世界的な大流行の兆しを前に、インドでの状況はどちらかと言うと不透明

 

Posted on 02 Mar 2020 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

インドの一般国民はまだ対岸の火事のように見ているところがあります。写真は近所の「メイソウ(Miniso)」で見かけたマスクとアイマスクです。



日本では新型コロナウイルス集団感染に対する懸念から、国内では集会等の相次ぐ中止、学校閉鎖や在宅ワーク推進などの措置だけでなく、トイレットペーパーなどの日用品買い占めといったパニックに近い事態を招いているようで、社会情勢まで不安定になりつつあり、株価や経済にも影響が及び始めている。

在インド日本大使館や総領事館からも、連日インドにおける新型コロナウイルスの注意喚起情報が発信されている。
予定していた一時帰国を中止することを決めた日本人も多いようだ。

一方のインドでは、2月初旬に母を送って行ったムンバイー空港では施設内職員がほぼ全員マスクを着用していたという報告があった以外、市街でマスクをかけている人を見かけることはほぼない。
感染者数ほどほとんど発表されていないので、あたかも影響が薄いかのように感じてしまうが、本当にそうなのだろうかという疑念は付きまとう。

実際、晩のニュースでも必ず新型コロナウイルスの最新状況が報じられるなど、人々の関心は高く、また会う人ごとに新型コロナウイルスの話題となるが、わたしの周囲などは「本当は感染者数がたくさんいるのに、専門家や設備、機器などの不足で、把握できていないだけじゃないのかな」と口をそろえる。
だから、乗ったウーバーの運転手さんが咳込んでいたりすると、ちょっとドキドキしたり。

以下の記事では、インドは特に都市部の人口過密や、農村部における医療サービスの圧倒的不足といった独特の問題により、こうした新型ウイルスの感染が拡大した場合の脆弱性を抱えていると指摘している。
こうした背景もあり、政府は早くから感染が広がっている日本を含む国や地域からの渡航者全員を対象とした検査をしたり、電子ビザやアライバルビザの発給を一時的に停止したり、無効にしたりといった、神経質にも見えるぐらいの措置を講じているのだろう。

Coronavirus spread puts densely populated India on high alert

2月28日現在、コロナウイルス感染陽性と判定された人数はケーララ州の3人に止まっているが、インド政府が「経過観察中」としている対象者は2万3,531人存在する。

1キロ四方あたりの人口密度が420人と、中国の148人を優に超えるインドでは、ムンバイーのダーラーヴィー(Dharavi)をはじめ大規模スラム街が各都市に散在、しかも一般のインド家庭はジョイントファミリーと呼ばれ数世代が1つ屋根の下で暮らしていることなどから、ひとたび感染者が発生すると瞬く間に大規模感染に発展する危険がある。

また別の記事によると、インドは人口1万人あたりの病床数が8.5床に過ぎず、中国人旅行者が比較的少なく、現時点での感染者数がほとんど目立たなくても、リスクレベルを「高」と見る報告書もある。

India's weakened healthcare heightens risk of COVID-19 spread

感染しても無症状や症状が軽い人も多いというので、過度に恐れず、衛生管理や免疫力強化に地道に努めたい。
ただし、わたしが現在、週1~2回ほど通わせていただいている会社が、人工知能(AI)による安価な画像診断ソリューションの開発に取り組んでいるように、インドにはまだたくさんの結核患者がいる。

Healthcare startup DeepTek records over $1M in revenue within a year of starting up

肺炎を引き起こすとされる新型コロナウイルスが、結核患者にどのように影響するかはわからないが、人類の英知を結集して、できるだけ早期にワクチンの開発とその普及がなされることを願う。

本日最も読まれている記事
購入後半年で故障したフォッシルのスマートウォッチを巡る、意外な顛末 16 Sep 2019
インドの都市では「静寂」も贅沢 25 Feb 2020
インド人の平均寿命と、女性の伸び率鈍化 01 Oct 2019

短い人生の何気ない日常を慈しむことこそが、幸福への近道 26 Feb 2020
効果てきめん、ターメリックとヨーグルトを混ぜる美顔法:くれぐれも入れすぎには注意! 25 Jul 2017

 






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



Share it with


User Comments