インドのパンデミック対策と、その課題

 

Posted on 05 Feb 2021 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

疫病対策に慣れているインドも右往左往しています。



昨年1月30日、国内初の症例として武漢から帰国したケーララ州の学生が新型コロナウイルスに感染していることが確認されてからちょうど1年となる節目に、プラサーダ・ラオ(J.V.R. Prasada Rao)前保健相(Health Secretary)とコルカタのH.P. Ghosh Research Centreで研究助手を務めるアマルティヤ・チョウドリー(Amartya Chowdhury)氏が共同執筆する論説が、新型コロナウイルス感染症パンデミックに対する、これまでのインドの対応を分析、パンデミック対策とその課題についてまとめており大変興味深かったので抄訳する。

A year on, mind the gaps in the pandemic response

疾病管理戦略の再考と、今後同様の危機が発生した際に、より安定した人道的な対応ができるように備えなければならない。

2月4日時点で、国内の感染者数は延べ1,079万183件で米国に次いで世界ワースト2位、死者は15万4,703人に達し世界ワースト4位となっている。

公式統計によると、インドは多くの高所得国よりも感染率と死亡率は低水準にとどまっており、2月3日時点のインドにおける新型コロナウイルス感染症の死亡率は1.4%と、英国の2.8%や南アフリカの3.1%と比較して低く、また100万人あたりの死亡者数は112人と、米国の1,362人、イタリアの1,486人、ベルギーの1,831人と比較しても圧倒的に低い。

(南アジア諸国との比較は割愛)

インドは、国内に陽性者数がごく少ない段階からいち早く厳格な全土封鎖(ロックダウン)を実施した数少ない国の1つだが、(中略)明確な戦略や目的、科学的根拠を明らかにしないまま、あまりにも性急にロックダウンを導入したため、結局その効果は十分に得られたとは言い切れず、ロックダウン解除直後の2020年6月9日時点で200人だった100万人あたりの感染者数は、2021年1月1日時点では7,454人に広がっている。

しかもその無計画なロックダウンに伴う外出禁止の徹底と社会的距離の維持のため、警察官をはじめとする公安要員に過度の負荷がかかることになった。
 
突如、仕事を失った都市部への出稼ぎ労働者とその家族たちが、地方の出身町村への何百キロもの道のりを炎天下の中、歩いて帰ることを余儀なくされ、交通事故や食料、飲料水の不足、過度の疲労により多くの人々が命を落とすという、凄惨な悲劇を生んだ。
その窮状は、インドの貧困層に対する社会的セーフティーネットは、パンデミックにかかわりなく欠如しているという現実を改めて浮き彫りにした。

こうした未曽有の事態の中、インドが学ぶべき教訓としては、まず州ごとの主導権がなければ、公衆衛生への対応は成功しないという点だ。
中央政府からのトップダウンも州政府との協議連携も欠如していたことで、各州での新型コロナウイルス感染症対策へのイニシアチブやイノベーションが不在となり、対応への迷いが発生した。

エピデミック対応において重要な役割を果たすとされる、戦略的情報の生成と活用という点でも、ソフトウェア超大国として世界的にその名を馳せるインドらしからぬ惨状だった。
迅速な計画の下で統合されたデジタル健康情報システムを作成し、新型コロナウイルス感染症対策への効率と透明性を改善することができたはずだ。 
 
インド全土をカバーする疾病監視フレームワークである統合疾病監視プログラム(Integrated Disease Surveillance Programme、IDSP)は不透明だった。
インド医学研究評議会(Indian Council of Medical Research、ICMR)が大都市圏で実施した選択的血清サーベイランス研究(selective sero-surveillance studies)も、対象範囲と周期性が限られ、集団免疫の指標となるウイルス感染者の人口に占める割合も、依然として推測の域を出ていない。

世界エイズ・結核・マラリア対策基金(Global Fund for AIDS, Tuberculosis and Malaria、GFATMまたはグローバルファンド)などの自発的活動により、影響を受けた家族に社会的支援を提供するための資金提供団体へのロビー活動は、意味のある役割を果たしていた。

暗いトンネルの中の一筋の光明としては、インドが世界で依然として数少ないワクチン生産国であるという点が挙げられる。
今年1月中旬から、医療従事者や最前線の対応要員、50歳以上の人、および基礎疾患や健康状態に懸念のある人が、優先的なワクチン接種の対象となっている。
ただしここでも、ワクチン接種の最終的な戦略は不明なままであり、その効果が長期的に持続するのか否かという点で疑問を呈している。

結局、新型コロナウイルス感染症は他の多くの国々と同様、インドにも大きな格差を生み出している。

経済が復活し、今日飢餓の危機に瀕している人、そして基本的な医療さえ手が届かなくなっている人をはじめとする、数億人の人々の生活が回復するのはいつになるのか。
パンデミックは、これまであった社会的不平等をますます悪化させ、それまで貧しかった人々はさらに厳しい時代に直面しそうである。

こうした大きなギャップに対して、緊急に調査し、対策しなければならない。
オープンな調査と広範囲にわたる議論がなければ、インドはコロナ禍という高すぎる代償からをも、正しい教訓を学ぶための機会を逃すことになってしまう。

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なお、現状に何ら役立つ情報をご提供できていない「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」なので、せめて「在ムンバイ日本国総領事館」より日々発信されている州内の状況や州政府による措置に関する最新情報を、今後はこちらにも転載させていただきたい。

=== 以下、同掲題メールの転載 ===
※1月28日付けのメール、件名「
全日空(ANA)による成田ムンバイ間の臨時便運航

【ポイント】
●全日空(ANA)では、インド航空当局の許可を取得することを前提に、インド政府が設定したエア・バブルに基づく便として、2月27日、3月13日、3月27日に成田発ムンバイ行、2月28日、3月14日、3月28日にムンバイ発成田行の臨時便を運航することとなりました。
●ANAによれば、同便の予約受付・販売は既に開始しているとのことです。
●こちらの便は航空会社のウェブサイトでの予約受付・航空券購入が可能です。
●なお、日本外務省はインドについて「レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)」の感染症危険情報を発出しています。インドへの渡航を検討される場合は、インドにおける感染状況を踏まえ、渡航の必要性や時期について慎重に御検討ください。また、インド政府の外国人の入国に関するガイドラインに御留意願います。

在留邦人の皆様へ

 全日空(ANA)による成田ムンバイ間の臨時便(2月,3月便)が運航されることになりましたところ,お知らせします。なお、本件照会については、ANAお問い合わせ先までご連絡願います。

1 全日空(ANA)では、インド航空当局の許可を取得することを前提に、インド政府が設定したエア・バブル(新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策としてインド政府が実施している国際定期旅客航空便の飛来禁止措置の例外措置)に基づく便として、2月27日、3月13日、3月27に成田発ムンバイ行、2月28日、3月14日、3月28日にムンバイ発成田行の臨時便を運航することとなりました。

2 ANAによれば、同便の予約受付・販売は既に開始しているとのことです。なお、空席状況確認や航空券の予約・購入方法等はANAウェブサイトをご確認ください。詳しくは、ANAにお問い合わせください。
(ANAウェブサイト)
https://www.ana.co.jp/ja/jp/international/

(ANAお問い合わせ先)
ANAムンバイ支店予約担当:bomrsvn@ana.co.jp(営業時間<インド時間>:9:00-18:00)
※英語/日本語での受付となります。
※上記の臨時運航便以外についてのお問い合わせ先は以下の通りです。
電話:     (インド国内)000800-100-9274 ※24時間対応 ※通話無料
        (インド国外)+81-3-4332-6868 ※24時間対応 ※有料

3 新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、インド政府よりインド到着旅客に関する情報の提出が義務付けられています。ANAによれば、インドへの航空券を予約・購入された方は、出発の48時間前までに、必ずANAムンバイ支店予約担当に渡航に際し必要な情報の連絡が必要となるため、以下のANAからのお知らせを必ずご確認ください、とのことです。
(ANAからのお知らせ:各地域への入国条件変更/インドへ渡航のお客様へ)
https://www.ana.co.jp/ja/jp/topics/notice200501/#immigration

4 日本外務省はインドについて「レベル3:渡航は止めてください(渡航中止勧告)」の感染症危険情報を発出しています。インドへの渡航を検討されている邦人の皆様におかれては、インドにおける感染状況を踏まえ、渡航の必要性や時期について慎重に御検討ください。
(新型コロナウイルス感染症に関する皆様へのお願い:当館ホームページ)
https://www.in.emb-japan.go.jp/PDF/20200929_Coronavirus_j.pdf
また、以下のインド内務省入国管理局ホームページに、現在入国できる査証カテゴリーや査証取得手続き、事前の自己申告フォーム等の提出、入国後の自主隔離等、外国人の入国に関するインド政府のガイドラインが掲載されていますので御留意願います。
(インド内務省入国管理局ホームページ該当部分)
https://boi.gov.in/content/advisory-travel-and-visa-restrictions-related-covid-19-1

(各種情報が入手できるサイト)
インド政府広報局ホームページ
https://pib.gov.in/indexd.aspx
インド保健・家庭福祉省公式ツイッター
https://twitter.com/MoHFW_INDIA
インド入国管理局ホームページ
https://boi.gov.in/
在日インド大使館ホームページ
https://www.indembassy-tokyo.gov.in/jp/index_jp.html
外務省海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/
厚生労働省ホームページ:新型コロナウイルス感染症について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
首相官邸ホームページ:新型コロナウイルス感染症に備えて
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html
=== 転載終わり ==


☆本日の1曲☆

 






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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