身分差別を禁じる「インド憲法第15条」を題材にした新作映画が本日インドで公開
Posted on 28 Jun 2019 21:00 in エンターテインメント by Yoko Deshmukh
*The photo from Scroll.in Article "‘Article 15’ trailer - Ayushmann Khurrana takes on caste in Anubhav Sinha’s new film."
身分による差別を禁じるインド憲法「第15条(Article 15)」が、世界最大の民主主義国家とされるインドで21世紀の今、その重要性を増し、一方でその解釈のあり方について様々な論争を呼んでいる。
そうした中、アンシュマン・クーラーナ(Ayushman Khurrana)主演、アヌバウ・シンハー(Anubhav Sinha)監督の最新作、「Article 15」が巻き起こす議論と、実際のインド憲法第15条が定めていることについて、「India Today」が紹介していた。
Why is Article 15 important for India?
Article 15公式トレイラー
本日6月28日にインドで公開された映画、「Article 15」は、ヴァラナシ(バナラス)で、下層カーストなどと不当に呼ばれる低所得層に属する3人の少女が殺害された事件を追う、アンシュマンさん扮する刑事の身の回りで起きるストーリーを描いた作品だ。
依然としてカーストや宗教などによって人々が差別され、区別されているインドで明らかに顕在する、胸を締め付けられるような現実を浮き彫りにする。
インド憲法では国民に、あらゆる差別を禁じている。
にもかかわらず、特定のカーストに属するとされる人や、人口規模で少数派の宗教を信じる人々は、依然として差別され、社会的に低い地位に甘んじることを強いられている。
映画「Article 15」では、インド憲法の中でもこうした差別を禁止する条項に光を当て、人々に啓発することを目指す。
「India Today」の記事では、インド人でもなかなかその真意を考えたことがない第15条について、改めて説明している。
まず、「インド憲法第15条」では次のように定めている。
すべてのインド国民は、宗教、人種、カースト、性別、出生地によって差別されてはならない。
また、すべてのインド国民は、店舗、レストラン、ホテル、公共の娯楽施設への立ち入りを拒まれることはなく、そして井戸や貯水池、沐浴場、道路、また州がその運営について、完全にまたは一部を出資した、または一般市民の利用のために建設された公共の保養施設の使用に際し、それを妨げられたり、義務や制限を課せられたり、または条件を付けられたりすることはない。
第14、15、および16条は憲法上の平等の権利(Constitutional Right to Equality)の体系の一部を構成しており、うち第15条と16条については平等を保証するための付帯条件かつ第14条に効力を持たせるためのものである。
ただし当初、第15条4項および第16条4項は、第15条1項および第16条1項に照らした例外とみなされた。
第15条3項および4項では、女性、子供、その他下層階級に属するとされる人々に対する特例措置に異議を挟む材料として、第15条を用いてはならないと記載している。
この条項および第29条2項では、社会的および教育的に不利な階級に属するとされる被差別国民、指定カーストおよび指定部族に属するとされる人々の発展のために、国家が特例措置を実施することを妨げてはならないと定めている。
第15条5項ではさらに一歩踏み込み、マドラサ(Madarsa)などの少数派の人々が運営する教育機関を除く、私立・公立を問わぬ教育機関への入学枠を一定数確保することで、国力を向上することを目指す、と定めている。
以上が第15条に関する要点である。
このインド憲法第15条については、これまで不当な差別を受けてきた階層の人々が機会を得る上で、ある程度の効力を持ってきたが、21世紀の今、差別は厳格に撤廃するようにあらゆる手段を尽くす一方で、被差別階級に一律の入学枠確保という方法ではなく、経済的に不利な立場にある人々への資金援助を含めた、本当に才能のある人材の発掘など、能力に応じて等しい機会を国民全員が享受できるような社会にしなければならない、と考える人もいる。
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
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