デリーの人口の1%、13万人を取材するミッションを、たったひとりで立ち上げた人

 

Posted on 21 Sep 2019 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

本日は仏陀生誕の地、カピラヴァストゥ出身の男性が、人が生きることの本質を問いかけています。写真は2015年はちょうどモンスーン時期の、デリー上空の画像です。



ツイッターを見ていたら、芝生に横たわる、端正な顔立ちの男性の写真と目が合った。
リンク先の記事と写真を読んで、心が動いた。
以下に内容を要約したい。

MISSION DELHI – DHARMARAJ, KAMALA NEHRU PARK, GURGAON

[原文のテキストと写真はマヤンク・オーステン・スーフィ(Mayank Austen Soofi)氏]

ゴム草履に頭を乗せ、裸足で芝生に横になっている、印象的な写真の男性は、日雇い稼業で暮らすダルマラージ(Dharmaraj)さん。
撮影場所は、デリー郊外グルガオンのカマラ・ネール・パーク(Kamala Nehru Park)。

「(ゴム草履を)枕にしているわけではない。誰かに盗む隙を与えないためだ。」半分目を閉じたまま説明する。
見渡すと周囲に横たわる人々も、同じように履き物に頭を乗せて寝転んでいる。

デリーはモンスーンといえども蒸し暑い。
この日は特に風のない不快な日だったが、ダルマラージさんは束の間の午睡を喫しようとしていた。
疲れているからではなく、「(デリーで日雇い仕事を求める人々が集まる)レイバー・チョウク(Labour Chowk)に行っても、最近はなかなか仕事が見つからないからだ。」

既に中年に差し掛かったダルマラージさんは、仏陀生誕の地として知られる、ネパールのカピラヴァストゥ(Kapilavastu)出身だ。

安価なゴム草履だが、ダルマラージさんは年に2足しか買わないという。
「1足買えば、半年ぐらいはもつ。完全に擦り切れて履けなくなるまで使ってから、新しいのを買う。」
今履いているゴム草履も、デリー郊外ローシャンプラ(Roshanpura)の「(リヤカーなどを店舗代わりに行商する)よろず屋(原文では reri walla、「रेहड़ी」か)」から50ルピーで買った。
「靴は持ってない。」

仕事は主に、建設現場でブロックやセメント袋を運搬する業務を請け負っている。
「仕事の時も、同じゴム草履で出掛ける」

「グルガオンに家はない。持ち物は今着ている服と、このゴム草履だけだ。」
頭に敷いたゴム草履の位置をちょっと調整しながら、一片の苦情も後悔も混じらない声で、ダルマラージさんはつぶやく。
そしてまた、目を閉じた。

この男性のありのままの姿を写真に収め、物語を綴ったのは、デリーで暮らす1,300万人の、せめて1パーセントにあたる13万人にインタビューすることを目標に、たった1人でブログを更新し続けるマヤンク・オーステン・スーフィ氏(@thedelhiwalla)だ。

MISSION DELHI – ONE PERCENT IN 13 MILLION

「街は建物やバザールから成るものならず。人から成るものなり」で始まるブログの紹介文では、デリーで生きる人々の暮らしを垣間見ることのできるような写真とプロフィールを13万人分、綴っていくことを目指すとしている。

「最終的な目標である13万人に達したとして、そのころまでには私が取材し、写真に収めた人々の生活は変化しているはずだ。人は廃墟とは違う。時の流れに応じて進化していく存在だ。ある人の人生の瞬間を切り取り、描いたからといって、その人をミイラ化しようというのではない。その人の暮らす町、デリーの空気を摑もうとしているだけだ。

だから、高級住宅街に住む人も貧民街に住む人も、ビハール出身者もケーララ出身者も、お偉いさんも風俗産業従事者も、お金持ちの娘も幸せな主婦も、バイセクシャルもアセクシャルも、デリーに暮らす、ちょうどあなたのような平凡な人に会いに行く。13万人という途方もない数字も、そのわずか1%に過ぎないのだが。ミッションを成立できるかどうかは、神のご意思のままに(Inshallah)」

仕事が一段落した本日の午後、また新しい服をファブ・インディア(Fab India)でポチってしまった直後に、カピラヴァストゥ出身男性の記事を読み、何とも言えない複雑な感情に包まれた。
マヤンクさんの仕事ぶりを、これからも追っていきたい。

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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