どんどん便利になっていくインドの都市で、絶対に忘れてはならない存在
Posted on 28 Oct 2018 21:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh
「不便」に甘んじることなく、それを「ジュガール(Jugaad)」の余地とする。そんな人や環境と調和した国として、インドが成長してくれることを望んでいます。
インド、特にプネーを含む都市部での生活は、年々加速度的に便利になっている。
先日、日経ビジネスオンラインに、デリー在住でインフォブリッジグループ代表の繁田奈歩さんの次のコラムが公開されていて、頭脳系の若者たちが、お金よりやりがいを求める傾向についての言及も合わせて、まったくその通りだと頷きながら拝読した。
インドでの「引き籠もり」生活、日本より快適に - 日経ビジネスオンライン
わたしも7月中旬に日本から帰って来てから、スーパーマーケットの実店舗に足を運んだのは1回しかなく、あとはすべてネットスーパー「BigBasket」を利用して食料品を購入していた。
BigBasket
「BigBasket」は少量の買い物でも送料が無料になることが多く、また配達も、「お急ぎ便(Express Delivery)」を選ぶとプネーの場合は注文から90分以内に配達してくれる。
とは言え心情的に、ある程度は買うべきものが溜まるまで待ち、配達も通常配送(Standard Delivery、平均1~2日)を選ぶことで、業者になるべく不要な負担をかけないよう、自分なりの配慮をしている。
それは、「The Better India」が伝えていた以下の記事にあるような事情に、自然に賛同しているからでもある。
Pizza in 30 Mins? Man’s Viral Post Will Make You Rethink Free Home Delivery of Food!
「注文から配達までに30分以上の時間がかかったら、そのピザを無料で進呈します」という、客側からすれば非常に魅力的に聞こえるキャッチコピーは、インドの都市部にも浸透しつつある(プネーの場合は「45分以上」だが)。
実際、注文する側は自宅に居ながらにしておいしいピザを食べることができる、という楽をさせてもらっているのに、1ルピーの追加負担も強いられない無料フードデリバリーに絡むこの「30分ルール」を、配達人が生命の危険を冒してまで遵守しなければならない義理はどこにあるのか。
そのような問いかけをした、ある男性のフェイスブックへの次の投稿が、多くの人々の注目を集め、考えるきっかけを与えている。
内容を要約すると、投稿者は自身の運転する車の前で、あるバイク配達員の男性が先を急ぐあまり非常に危険なジグザグ運転をした挙句、ついに横転するという現場を目撃することになる。
幸い大事故には至らなかったが、男性を助け起こしながら「なぜそんなに急いでいるのか」と詰問すると、「ごめんなさい、時間内に配達しなければならない注文があるんです」と言い残して瞬く間に去って行ったという。
投稿ではこの出来事を通じて、読んだ人に「誰かの大切な命を犠牲にしてまで温かいピザを食べたいのか」と問いかけるものだ。
不便なことだらけのインドが当たり前として長くやってきているので、「BigBasket」や「Uber Eats(ウーバーによる食事のデリバリーサービス)」などが身近になり、急に便利になった今でも、その裏で簡単に変わりようのない低賃金と過酷な環境で汗を流し、生命の危険まで冒している人たちの存在を常に意識し、自分だけに利益のある劇的な状況変化が、誰の犠牲も払わずに実現するわけがないことを常識として知っておきたい。
デリバリーサービスが、誰かの収入を助けることになるのだとしても、誰もが人間らしい働き方ができるよう、社会全体で協力して考えていかなければならない。
そしてこの話は単にデリバリーサービスに関するものではなく、現代都市に生きるわたしたちの誰もが、このバイク配達員のように仕事の奴隷となり、時に命すらないがしろにするような働き方をしていないか、考えさせるものでもある。
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※アノーキーが瞬く間に3位入り、注目度が高い。
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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