パトナ雑感
初めて訪れたビハール州パトナは、州都と呼ぶにはあまりにも開発が遅れている印象が強かった。
マハーラーシュトラ州で言うとアウランガーバードに近いように感じた。
ただしWikipediaによれば、パトナの人口は200万人を超える(同出典のアウランガーバードは112万人)。
日本企業の進出もほとんどないので、アビシェックさんやNIT(国立工科大学)パトナ校の方々が機会を下さらなければ、ブッダガヤーはともかく、州都パトナにはなかなか訪れることができなかっただろう。
本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。
なお、今年2月には州首相が来日し、投資を呼び掛けたりもしている。
インド・ビハール州、日本からの投資呼びかけ - 日本経済新聞(2018/2/20)
ビハール州に対する人々の捉え方を理解する一助として、ある日の昼食時、世話係を務めてくださった教授のひとり(アッサム州出身)が、次のようなエピソードを語った。
親族のひとりが、娘がマハーラーシュトラ州内の工業大学に合格したことを喜んでいたので、どこの大学に進学するのか尋ねたところ、ゴンディア(Gondia)という聞いたこともない、州東端のジャールカンド州境ほど近くにある小さな町の名前を挙げた。
「それでも、マハーラーシュトラ州内の大学に進学できた、というだけで自慢になるんです」と語った。
誰もが一刻も早く成功してビハール州を脱出したいと考えているということなのか。
今回の講義をきっかけに、優秀な学生さんたちが積極的に日本での研究や就職を考えてくれたらいいなと心から願っているし、せっかくできたご縁なので、こちらから可能な限り有用な情報提供を行っていきたい。

前列右端のお2人が、今回大変お世話になった、
スブラータ・ダース助教授(右)とプラディープ・スクル助教授(ともにPhD, Chemistry)。
わたしの左隣にいらっしゃるのが、お声をおかけくださった、
プネーで知的財産管理会社を経営するアビシェックさん。
なお、ブッダガヤーからパトナに向かう帰路、ガヤーをはじめ通過した中小の町の中心地には、英語よりも外国留学よりも、数学の特訓を掲げる塾の看板が非常に目立った。
数学はインド最難関の高級官僚であるIAS(Indian Administrative Service:インド行政職)に合格するための必須科目だ。
他州と比較して決して大きくないビハール州から、国内最多のIASが輩出される証拠の一端を見た。
なおほぼ2日間NITパトナ校に滞在し、インド随一と言える知的な方々との交流をしていて気づいたのだが、このような高い教育水準にかかわらず英語での会話に難儀している様子があった。
インド公用語であるヒンディー語のほか、ビハール州ではボージュプリー語が広く使用されている。
なお、教授陣には近隣のアッサム州や西ベンガル州、学生には州内ほか、遠くはアーンドラ・プラデーシュ州出身の方もいらっしゃった。
もうひとつ印象に残っている話として、NITパトナ校では定期的に海外(主にアメリカ)から専門分野(化学や物理が中心)で第一線の研究に従事する学者を講師として招いている。
その際、学者には5日間で少なくとも8,000ドルの報酬が支払われるという。
なおパトナには国内最高峰の技術系大学であるインド工科大学(Indian Institute of Technology:IIT)パトナ校も所在し、ともにエリート工科大学である両校の間では、かなり活発な交流がある。
ブッダガヤー
恥を忍んで告白すると、ブッダガヤーを訪れるまで、わたしには仏教徒という強い自覚も仏教に対する真剣な関心もなかった。
もともと怠け者で勉強不足のわたしは、ブッダガヤー訪問も観光の一部として捉えていたのだった。
しかし仏陀が悟りを開き、何もかもが始まったその地を訪れた今、誰に説法を受けるでもなく、説明のつかない見えない大きな力に導かれるように、わたしの中での仏教の意味、そして生きることの意義が大きく変化しつつある。
マハーボーディ寺院周辺は、物理的には埃にまみれつつも、すぐ周囲に迫る圧倒的ヒンドゥー世界、過酷な環境のインド世界から、そこだけ切り離されたような、ある種の清浄な空気が流れているようだった。
まさに、あらゆる人種や国籍の人々が大菩提樹に向かって静かに祈りを捧げながら、見えない存在と対話している。
わたしは特に意識することなく、そうした方々と特に交流や対話をすることもなく、ただただぼんやりとそこに座り、大菩提樹を眺めていた。
すると雨季も終盤となったブッダガヤーの、10月の曇り空の下、一陣の涼しい風が吹いて来て、その風に乗って無意識に何らかの働きかけがあり、精神のあり方にかすかな変化が起こるのを感じた。
言葉で説明するとすればすなわち、「生きることとは、今この瞬間を慈しむこと」を強く意識させるものであった。
このような体験はこれまでの人生でほぼ初めてのことであり、ブッダガヤーをこのタイミングで訪れたことは正しいことだったのだと確信した。
仏陀が悟りを開いたブッダガヤーが、今なお貧しさから脱することができないビハール州にあることの意味が何かあるのだろうか。
飛行機で訪れていても、このような気持ちになれたのだろうか。
日本人観光客の姿はほとんど見かけなかった。
亡き父を連れてきたかった。
今度は仏陀生誕の地とされるネパールのルンビニーや、入滅の地ウッタル・プラデーシュ州クシナガルをはじめ、ゆかりの地をひとつひとつ巡礼してみたい。

ガンジス川河川敷を散歩しながらお話ししてくれた、
NITパトナ校の女子学生たちが、
かわいい写真をたくさん撮ってくださった。
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