先天性の難病を抱えた乳児、26万人の善意により救われる

 

Posted on 09 May 2021 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

昨今の世界で希望の光の見える話題ではあるけれど、肝心の医薬品の価格は何とかならなかったのかな、という素朴な疑問も湧いています。写真は自分のフォトギャラリーで「Hope」と検索したらなぜか出てきた、ナーグプル名物サンタラー(オレンジ)バルフィーです。



ムンバイーで、先天性の難病を抱えた乳児の遺伝子治療のために必要な資金として、26万人の人々の善意による寄付1億6,000万ルピーが42日間で集まった、という話題を、「NDTV」電子版が伝えていた。

People Donate ₹ 16 Crore For Mumbai Child Who Needed Most Expensive Drug

ムンバイー在住の、生後5か月の男児は、生まれてすぐに脊髄運動神経変性による遺伝性の筋萎縮症である、脊髄性筋萎縮症I型と呼ばれる稀な遺伝性疾患を患っていると診断された。

この疾患は小児の神経系に影響を与えるため、当初医師は2歳まで生きられないかもしれないとのむごい宣告をした。
現時点で治療できる唯一の可能性は、ゾルゲンスマ(Zolgensma)と呼ばれる遺伝子治療用の医薬品をたった1回、静脈内に注射することだが、これは世界で最も高価な薬とされ、輸入して接種するためには1回に1億6,000万ルピーもの費用がかかる、とされている。

1回の注射に1億6,000万ルピーを支払うことは、インド人でなくともほとんどの人にとって不可能だろう。

当然、両親には全財産を投げ打っても、それを支払う余裕はなく、途方に暮れた。
担当の小児神経科医によれば、この疾患は8,000~1万人に1人の新生児にみられる疾患で、適切なタイミングで治療できなければ、生命に大きなリスクがある。

藁にもすがる思いでクラウドファンディングプラットフォーム「ImpactGuru」で資金を募った。
ご両親にとって数十万人もの見知らぬ善意の人々が、これほど関心を持ち、協力してくれるとは思いもよらなかったことだっただろう。

おかげでダイリャ(Dhairya)と名付けられたこの子は5日、無事ゾルゲンスマの接種を受けることができ、現在のところ状態は安定しているという。

ゾルゲンスマは製薬大手のノバルティス傘下の米バイオテクノロジー系スタートアップ企業AveXisが開発、2019年に米国で、2021年に英国で、ぞれぞれ使用が承認された。

参照: AveXis社、脊髄性筋萎縮症対象にした遺伝子治療が画期的治療薬指定:日経バイオテクONLINE

ゾルゲンスマは患者に欠落している遺伝子SMN1のレプリカを含んでおり、静脈内に注入することで、有効成分であるオナセムノジーン・アベパルボベック(onasemnogene abeparvovec)が神経に入り、遺伝子を回復、神経機能と筋肉の動きの制御に必要なタンパク質を生成、稀な遺伝的疾患に苦しむ乳幼児が自発的に動く力を取り戻すことができる。
投与量は、患者の体重に基づき判断される。

研究によればゾルゲンスマを接種した乳児が人工呼吸器なしで呼吸できるようになり、1回の接種後に自力で起き上がり、ハイハイできるようになったなどの例が報告されている。

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なお、現状に何ら役立つ情報をご提供できていない「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」なので、せめて「在ムンバイ日本国総領事館」より日々発信されている州内の状況や州政府による措置に関する最新情報を、今後はこちらにも転載させていただきたい。

=== 以下、同掲題メールの転載 ===
※5月8日付けのメール、件名「日本への帰国・再入国のためのPCR検査及び日本への臨時便の運航について」


●日本への帰国・再入国のためのPCR検査及び日本への臨時便の運航について、再度情報提供します。

1 日本への帰国・再入国のためのPCR検査について
(1)当館では、ムンバイ近郊で安全で信頼度の高いPCR検査受検が可能な検査機関を紹介しておりますので、必要な方は、当館ホームページをご覧いただくか、以下の問い合わせ先に御連絡ください。また、日本に帰国・再入国するための検査証明書の取得に時間を要する等の状況でお困りの在留邦人の皆様の一助とすべく、当館から関係機関に対して便宜を要請する文書を御用意していますので、予約を行う際には御活用ください。
https://www.mumbai.in.emb-japan.go.jp/files/100186059.pdf
【問い合わせ先】
在ムンバイ日本国総領事館・領事班
電話(91―22)2351―7101
緊急連絡先(91―98)2018―7633
メール ryoji@by.mofa.go.jp

(2)なお、十分な時間的余裕をもって予約をするなど早めの準備をしていただくことにより、受検及び陰性証明書の入手をより確実にしていただくことが重要です。御帰国にあたっては、余裕を持ったPCR受検計画を立てるようお願いいたします。

2 現在、ムンバイ発成田行の臨時便は、ANAが5月13日、5月27日、6月10日、6月24日に予定されています。またデリー発羽田行の臨時便は、日本航空が週3便(水・金・日)、ANAが週2便(月・金)、それぞれ運航しています。現時点ではこれらの便の多くには空席がありますが、予約状況は刻一刻と変化しますので、余裕をもって準備されることをお勧めします。詳細につきましては、下記の各航空会社の問い合わせ先までご連絡ください。

(ANA問い合わせ先)
◆新規予約や空席に関する問い合わせ
電話:(インド国内)000800-100-9274 ※24時間対応 ※通話無料
(インド国外)+81-3-4332-6868 ※24時間対応 ※有料
ウェブ:お問い合わせ窓口[インドにお住まいの方]
https://www.ana.co.jp/ja/in/site-help/contact/
◆その他問い合わせ
デリー羽田線 :ANAデリー支店予約チーム:delrsvn@ana.co.jp
ムンバイ成田線:ANAムンバイ支店予約担当:bomrsvn@ana.co.jp
※営業時間:9:00から18:00(インド時間)土日祝日を除く
※英語での受付となります。

(日本航空問い合わせ先)
電話:(日本語)1800-103-6455、+81-6-7633-4129(国際電話有料)
営業時間 5:30から15:30(インド時間)〔年中無休〕
(英語)1800-102-4135
 営業時間5:30から15:30*(インド時間)〔年中無休〕
*デリー準州政府からの指示により上記の通りオフィスアワーが変更
されているとのこと。
※上記に加え、以下の番号でも対応。
(英語)011-23323174,011-23327608,011-23324923
営業時間9:00から18:00(インド時間)※(土)(日)を除く。

3 日本外務省はインドについて「レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)」の感染症危険情報を発出しています。また、5月2日には、「インド滞在中の皆様への注意喚起(インド国内の医療提供体制のひっ迫)」に関するスポット情報が発出されています。スポット情報の中で、インド国内の新型コロナウイルスの感染状況が一層厳しくなっており、医療提供体制が更にひっ迫するおそれがあることを踏まえ、日本への一時帰国等を御検討中の方については、検査証明の取得等、出国のための手続きを早めに進めていただくこと、現時点において一時帰国を検討されていない方につきましても、今後の新型コロナウイルスの感染状況の推移に十分注意し、一時帰国を含めた対応を予め御検討いただくことをお願いしています。
=== 転載終わり ==


☆本日の1曲☆

 






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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