「本当の自分を受け入れたことで運命が変わった」あるトランスジェンダー女性の手記

 

Posted on 05 Nov 2018 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

幸せをつかむためのステップは、実はとてもシンプルなものなのだということを、美しいサニヤさんに教えてもらいました。



「The Better India」に、性同一性障害に悩み、鬱病まで患った女性が、性転換手術を機に本来の自分を取り戻し、インド社会に語りかけるインタビュー記事が掲載されていたので、自らの学びを兼ねて要約したい。

Bullied For Being Different, She Defeated Depression & Taunts to Become a Transqueen! - The Better India

ヒマーチャル・プラデーシュ州の美しい丘陵地帯で、健康な男児として生まれたサニヤ・スード(Saniya Sood)さんは、幼いころから身体的な性別と、自己が認識している性別との間に違和感を覚えていた。

「性別というものに関して何の知識もなかった5歳ぐらいのころから、男の子の身体を持って生まれた女の子として、話したり、歩いたり、気持ちを表現していた。学校や遊び場では、そんな自分をほとんどの子たちが笑い、格好のいじめの対象となるのに時間はかからなかった」サニヤさん。

サニヤさんが25歳になってようやく、自分がトランスジェンダーであることを明確に認識するようになるまで、その人生は混乱に満ちたものだった。
「12年生(高校3年生ぐらいに相当)になると、周りの子たちは恋愛したり交際したりするようになってくる。そして私はどうしても男子に惹かれてしまうので、クラスメイトたちからはゲイと呼ばれるようになり、私自身もそうに違いないと信じるようになっていった」

進学を機にカルナータカ州ベンガルールに引っ越し、ゲイの男性として暮らし始めたサニヤさんは、現地のLGBTQコミュニティーとの交流を通じて、またしても自己の性別に疑問を抱くようになる。

「ゲイとは男性を愛する男性であり、ジェンダー同一性に違和感がない。ゲイと呼ばれる人たちは、私の容姿を男性と判断して近付いてくるのだが、そもそも私の中に男性は存在しないのだ」

母親からは、女性と出会えば悩みは解決するかもしれないなどと、執拗に結婚を勧められるようにもなり、「それは自分だけではなく、相手の人生も破壊する行為」と、サニヤさんは自分の正体が分からない違和感と、周囲の理解が得られない葛藤から、ついに鬱病に罹ってしまう。

そんなある日、休暇でゴアへ一人旅したサニヤさんは、そこでトランスジェンダーの女性と出会う。
「短い滞在中に2度、3度と彼女と会い、深い話をした。周囲の理解がまったく得られず、性転換手術を受けると明かせば家族に勘当され、教育も仕事の機会も奪われて売春するしか生きる術がなかった彼女から、それでも自分自身を受け入れることが大切だと言われた」

旅を終えてベンガルールに戻ると、人気トークショー「Satyamev Jayate」に別のトランスジェンダー女性が家族全員を連れて出演していた。
「家族のサポートを得た彼女に触発され、私も自分の動画メッセージを撮影して家族に送った。すると、『お前の決めたことなら、どんなことでも支える』と、これまでになかった理解を得ることができた。30歳にしてようやく、自分の身体の中に囚われ、隠れる必要がなくなったのだ」

そこでサニヤさんは、仕事を続けながら、高額なホルモン療法、注射、投薬、レーザー治療を受けることを決める。

経済的な負担も相当あり、大きな決断だったが、その時点でベンガルールのメディア会社に字幕編集者として、また40名のチームを率いるマネージャーとして勤めていたサニヤさんは、月収10万ルピー近くを稼いでおり、迷いはなかった。

2017年12月、ついに仕事を辞めてバンコクで評判の高いのトップクラスの医師による最後の手術を受けたサニヤさん。
母と兄が、手術からの回復に必要な3ヶ月間を、ともに過ごしてくれた。
「30年間、誰かほかの人のふりをして生きてきた。やっと本当の自分に戻れた。それを家族も受け入れてくれた」

その後、サニヤさんは、トランスジェンダー女性たちの美人コンテスト、「トランスクイーン・インディア(Transqueen India)」に出場、見事、準優勝に輝く。
「インドでこのようなコンテストが開催されていることすら知らなかった。性転換手術を受けたことで、子供のころに夢見ていたことすべてが叶った」

今後の課題として、サニヤさんは次のように語る。
「トランスジェンダーの女性たちも、女性であることに変わりない。そんな女性たちに対する、人々の偏見やステレオタイプなレッテルを破り、尊重と平等が当たり前の社会を実現しなければならない。例えば私はトランスクイーン・インディアで準優勝したが、モデルとしての仕事は非常に不安定だ。色々なエージェントや事務所に連絡を取っているが、トランスジェンダーと仕事をしたいと考える企業はまだほとんどない。人々が身体的な外見だけでなく、内面を見てくれる日が来るまで、私は努力をし続ける」

麗しい才色兼備のサニヤさんの姿は、Facebookで拝むことができる。
サニヤさんのような人々が、インドという枠に囚われることなく、全世界にその活躍の舞台を広げて行ける時代が、すぐそこに来ているように思える。


サニヤさんのFacebookページ


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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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