今年のアカデミー賞、インド出品作はタミル人オートワーラーによる原作
Posted on 23 Sep 2016 23:00 in エンターテインメント by Yoko Deshmukh
こんな彗星のごとき才能が発掘されているなんて、ますますタミル映画から目が離せなくなりそうです。
インド映画連盟(Indian Film Federation)は12人の陪審員による審査により、昨年から今年にかけて公開された「Bajirao Mastaani」、「Sairaat」、「Fan」、「Sultan」など29作品の中から、タミル映画「Visaaranai(尋問)」を今年の第89回アカデミー賞外国語映画部門に出品すると発表した。
Know All about Tamil Film Visaaranai, India’s Official Entry for the Oscars - The Better India
インドからアカデミー賞に出品されるタミル映画は、これで歴代9作品目となる。
「Visaaranai」は、4人の出稼ぎ労働者の日常を通じて、警察による残虐行為や不正行為を描いた問題作で、インドにおける慢性的な行政不全や司法制度の不備をあぶり出している。
本作の最も興味深い点は、原作のタミル語小説「Lock Up」の著者、チャンドラクマール(M Chandrakumar)氏の経歴だろう。
作品は、オートリクシャー運転手のかたわら小説家稼業する、「オート・チャンドラン(Auto Chandran)」とのニックネームで呼ばれるチャンドラクマール氏の、実体験をもとに書かれたものだという。
「10年前に何気なく書いた小説なんだけど、まさか映画化されるだなんて夢にも思っていなかった」チャンドラクマール氏は語る。
映画は昨年の第72回ヴェネツィア国際映画祭で海外初上映され、「人権のための映画(Cinema for Human Rights)」を獲得、その後インド国内で劇場公開されると批評家から絶賛を受け、最優秀タミル語映画賞、最優秀助演男優賞、そして最優秀編集賞などを総なめした。
同作がアカデミー賞の最終候補に残るか否かを、固唾を飲んで見守ることになるだろう。
公式トレイラーはこちら:
映画を観ていないわたしにとって、以下は単なる余談だが、誰の日常にも突然の理不尽が襲ってくることはあり得る。
特にインドのような国で、発言権も何もない、ちっぽけな存在の一庶民が、なんらかのきっかけで黒い魔物に睨まれ、人知れず闇に葬られるなどということは、朝飯前に起こっているのではないかということが簡単に想像できてしまうから恐ろしい。
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
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