公益か人権か、揺れる日本と他に選択肢がないインドと

 

Posted on 03 Apr 2020 21:00 in インドの政治 by Yoko Deshmukh

そうも言っていられない切迫した状況が刻々と近づいています。



東京や大阪などの大都市を中心に、新型コロナウイルスの感染が急拡大しており、日本でもインドやアメリカ、欧州諸国のように都市を封鎖し、人々の移動や外出を制限すべき事態が迫っていることを、日本医師会による「医療危機的状況宣言」や京都大学の山中伸弥教授をはじめとする有識者が数日前より繰り返し発信している。

また昨日、たまたま視聴したネットニュースでは、韓国でのウイルス封じ込め策が成功している秘密は、都市部の街頭にカメラを設置して監視していること、海外からの帰国者にアプリのダウンロードを義務付けて行動を追跡していることなどを紹介していた。

インドでも、一部これに近い措置を導入する計画があることを、「The Hindu」が報じていた。

Geo-fencing app will be used to locate quarantine violators

ジオフェンシング技術を使って、自宅隔離者の行動を把握し、違反者を取り締まるというものだ。

実現に向けてインド政府は、通信法(Indian Telegraph Act)第5条第2項に基づき、コロナウイルス感染者として指定した電話番号について通信会社から15分ごとに行動を把握できるようにする、としている。

対象者が指定された地域外に出ると、メールやSMSで当局に警告が飛ぶ仕組みだ。
精度は最大300メートルという。
実際に、最初に感染者が確認されたケーララ州で導入実績がある。

まるでジョージ・オーウェルの「1984」の時代が到来したかのような薄気味悪さを感じてしまうのは、わたしだけではないだろう。

同じ日のオピニオン欄には、チェンナイ地方裁判所の判事氏による「検疫と法律」というタイトルの寄稿があった。
法律の専門家らしく、人権と公益とのバランスについて、ペストが流行して人口の三分の一が失われた中世欧州にまでさかのぼり、繰り返し人類が直面してきた疫病の大流行の歴史と、検疫や隔離の定義と効果、そのたびに策定され、修正されてきた各国の法律の、歴史的な経緯や発達について述べられている。

Quarantine and the law

インドのように、教育水準も使用言語もバラバラで、かつ農村部の医療サービスが決定的に不足し、都市部ではスラムや狭い部屋にゆうに三世代が暮らすような住宅団地など、人口超過密地域が散在し、しかも検査できる機器も病院も医療スタッフも足りず、全体像を把握できるとは到底思えない国で、あまりの無策・無計画とはいえ、いきなり外出禁止令を出してしまうのはむしろそれ以外の方法はなかったとは思う。

一方で、「命令」を破って外出する市民に対し、警察が暴力をもって従わせようとする、明らかに行き過ぎた職権乱用が各地で見られ、問題になっている。

日本で「緊急事態宣言」法案が可決してもなお、人々の行動の権利を制限することになる、そうした措置の導入に慎重なのも納得できる。

緊急事態宣言、強制力に限界 不急の外出 罰則なく 日本経済新聞

まさに民主主義のジレンマに揺れているうちに、感染のリスクは急迫している状況である。

なお、現状に何ら役立つ情報をご提供できていない「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」なので、せめて「在ムンバイ日本国総領事館」より日々発信されている州内の状況や州政府による措置に関する最新情報を、今後はこちらにも転載させていただきたい。

=== 以下、同掲題メールの転載 ===

※4月3日付けのメール、件名「インドにおける新型コロナウイルスに関する注意喚起(デリー発羽田行き臨時便の今後の運航予定ほか)」

●インド政府によると、4月3日現在のインド国内感染者の合計は2301例(死亡56例)となっています。
●4月3日、全日空は、デリー・羽田線、ムンバイ・成田線、チェンナイ・成田線の4月24日までの運休を発表しました。なお、既に予定されている4月3日(本日)、5日、8日のデリー発羽田行きの臨時便には影響はないとのことです。
●また、日本航空は、4月3日(本日)及び4日のデリー・羽田線の臨時便の運航を予定していますが、5日以降の運航は今のところ予定されていません。
●御帰国を希望される方は、臨時便の運航予定に御留意願います。
●水際対策に係る査証制限等について改めて以下のとおりお知らせします。
(1)インドを含むすべての国・地域に所在する日本国大使館及び総領事館で4月2日までに発給された一次・数次査証の効力を停止。
(2)査証免除措置の適用を停止。
なお、日本国籍を有する方が日本に帰国する際に、外国籍を有する配偶者や子供を同行させるなど、人道的観点から緊急の訪日の必要性が認められる場合には、居住地を管轄する日本大使館または総領事館に新たな査証を申請することができます。また、4月2日までに再入国許可(みなし再入国許可を含む)をもって日本を出国し、日本入国前14日間入国拒否地域に行っていない方は、再入国することは原則可能です。入国拒否地域に行っていても、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」又は「定住者」の在留資格を有する方は再入国することは原則可能です。
●今般の新型コロナウイルスの感染拡大に伴うインド政府のロックダウン措置により,邦人の皆様の中で困っていることや悩んでおられることがあれば,末尾記載の問い合わせ先に御連絡ください。

在留邦人及び短期渡航者の皆様へ

本3日,在インド大使館が管轄内の在留邦人あてに以下の領事メールを発出したので,お知らせします。

1 インド政府によると、4月3日現在のインド国内感染者の合計は2301例(死亡56例)となっています。州ごとの内訳等は以下をご覧ください。
https://www.mohfw.gov.in/node/4904/

2 全日空は、4月3日、デリー・羽田線、ムンバイ・成田線、チェンナイ・成田線の4月24日までの運休を発表しました。なお、4月5日、8日のデリー発羽田行きの臨時便には影響はありません。詳しくは、全日空にお問い合わせください。
 また、日本航空は、4月3日(本日)及び4日のデリー・羽田線の臨時便の運航を予定していますが、5日以降の運航は今のところ予定されていません。
 御帰国を希望される方は、臨時便の運航予定に御留意願います。

3 「4月1日付領事メール『日本政府による水際対策強化に係る新たな措置の発表』」でもお伝えしたとおり、4月1日、日本において「水際対策強化に係る新たな措置」が決定されました。インドから出国する邦人の皆様に関連する本件措置の主な点は以下のとおりです。

●全ての国及び地域からの入国者に対する検疫強化(日本国籍者も対象)
(4月3日午前0時から4月末日までの間実施。当該期間は更新することができるとされています)
(1)空港の検疫所において、質問票の記入、体温の測定、症状の確認などが求められます。
(2)入国の翌日から起算して14日間は、検疫所長の指定する場所(ご自宅やご自身で確保された宿泊施設等(※))で不要不急の外出を避け、待機することが要請されます。
※自宅等への移動は公共交通機関(鉄道、バス、タクシー、航空機(国内線)等)を使用せずに移動できることが条件となりますので、事前にご家族やお勤めの会社等による送迎、ご自身でレンタカーを手配するなどの移動手段の確保を行ってください。家族による送迎の場合、出迎えに来た方は、帰国者と同乗したという理由では自宅待機の必要はありませんが、帰国者が帰国後に陽性が確認された場合には、濃厚接触者になるため、その時点から待機等が必要になります。

●インドを含む全ての国・地域に対する査証制限等(日本国籍者は対象外)
(1)インドを含むすべての国・地域に所在する日本国大使館及び総領事館で4月2日までに発給された一次・数次査証の効力を停止。
(2)査証免除措置の適用を停止。
なお、日本国籍を有する方が日本に帰国する際に、外国籍を有する配偶者や子供を同行させるなど、人道的観点から緊急の訪日の必要性が認められる場合には、居住地を管轄する日本大使館または総領事館に新たな査証を申請することができます。また、4月2日までに再入国許可(みなし再入国許可を含む)をもって日本を出国し、日本入国前14日間入国拒否地域に行っていない方は、再入国することは原則可能です。入国拒否地域に行っていても、「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」又は「定住者」の在留資格を有する方は再入国することは原則可能です。
※外務省感染症危険情報レベル2が発出されている全ての国・地域が、査証制限等の対象となります。なお、外務省感染症危険情報レベル2発出国については、外務省海外安全ホームページ( https://www.anzen.mofa.go.jp/) において御確認ください。
※ 本件査証制限措置も、4月3日午前0時から4月末日までの間、実施されます。

●過去14日以内に以下の75か国・地域における滞在歴がある外国人は入国拒否となります。
(アジア)インドネシア、韓国全土、シンガポール、タイ、台湾、中国全土(香港及びマカオを含む)、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア
(大洋州)オーストラリア、ニュージーランド
(北米)カナダ、米国
(中南米)エクアドル、ドミニカ国、チリ、パナマ、ブラジル、ボリビア
(欧州)アイスランド、アイルランド、アルバニア、アルメニア、アンドラ、イタリア、英国、エストニア、オーストリア、オランダ、北マケドニア、キプロス、ギリシャ、クロアチア、コソボ、サンマリノ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、バチカン、ハンガリー、フィンランド、フランス、ブルガリア、ベルギー、ポーランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ポルトガル、マルタ、モナコ、モルドバ、モンテネグロ、ラトビア、リトアニア、リヒテンシュタイン、ルクセンブルク、ルーマニア
(中東)イスラエル、イラン、エジプト、トルコ、バーレーン
(アフリカ)コートジボワール、コンゴ民主共和国、モーリシャス、モロッコ

●今回の水際対策強化に係る検疫強化措置や査証制限措置の詳細については、以下の厚生労働省、法務省のホームページ等をご確認ください。
○厚生労働省ホームページ水際対策の抜本的強化に関するQ&A (随時更新される予定です)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou_00001.html

(問い合わせ窓口)
○厚生労働省新型コロナウイルス感染症相談窓口(検疫の強化)
日本国内から:0120-565-653
海外から:+81-3-3595-2176(日本語、英語、中国語、韓国語に対応)
○新型コロナウイルス感染症の拡大防止に係る上陸拒否について(法務省ホームページ)http://www.moj.go.jp/content/001316538.pdf

4 4月4日以降に予定されている日本航空及び全日空の臨時便をご利用の方は、搭乗日前日までに以下の必要情報をメールでご利用各社にご連絡ください。州境通過等に必要な情報ですので、可能な限り速やかにご連絡ください。なお、以下(i)~(viii)の登録情報はすべて英語で記入してください。
また、遠方(デリー、ノイダ、グルガオン、マネサール以外)からデリー国際空港に向かわれ、前日までに移動を開始される方は、(viii)に出発日、出発地及び主要な経由地を記載ください。さらに、複数の州境を超えてデリーに向かう必要がある方は、個別に大使館までご連絡ください(遠隔地の場合は、同じ日に移動可能な方については、なるべく同じ車両での御移動をお勧めいたします。)。
<必要事項>
(i)搭乗日
(ii) 搭乗される方のお名前(パスポート記載のアルファベット)
(iii)搭乗される方のパスポート番号
(iv)空港まで利用される車両のナンバー
(v)車種
(vi)運転手名
(vii)運転手の携帯番号
(viii)出発地(例:Gurugram、 Haryana(通り名、番地、マンション名の記載は不要))(※遠方からの移動のため前日までに移動を開始される方は、出発日、出発地及び主要な経由地)
<連絡先>
(日本航空)thank_you_for_flying_rr@jal.com(※登録専用)
(全日空)delrsvn@ana.co.jp

(日本航空お問い合わせ先)
デリー発羽田行き臨時便(19:30デリー発,06:55羽田着)
電話:
(日本語)1800-103-6455、+81-6-7633-4129(国際電話有料)営業時間5:30~15:30〔年中無休〕
(英語)1800-102-4135 営業時間5:30~15:30〔年中無休〕
*デリー準州政府からの指示により上記の通りオフィスアワーが変更されているとのことです。

(全日空お問い合せ先)
全日空では、デリー発羽田行きの臨時便(18:10デリー発・05:35羽田着)の予約について、ロックダウン中につき、下記のEメールアドレスで受け付けているとのことです。
ANA デリー支店予約チーム:delrsvn@ana.co.jp
※営業時間は9:00-18:00
※ANAのコールセンターでは臨時便の新規予約を現在受け付けていないとのことです。
※予約以外についてのお問い合わせ先
電話:(インド国内)000800-100-9274 ※24時間対応 ※通話無料
   (インド国外)+81-3-4332-6868 ※24時間対応 ※有料
ウェブ:お問い合わせ窓口[インドにお住まいの方]URL
https://www.ana.co.jp/ja/in/site-help/contact/

 なお、本臨時運航便は、新型コロナウイルス感染症に関する状況を踏まえ、ご帰国を希望される在留日本人のために、インド政府当局の特別な許可に基づき運航されるものであり、通常の商用運航とは性格が異なるものです。この点につき、ご理解頂けますようお願い致します。
 また、運航当日になってからの直前のキャンセルが発生しております。臨時運航便という性格に鑑み、一人でも多くの方に利用頂けるよう、御理解・御協力をお願い致します。

5 インド政府は、2月1日から4月30日の間に失効するインド滞在中の外国人の査証の4月30日までの延長手続きを無料化する旨発表しました(注:従来は4月15日までが対象期間とされていたもの)。延長を希望する場合は、管轄する外国人登録事務所(FRRO/FRO)にオンラインで申請する必要があるとのことです。日本への帰国を予定されている方のうち、ビザが失効している、または出国までにビザが失効する方は、必ず出国までに延長手続きを完了し、滞在許可を取得してから帰国してください。FRRO/FROの申請先URLは下記になります。
https://indianfrro.gov.in/eservices/home.jsp

6 在留邦人、インドご滞在中の皆様におかれては、以下の点にご注意の上、最新情報の入手に努め、困ったことがあれば本メール末尾の大使館問い合わせ先にご連絡ください。
(1)中央政府及び地方政府が感染予防のための措置を強化する方向にあり、制度が突然変更される可能性もありますので、十分注意して行動してください。
(2)観光等で一時的に滞在中の方や、日本に早期帰国の必要がある方等は、早めの出国をご検討ください。
(3)在インド日本国大使館では在留邦人の皆様からの保健相談を受け付けるための窓口を設置しています。
jpemb-hokensoudan@nd.mofa.go.jp
ご利用に際しての詳細は、以前の領事メールをご覧ください。
(4)インド政府は、3月25日から21日間、全国におけるロックダウン措置を実施しています。警察による取締りが強化されていますので、十分ご注意ください。なお、この措置を受け、領事業務を含め大使館の業務が今後限定的になる可能性があります。
(5)ご自身や周囲の人の感染予防のため以下の点にご注意下さい。
・アルコール系手指消毒薬または石鹸と流水による手洗いを頻繁に行う。目、鼻、口などに触れる前に手洗いをする。
・マスク等の確保に努め、咳やくしゃみがあるときはマスクを着用して鼻と口を覆う。マスクがない場合は、咳やくしゃみのときに口と鼻をティッシュなどで覆い、手洗いを行う。

(各種情報が入手できるサイト)
インド政府広報局ホームページ
https://pib.gov.in/indexd.aspx
インド保健・家庭福祉省公式ツイッター
https://twitter.com/MoHFW_INDIA
インド入国管理局ホームページ
https://boi.gov.in/
在日インド大使館ホームページ
https://www.indembassy-tokyo.gov.in/jp/index_jp.html
外務省海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/
厚生労働省ホームページ:新型コロナウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
首相官邸ホームページ:新型コロナウイルス感染症に備えて
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html

このメールは,在留届にて届けられたメールアドレス及び旅レジに登録されたメールアドレスに自動的に配信されております。

【問い合わせ先】
在ムンバイ日本国総領事館・領事班
電話(91-22)2351-7101
メール ryoji@by.mofa.go.jp

=== 転載終わり ===

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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