都会のオフィスワーカー憩いの場、タプリーは生き残るのか
Posted on 30 Jun 2020 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
この記事で述べている物件に相当する写真がなかったので、田舎道のタプリーの写真を。
「コロナ後のインドにチャーイ・タプリーは生き残るのか」というテーマの記事が、「BBC Worklife」(様々なテーマでワークライフバランスに関する概念や体験談をまとめたインタビュー特集)に掲載されていた。
Will Coronavirus end India’s tapri chai culture?
ここでの「タプリー」とは、田舎道にポツンとあるような峠の茶屋ではなく、主に都市部のオフィスビルや大学などの周辺で、親父さん1人とコンロ1台がやっと入るようなコンクリート打ちっぱなしの狭小スペースや、リヤカー1台で操業している茶店を指す。
わたしも会社勤めをしていたころは、1日に1~2回、タプリーにサボりに行くのがとても楽しみだったのだが、その心は、この記事に書かれている、それぞれの「タプリー物語」とほぼ共通する。
タプリーに行くと、チャーイはもちろん、その1杯のお供にクリームロール(Cream Roll)やサモサ(Samosa)、ワダパオ(Vada Pav)、ビスケットにかじりついて小腹を満たす人、タバコをくゆらせる人など多様なひとときを過ごす同僚たちが集まっている。
その多くは、業務で直接関わりのない部署にいたり、別のフロアで仕事していたりと、普段接点や会うチャンスがあまりなく、そうした面識のない人たちとも、会社に在籍する数少ない日本人という特権を活かして、気軽に話したものだ。
日本のように終業後に飲みになど行かなくても、チャーイ1杯だけで実に幅広い話に花を咲かせることができることも知った。
今やインドの大都市であれば津々浦々にスタバやCCDなどのおしゃれなコーヒー店があるが、そうした場所では決して代用できない魅力が、タプリーにはある。
座る場所がないからダラダラ長居もできないので、適度にリフレッシュしたらサッと仕事に戻る、という行動が自然に取れる点もいい。
タプリーはまるで、瞬間ネットワーキングの魔法空間だ。
あのころみたいに、またタプリーに行って、あの濃くて不思議とおいしいチャーイ1杯と、気軽な会話で暇つぶししたいな。
記事では、コロナウイルス感染症パンデミックを背景にインド政府が3月24日から強行した全土ロックダウン入り後のタプリーの危機についても触れていた。
ロックダウンは6月1日から建前上はいったん解除されたものの、プネーやムンバイーを中心とするマハーラーシュトラ州をはじめ、現在まで予断を許さない状況が続いていることもあり、オフィス再開は進んでいない。
そうした状況の中、在宅勤務を強いられるオフィスワーカーたちがひときわ恋しく思う存在であるタプリーもまた、収入の手段が絶たれたこと、またタプリーの事業者がコロナを機に故郷に避難していることなどから、存続が怪しくなりつつある、と指摘している。
ある事業者によれば、(都市部の)平均的なタプリーの1日の来客数は、午前7時から午後11時まで店を開けて500人程度で、月収は3万ルピー(およそ4万3,000円)ほどだ。
したがってロックダウンなどをきっかけにオフィスワーカーが家にこもってしまうと、商売が成り立たない。
「インド全国露店協会(The National Association of Street Vendors of India)」が実施する衛生管理や資金繰り、経営術などを含めた職業訓練や、住宅都市省(Union Ministry of Housing and Urban Affairs)による最大1万ルピーの融資策も、どれほどの効果を生むか不透明だ。
※7月4日、ウルドゥー語の麻田豊(あさだ・ゆたか)先生に「tapri」のカタカナ表記の修正をいただき、反映しました。
なお、現状に何ら役立つ情報をご提供できていない「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」なので、せめて「在ムンバイ日本国総領事館」より日々発信されている州内の状況や州政府による措置に関する最新情報を、今後はこちらにも転載させていただきたい。
=== 以下、同掲題メールの転載 ===
※6月19日付けのメール、件名「中国とのLAC付近における中印両国軍の衝突に関する注意喚起」
●ラダック連邦直轄領の中国との実効支配線(LAC)付近において,インド及び中国の両国軍による衝突があり,これまでに複数の死傷者が出ています。同地域への渡航は止めてください。
●ニューデリー市内においては,中国大使館前での抗議活動が行われているほか,ディフェンスコロニー地区での中国製品不買運動が起こっている等の情報があります。
●また,マハーラーシュトラ州ムンバイ市の中国総領事館周辺での抗議活動は,現在確認されておりませんが,報道によれば,ムンバイ市やグジャラート州アーメダバード,バドーダラ,スーラト,ラージコートでは,一部の者が路上で中国製の携帯電話やテレビ等電化製品やおもちゃなどを壊す・燃やす,窓から投げ捨てる等の行為に及んだほか,習国家主席の写真を燃やしたとも報じられています。抗議デモの現場やシュプレヒコールをあげる集団には決して近づかないでください。
在留邦人及び短期渡航者の皆様へ
1 ラダック連邦直轄領の中国との実効支配線(LAC)付近において,インド及び中国の両国軍による衝突があり,これまでに複数の死傷者が出ています。
報道によれば,両軍は5月上旬から両国の実効支配線のあるパンゴン湖周辺など数か所でにらみ合い,小競り合いも発生してきています。さらに,今月15日夜から16日未明にはバルワン渓谷で衝突が起き,インド政府によるとインド軍兵士20名が死亡したとのことです。中国側は未発表ですが,43人が死傷したとの報道があります。
このような状況を踏まえ,くれぐれも同地域への渡航は止めてください。
2 ニューデリー市内においては,在インド中国大使館前での抗議活動が行われているほか,ディフェンスコロニー地区での中国製品不買運動が起こっている等の情報があります。今後,市内の他の地域や他の都市においても同様の活動が起こる可能性があります。
3 また,マハーラーシュトラ州ムンバイ市の中国総領事館周辺での抗議活動は,現在確認されておりませんが,報道によれば,ムンバイ市やグジャラート州アーメダバード,バドーダラ,スーラト,ラージコートでは,一部の者が路上で中国製の携帯電話やテレビ等電化製品やおもちゃなどを壊す・燃やす,窓から投げ捨てる等の行為に及んだほか,習国家主席の写真を燃やしたとも報じられています。
中国に対する抗議行動等が今後起こる可能性がありますので,注意してください。
4 在留邦人の皆様及びインド滞在中の皆様におかれましては,今回の衝突に対するデモ活動などの現場付近にいた場合,中国人であると誤解され,不測の事態に巻き込まれる可能性があります。つきましては,最新情報の入手に努め,不測の事態に巻き込まれないよう細心の注意を払うとともに,抗議デモの現場やシュプレヒコールをあげる集団には決して近づかないでください。
このメールは,在留届にて届けられたメールアドレス及び旅レジに登録されたメールアドレスに自動的に配信されております。
【問い合わせ先】
在ムンバイ日本国総領事館・領事班
電話(91-22)2351-7101
メール ryoji@by.mofa.go.jp
=== 転載終わり ===
本日最も読まれている記事
1 購入後半年で故障したフォッシルのスマートウォッチを巡る、意外な顛末 16 Sep 2019
2 IMF初のチーフエコノミストに就任したギータ・ゴピーナート氏のあれこれ 05 Oct 2018
3 インド人の平均寿命と、女性の伸び率鈍化 01 Oct 2019
4 大量の食材を青空の下で調理し、2年間で700万ルピーの広告収入を稼ぐ人気ユーチューバーになった父子 24 Aug 2018
5 ロックダウン解除後の近所の風景 24 Jun 2020
About the author
|
|
Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
|
User Comments