ムンバイーのダッバー・ワーラーたち、未曽有の危機を乗り越える不屈の精神

 

Posted on 14 Jun 2021 21:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh

柔軟に変化し続け、生き残り続けてきたダッバー・ワーラーたちです。




新型コロナウイルス感染症パンデミックを引き金とする、厳格なロックダウンを2度も経験し、仕事も住む場所も失い、絶望の淵に立たされている人はインドにも大勢おり、特に130年以上の伝統を誇る弁当配達人、「ダッバー・ワーラー(Dabba Wala)」たちの悲痛な訴えと奮闘、そして強靭なサバイバル精神には、深く考えさせられる。
きれいごとやうわべだけの励ましや支援ではとても乗り切れない、かつてない大危機を、懸命に生き抜こうとしているダッバー・ワーラーたちは、世紀を超えて我々一般人に仕事というものの尊さを教えてくれる、大切な存在だ。

そのダッバー・ワーラーが、まさに一大イノベーションを起こそうとしている、という話題を、「Times of India」ウェブ版に見つけた。

Mumbai: Now, dabbawalas to cook your lunch and deliver

父の代からダッバー・ワーラー稼業という60代のヤムナージ・グーレ(Yamnaji Ghule)さんは、数十年にわたる弁当配達の仕事に誇りを持ってきた。
新型コロナウイルスの感染急拡大により、ダッバー・ワーラーたちの仕事は大打撃を受けている。

ダッバー・ワーラーたちは本来、変化への適応力の高さでも人々を驚かせてきた。
変わり続ける消費者のニーズに応えるため、英語を学んだり、コンピューターリテラシーを身に着けたり、それまで男性の世界だった職業に女性の配達人を迎え入れたりしてきた。
かつてない大危機に直面した今も例外なく、ダッバー・ワーラーたちは考えた。
オフィスに行く人が激減し、家庭や業者が作った弁当を「配達する」ニーズがなくなったとしても、独身や単身赴任などで暮らす人々も多いムンバイーには、弁当そのもののニーズはあるはずだ。
そこでもはや「配達する人」だけに徹するのではなく、頼まれれば料理もするようになったのだ。

そこでまずは、サキナカ(Saki Naka)に1,000平方フィート(〇平米)の「クラウドキッチン(cloud kitchen)」を確保、ダッバー・ワーラーたちとその配偶者たちも参加し、飲食業の専門家を招いて調理の特訓を受けたのち、7日間毎日メニューの変わる、栄養価の高くておいしい弁当を調理、配達するという新たなサービスを開始した。

考えたのは、「4代目」ダッバー・ワーラーとして働き、MBAの学位を持つ25歳のリテーシュ・アンドレ(Ritesh Andre)氏だ。

普段、ムンバイーには5,000人ほどのダッバー・ワーラーたちが行き交い、大雨の日も洪水の日も、テロ事件のあった日も、1日も休むことなく必要な人々のもとへ時間通りに弁当を配達してきた。
しかし、新型コロナウイルスのパンデミックは、どんな苦難の時にも予測できなかった、需要の蒸発を引き起こし、それを唯一の収入手段とし、また生き甲斐としてきた人々から仕事を奪ってしまった。

月に1万4,000~2万ルピーほどとされるダッバー・ワーラーたちの収入は突然ゼロになり、多くは故郷である近隣のプネーやジュンナール(Junnar)をはじめとする、マハーラーシュトラ州各地に帰らざるを得なくなった。

ダッバー・ワーラーたちの収入を取りまとめる信託基金「Nutan Mumbai Tiffin Box Suppliers Charity Trust」の理事を務めるウルハス・シャンタラム・ムケ(Ulhas Shantaram Muke)さんによれば、どうすればサービスを再開できるかを考えた結果、新型コロナウイルス感染者の隔離施設や自宅隔離をしている人々、病院で働く医療従事者たちが、質の高い食事を必要としていることを知った。

副業として警備員をしたり、農業従事者からの依頼を受けて新鮮な農産物を届けたり、ムンバイーの複数のレストランと提携してフードデリバリーの仕事をしたりして、なんとか苦難を切り抜けようとするダッバー・ワーラーたちのもとへ、天啓のように降りてきたのが、「クラウドキッチン」のアイデアだ。

アンドレ氏によればさっそく、消費者が直接注文できるウェブサイトの制作に取り掛かっている。
プランはインド独特の積み重ね式弁当箱で2段または4段、月額または年額から選択でき、オンラインで支払いが完結する。
長らく現金取引に依存してきたダッバー・ワーラーたちにとって、新しいことづくめだが、「(オンラインでの確実な資金のやり取りができるようになることで)財政難を避ける大きなステップとなる」とアンドレ氏は説明する。

オンラインで注文を受け、調理して配達するという一連の新サービスは、ダッバー・ワーラーたちの天性のスキルである整理力を活用し、さらに多様化させることで新たな雇用を生み出し、伝統ある弁当配達業に安定と誇りをもたらすものだと、アンドレ氏は付け加えている。

もちろん、配達すべき弁当は、ダッバー・ワーラーたちだけが理解できるカラー、アルファベット、そして数字の暗号で区別される。

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なお、現状に何ら役立つ情報をご提供できていない「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」なので、せめて「在ムンバイ日本国総領事館」より日々発信されている州内の状況や州政府による措置に関する最新情報を、今後はこちらにも転載させていただきたい。

=== 以下、同掲題メールの転載 ===
※6月7日付けのメール、件名「新型コロナウィルスに関する注意喚起(マハーラーシュトラ州におけるロックダウンの改訂)(2021年6月7日)」


●6月4日,マハーラーシュトラ州政府は,現在実施されているロックダウン措置の修正を発表し,本件措置は7日(月)から開始されます。
●ムンバイ市は,規制緩和5段階のレベル3となり,食料品等の店頭販売時間は,午前7時から午後4時まで延長許可となります。

1 6月4日,マハーラーシュトラ州政府は,現在実施されているロックダウン措置の修正を発表し,本件措置は7日(月)から開始されます。

2 ムンバイ市は,規制緩和5段階のレベル3となり,食料品等の店頭販売時間は,午前7時から午後4時まで延長許可となります。また,非生活必需品を販売する店舗は,月曜日から金曜日の間,午後4時まで営業許可となります。なお,レストランは,午後4時まで客席50%以下で営業許可(月曜日~金曜日)となり,モール,映画館は営業停止が継続します。

3 お住まいの地域における陽性率や重症患者用病床の空き状況等により,店頭販売時間等の規則緩和レベルが5段階で異なりますのでご注意願います。
(詳細については、お住まいの地域の役所にご確認願います。)
本件州政府及びムンバイ市からの通知内容については,以下のとおりですので,各自ご確認ください。
URL:https://www.mumbai.in.emb-japan.go.jp/files/100198177.pdf

4 午後5時以降の外出は医療関連やその他緊急の場合等に限られますので,引き続きご注意願います。

【問い合わせ先】
在ムンバイ日本国総領事館・領事班
電話(91-22)2351-7101
メール ryoji@by.mofa.go.jp
=== 転載終わり ==


☆本日の1曲☆

 






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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