ブッダガヤーのマハーボーディ寺院で、何もかもを飲み込むような圧倒的なインド世界を想う

 

Posted on 10 Oct 2018 21:00 in トラベルASKSiddhi by Yoko Deshmukh

厳しい気候や環境は、仏陀が歩んだ時代から何ら変わっていないし、むしろ間違いなく悪化しているでしょう。



ブッダガヤーへの道中、パトナ郊外は一面の湿地帯で、見渡す限り緑の平原の中にヤシの木が点在し、ところどころに白い蓮の花が咲く水溜まりがあった。
ただし「美しい田園風景」と描写するには無理のある、単調な景色を眺めながら、喧騒のパトナはいざしらず、ブッダが悟りを開いた地であり、全世界の仏教徒にとって最大の聖地にいくら近づいても、そこにあるのは剥き出しのヒンドゥー教世界であり、仏教の気配すら感じ取ることはできないんだな、などと考えていた。

インド亜大陸を西側の町プネーからググっと思い切り東北方向にあたるパトナまで飛行機で一気に飛び、さらにパトナから距離にして110キロメートル南下した、埃と灼熱の大地をクルマで走ってみると、改めてこの国の絶望的な広大さと気候の厳しさ、故になかなか向上しない人々の生活や道路事情に圧倒されてしまう。
ついにブッダガヤーに入った時には、インドから仏教がいったん消滅したとすれば、それは自然な成り行きなのだろうと、気持ちが少し滅入ってきていた。



 

幸運にも本日のブッダガヤーは曇りがちの空で、ホテルに到着して一息つき、寺院巡りに繰り出した午後2時半現在、暑さもほとんど感じない、とても快適な気候だった。
おかげでマハーボーディ寺院への道中は、タイ寺院やバングラデシュ寺院、中国寺院などを参拝しつつのんびり歩けた。
マハーボーディ寺院の周囲1キロほどは交通規制が敷かれ、電気オートリクシャーしか入域できないようになっていたので、散歩は割と楽だった。

マハーボーディ寺院はユネスコ世界遺産に指定されているのに、参拝するにあたって入場料を取られたりなどすることはない。
その代わり携帯電話の持ち込みは禁止されているので、入口で預ける。
カメラの持ち込みは有料で可能だ。

世界的な観光地だけあって、いい歳をした警察官にも軽くナンパをされるし、色々な物売りに日本語で話しかけられるが、すべてガン無視。

2段階のセキュリティ検査を経て、ついにマハーボーディ寺院とブッダが悟りを開いた菩提樹のある敷地に近づいていく。
境内には文字通り様々な人種・国籍の人々が訪れていたが、インド国内の他の寺院などと異なり、誰もが不思議に見えない秩序を保っている。
この日は特に、タイとミャンマーからのお坊さんや参拝客が目立った。

厳粛に聳え立つマハーボーディ寺院本堂内の、小ぶりだが均整の取れた美しい仏陀像に、無事訪問させてくださったことに対するお礼を述べた後、寺院裏手に現在も立つ大菩提樹へ回る。
壁にしつらえられた窪みに腰掛け、しばらく物思いにふけった。

ここまでの道中に感じた圧倒的な無力感、すべてを飲み込んで塵に変えてしまうようなインド世界を前に、仏教は死滅するしかなかったのか、という絶望感が、徐々に癒やされていく。

なぜなら、こんなちっぽけな、いつ倒れてもおかしくないような菩提樹を二千年以上も守ってきたのもまたインド世界なのだから。
そして紛れもなくこの混沌を極めたインド世界で、仏陀というやはりちっぽけなひとりの人間の悟りが、インターネットなんて影も形もない時代、入滅からそれほどの時を隔たずしてアジャンターやエローラなどの石窟群が点在するデカン高原西部はおろか、果てはアフガニスタンのバーミヤン渓谷まで、はるばると伝え広められたのだ。

境内から立ち去るころには、すがすがしい気持ちになって、わたしもまた、この巨大なインド世界に飲み込まれつつ、自己の存在と向き合おうという気持ちになっていた。

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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