知識や事情が絡む大スペクタクルな作品についても、ブレずに骨太で、かつ誰が読んでもためになる読みやすい記事を書ける頭脳と手腕、才能のある方が、ほんとうにうらやましい。
同時に「ない袖は振れぬ」という悲しい現実を突きつけられる。
なお、「パドマーワト 女神の誕生」日本公式サイトでも、歴史背景や制作秘話を知ることができる。
パドマーワト 女神の誕生 Production Notes
わたしなど「大変な物議を醸していた」ことと、鑑賞した知人から「最初の30分で居眠りしてしまって憶えていない(コラ...)」などと聞いていた以外に、予備知識をまったく持たずに鑑賞に挑んだ。
まず冒頭からDisclaimerで、インドのことを若干知っている人であれば思いっ切りネタバレになるような内容があってズッコケた。
しかしインド人にとっては周知の史実を描くことを前提とした作品だし、日本の一般観客には「何のこと?」と首を傾げるような記述だったので、問題ないと判断されたのかもしれない。
それに、そんな記述をエンドロールに持って来たところで、インドの映画館では本編終了後は容赦なく「ブツッ」と切られてしまうのが常なので、やむを得ないのだろう。
舞台がアフガニスタン、スリランカ、デリー、そしてラジャスターンに及ぶ超大スケールの中で、鍛え上げられた体躯と類いまれなる美貌を持つ王族たちが魅了し、ぶつかり合う。
映画鑑賞の大きな魅力のひとつとして、ラーニー・パドミニ(Rani Padmini)を巡る歴史上の真実を知りたくなる、そして〇さんの手掛けたすばらしい日本語字幕翻訳のおかげで、ヒンディー語の新しい単語やかっこいいフレーズを学べる、という収穫はあった。
本物のアラーウッディーン帝も相当な荒くれ者だったようだが、それにしても物語を分かりやすくするためかヒンドゥー教ばかりを礼賛しているようにも感じられ、このご時世もあってなかなか物語に入っていけなかった。
また、皇帝になる前のアラーウッディーンがモンゴル侵攻に立ち向かうシーンは興味深く、もうちょっと丁寧に描いて欲しかった。
個人的には、それぞれの登場人物の魅力が最大限に発揮されておらず、その圧倒的とも言える絢爛豪華な衣装や舞台に反して、各方面への過剰なまでの配慮が否が応でも意識できてしまう、中途半端な脚本や演出に感じられてしまった(日本公開版ではカットされた場面もあったのかな)。
それこそ冒頭のDisclaimer(また)で長々と「断り」を入れていたのだから、史実や批判、物議からいっそのこと少し自由になって、想像や創造を羽ばたかせる余地のある、またもっと人間味を感じられる作品だったらよかったのにな、と思ったし、今のインドの現状で、そうしたことが難しかったのかなということが残念で、色々としこりの残る鑑賞体験だった。
そんなことをあれこれ薄ぼんやりと考えていたら、我らが軽刈田凡平(かるかった・ぼんべい)さんが、これまた骨太なメディア「Scroll.in」などの記事や、そうした論考についたコメントをピックアップして、こうしたモヤモヤがインドではどう受け止められているのかを、制作者側の見解なども絡めて丁寧に紐解いていた。
アッチャー・インディア 読んだり聴いたり考えたり 『パドマーワト 女神の誕生』はヒンドゥー保守反動映画なのか、という問題(前編)※こちらはご本人も言及しておられるが、ネタバレ注意の記事
女性の地位の描き方(わたしも歴史上の物語なので現代の価値観に照らして述べるのは野暮だと思った)、アラーウッディーンの悪役でありながらの圧倒的な魅力(によりムスリムであるとかどうとかは無関係の超越した世界観を築いている)とか、凡平さんがピックアップし、また言及されていることは、すべて「ほんとにそうだな」と頷きながら咀嚼した。
コメント欄なんて恥ずかしながら無視や飛ばし読みが常だったが、場合によってはじっくりと読むことで、今を生きる人々の率直な意見や感想を知ることができ、違和感を取り除いてくれたり、疑問に答えてくれたりする、貴重な場にもなるのだな。
「アジア映画巡礼」の松岡環(まつおか・たまき)さんが少し触れていた、同じサンジャイ・リーラー・バンサーリー(Sanjay Leela Bhansari)監督による作品、「バージーラーオ・マスターニー(Bajirao Mastani)」も観たくなった。
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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