意外と知らなかった、あのソープの誕生秘話とロゴの意味

 

Posted on 19 Jun 2019 21:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh

せっけんは長年、こちら一択です。



皆さんは、「マイソール・サンダル・ソープ(Mysore Sandal Soap)」を知っているだろうか。
日本でも販売している業者がいるように、インドでは長年にわたり愛されている「王道せっけん」だ。
わたしにとっても初めてのインド渡航時からお世話になっており、今や他のソープは考えられないほど愛用している。
人によっては「インド人っぽい匂いがする」などと言われてしまうことがあるが、人工的でないすっきりした香りが気に入っている。

そのマイソール・サンダル・ソープの誕生秘話について、「The Better India」が掲載していた。

Fragrance of Heritage: The Fascinating History of the Iconic Mysore Sandal Soap

フルストーリーはやや冗長なので割愛して、興味深いところだけピックアップしてご紹介したい。

マイソール・サンダル・ソープを現在製造販売しているのは、「カルナータカ州ソープ・洗剤公社(Karnataka Soaps and Detergent Limited、KSDL)」だが、その前身は今から103年前、1916年5月に当時のマイソールのマハラジャ、クリシュナ・ラージャ・ウォディヤル4世(Krishna Raja Wodiyar IV)が、財務長官(Diwan of Mysore)だったモクシャグンダム・ヴィスヴェスヴァラヤ(Mokshagundam Visvesvaraya)氏と共同で設立した官営サンダルウッドオイル工場だった。

工場設立の目的は、当時世界最大のサンダルウッド産地だったマイソール藩王国では、第一次世界大戦の影響で輸出ができなくなったため、サンダルウッドが大量に余っていたことから、資源を有効活用することだった。

設立から2年ほどが経過したころ、マハラジャは世にも珍しい、サンダルウッドオイルを使ったソープを贈られる。
これに着想し、大衆向けにサンダルウッドオイルを原料とする、質の高い安価なソープを製造し、領内の産業開発に活かそうと言うことで財務大臣と合意したのが始まりだった。

この目的を達成するため、ボンベイ(現ムンバイー)から専門家を招き、1911年に設立されたばかりだったインド科学技術大学(Indian Institute of Science、IISc)で研究開発を重ねた。

さらに当時IIScの研究員の中で特に優秀だった工業化学者、ソサレ・ガラァプリ・シャストリー(Sosale Garalapuri Shastry)氏を英国に派遣して、最先端のソープ製造技術を学ばせた。
後にこの研究員は、その飽くなき探求心から「ソープ・シャストリー」と呼ばれるようになった。

こうして研究開発を重ね、先端技術を導入したことで安定した品質のソープを製造できるようになり、1944年ごろには工場の数も増えて行った。

次に重要となるのはブランディングである。
そのために最も力を入れたのは、あの象徴的な形状と、パッケージだ。
まず、当時のソープは長方形のものが主流だったところを、敢えて楕円形に成型した。

そして宝石を愛するインド人たちの心象をくすぐるよう、ソープをまるで宝物のように白い紙で包み、赤地に花の模様が印刷された、宝石箱のような長方形の箱の中に納められた。
その中心には会社のロゴとして、頭が象で身体がライオンの、勇気と知恵を象徴する伝説上の生き物、シャラバ(Sharaba)をあしらい、「Srigandhada Tavarininda(サンダルウッドの里から)」と言う文言を印刷している。

1990年代にインド経済が自由化されると、海外企業がもたらしたソープが市場にあふれ、厳しい競争にさらされ赤字となり、再建支援を受けたこともあったが、経営の合理化を進めるなどして2003年までに何とか回復、現在も100%純粋なサンダルウッドオイル(patchouli、vetiver、orange、geranium、palm rose)を使った安価なソープとして、人々に根強く支持されている。

現在、サンダルウッドオイルを用いたソープは数あれど、「マイソール」の地名(Geographical Indicator)を商標に冠することができるのはKSDLの商品のみである。
2015年度には過去最大の総売上高として47.6億ルピーを達成している。

なお、肝心の原料であるサンダルウッド材は減少傾向にある。
このため、KSDLでは農家にサンダルウッドの植林を奨励する「Grow More Sandalwood」キャンペーンを立ち上げ、サンダルウッド苗木を安価かつ買い取りを保証した上で販売している。
そして、1本の木を原料として伐採する度に、1本の苗木を植えるようにしているという。

本日最も読まれている記事
ポルトガル鉄道のインターネット事前切符予約 26 Oct 2016
インドの深刻な水不足に救いの手を差し伸べてくれるかもしれないのは、あの国 16 Jun 2019

福岡はファン垂涎の穴場!ナショジオ最優秀賞受賞の写真家、三井昌志さんの報告会と写真教室 17 Jun 2019
意外に低かった?世界の大学ランキング200校中のIITの位置は 09 Jun 2017
「Gully Boy」の監督がお茶の間に届けるネット配信ドラマ、「Made In Heaven」を鑑賞 19 Mar 2019

 





    



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



Share it with


User Comments