データ・サイエンスの入門知識と今後の方向性を探るイベント、プネーで開催

 

Posted on 03 Feb 2019 21:00 in インド科学技術 by Yoko Deshmukh

IT企業での日常業務から離れ、フリーランスになって早7年が経ち、テクノロジーの最先端で今何が起こっているのか、積極的に勉強したいと改めて思っています。



土曜日、プネーの私立工科大学、「SICSR - Symbiosis Institute of Computer Studies and Research, Atur Center」の7階会場で、データ・サイエンティストの卵向けの入門イベント、「DataScienceVillage-Opportunities-in-the-era-of-ML-and-AI- Meet-Up」が開催された。
AI技術者を目指す、若く大志を抱く学生たちのほか、実務に携わる技術者も含めた、およそ300名が会場を埋めていた、その端っこに混ぜてもらい、わたしも聴講した。

イベントの主旨は、AI(人工知能)やML(機械学習)などに代表されるデータ・サイエンスを専門とする人材は慢性的に不足している(一説には需要は年間400%伸びているのに、人材の確保は19%しか進んでいない)が、この業界への就職やキャリア形成を目指す人たちは、、「データ・サイエンスのスペシャリストになるためには、どう努力し、スキルを形成していけばよいのか」が分からない。
そうした疑問に応え、自らのキャリアの方向性を探る機会を提供しようというものだ。

プネーを拠点にデータ・サイエンス系のサービスを提供する各社(NutaNXT、Eternus Solutions、Early Salary、Rapid Circle、IBM Watson)が、「Data Science Village」と銘打ち大学と共催している。

このため、各社を代表する人々が登壇し、データ・サイエンスの歴史や現在、今後について丁寧に紐解き、わたしのような知識皆無な者でも分かりやすい内容の講義だった。

たとえば、「機会」のセッションでは、「Business Intelligence(BI)」と「Data Science」の違い、「Data Science」を構成する3大要素、「Intelligent Machines、Advanced Algorithms、Human Analytical Capability」、「Big Data」を活用するための4大要素、「Convene、Facilitate、Hypothesize、Commnicate」(ユーザーに説得できる意思疎通力がカギ)などの話があった。

続いてEternus Solutionsのジテンドラ・タンナ(Jitendra Tanna)社長は、「太陽光のエネルギーは膨大で、常に地球に降り注いでいるのに、なぜ節電しなければならないのか」、「なぜ人間の頭脳があるのに人工知能が必要なのか」という問いかけから始まる、ビジネスの立場からの非常に活力みなぎる講義を展開した。

インド人と言えば「2桁の掛け算を暗算する教育」を受けていることが一般論になっているだろう。
しかし近年は計算機が瞬時に取って代わるような暗算に貴重な頭脳リソースを費やすよりも、大切なこと、よりよいものに頭脳を使うべき時代が到来したと語り掛けた。

社長はインドにおけるテクノロジー企業の大半は、とかくブームに乗ることに懸命で「AI」をはき違えたまま運用しているところがあると指摘、「AIとは何かの技術を指すのではなく、概念である」とした上で、自社NGOの活動の一環である、AIを活用しての農村の生活向上など、金を稼ぐだけが目的でない、よりよい人類の生活のために考えていくべきだとまとめた。

IBM Watsonで機械学習部門を率いるヴィヴェーク・パンディット(Vivek Pandit)氏は、AIの歴史と現況について実務に携わる立場ならではの細部にわたって淡々と説明していた。
ヴィヴェーク氏とはイベント後に少しお話をさせていただくことができたが、今後「Data Science Village」が当分の間、2週間おきに開催する一連のイベントに引き続き登壇されるということだ。



会場はほぼ満席で、熱気にあふれていた。
 

イベント主催者チームのひとりで、友人でもあるオランダ人のターボル・ワルビーク(Thabor Walbeek)さんは、独学でデータ・サイエンティストとなったご自身の立場から、AIやMLについて何を学ぶべきか、どう学ぶべきかについて、具体的に解説した。
ターボルさんはかつて、データ・サイエンスではないが別の技術系課程で同大学の教壇に立っていたこともあるという。
 


ターボル氏は、等身大のデータ・サイエンティストとしての立場から、
知識習得のコツを伝授した。


その中でターボルさんは、漫然と技術を身に着けるよりも、業界知識や専門知識が一番重要であるとし、そしてなぜ、その分野にAIが必要とされているのか、どう作用しているのかを知ることの大切さを説いた。

ターボルさんはテクノロジー系の仕事を続けながら、通勤前の早朝を利用してマイクロソフト(Microsoft Professional Program)がオンライン上で主催する「Online Data Science Courses」などのオンラインコースや書籍、ブログ、ウェブ記事などでの知識蓄積を始め、この数年ひたすら勉強し、データ・サイエンスで修士号を習得するまでになった。

最後に、質疑応答の時間が設けられたが、かなり活発な質問が挙がり、非常に熱気がこもっていたのが印象的だった。

一例として、ロボットが感情を獲得することはあるのか、無数にある選択肢から、どんな学習を始めればよいのか(ターボルさん: 機械学習から取り掛かることをお勧め。自身は2年かけて学んでいるが、まだまだ満足できていない)、自然言語処理でサンスクリット語の可能性はあるのか(ヴィヴェークさん: 英語 [アメリカやイギリス] に関してはかなりハイレベルな処理ができるようになっている)、などの数多くの質問とそれに対する議論が巻き起こっていた。

なお、個人的なメモとして、大学の理事メンバーの女性が着用していた格子パネル柄の綿サリーがとてもシックで美しく、イベント終了後突撃で「どこで購入されたのか」インタビューした(ラクシュミー・ロード [Laxmi Road] の有名店VAMA、ではなかった)。

2012年までプネーのソフトウェア会社に在籍させてもらっていたころは、日々の翻訳や通訳といった業務を通じて最新テクノロジー事情を見聞する機会があったが、フリーランスとなって早7年の今、インドに住んでいる者として、注目のAIやMLが現在どのようになっているのか、今後どのようになっていくのか注目し、積極的に知識を吸収していきたい気持ちがある。

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Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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