TikTokは使えなくなったけど... 再起を誓う村人たち
Posted on 02 Jul 2020 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
何気なく飛ばし読みしていたら、重要なことが書かれていました。パルディーと呼ばれる人々のことを、今まで知らずにいました。
インド国内での使用が禁止された59個の中国製アプリのうち、最も普及していたのは動画アプリの「TikTok」で、禁止時点で1億2,000万人の国内ユーザーを集めていた。
ASKSiddhi関連ニュース
インドのTikTokユーザーの大部分は地方都市在住者、また過半数が月収350ドル未満:KalaGato
上の記事にもあるように、中でも地方都市や農村のユーザーが急拡大していたが、その用途は当然ながら単なる視聴にとどまらず、自分の動画を撮影して発信すること、それも家族や友人知人との共有ではなく、あわよくば「TikTokスター」になって広告収入を得ることを目標とする人々も多くいたようだ。
次の記事は、マハーラーシュトラ州デュレ(Dhule)県にある寒村ジャムデ(Jamde)から、1990年代のボリウッド歌謡曲に合わせて踊るダンス動画を精力的に発信し、300万人以上のフォロワーを集めるTikTokスターになった夫妻(なんとヒンドゥー教徒なのに一夫二妻のようだ)が、今回のモーディー政権によるTikTok禁止措置により大きなダメージを被り、挽回するため今後はYouTubeにデビューする予定である、などとまとめた記事だ。
‘We’re devastated, my wives cried’ — TikTok stars in Maharashtra village crushed by app ban
村では夫妻に刺激された他の夫婦11組も、TikTokでダンス動画の配信をしていたという。
実はこの話には暗黒の裏話があった。
ボリウッドダンス発祥の地である輝けるボリウッドの都、ムンバイーから350キロに位置するジャムデ村に住む人々の大半は、英領時代の1871年に「犯罪者民族(Criminal Tribes)」などと指定され、当時の刑法(Criminal Tribes Act)により罪人と決めつけられたパルディー(Pardhi、猟師という意味)と呼ばれる部族に属する。
パルディーたちは一般市民からも激しい排斥(extreme ostracism)を受け、焼き討ちに遭うなどして家を失い、迫害や差別の憂き目に遭ってきた。
Decades After Denotification, Pardhi Tribe Struggles to Shrug Off 'Criminal' Tag
このためジャムデ村は「きわめて発展の遅れた地域」とされ、小学校が1校あるだけで高等教育を受けられる機会もなく、文字を読めない人も多い。
そうした過酷な環境の中、農業や肉体労働の合間に夫妻が始めたTikTok配信は思いがけないヒットを飛ばし、これまでアップロードした700件の動画で、3万5,000ルピーほどの収入を得ることができた。
この現象は、同じような境遇に耐え忍んできた村の若い衆にも希望を与え、ある人は2か月半ほどで10万ルピーほどの収入を得たと主張している。
TikTokが、これまで理不尽な差別により社会的に無視されてきた人々に、インドを飛び越え世界中に自らの存在を発信する、貴重な表現手段となっていたのだ。
しかし村人たちは、TikTokが使えなくなったことぐらいで絶望したりしない。
今はYouTubeでの配信に意気込んでいるようだ。
なお、現状に何ら役立つ情報をご提供できていない「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」なので、せめて「在ムンバイ日本国総領事館」より日々発信されている州内の状況や州政府による措置に関する最新情報を、今後はこちらにも転載させていただきたい。
=== 以下、同掲題メールの転載 ===
※6月19日付けのメール、件名「中国とのLAC付近における中印両国軍の衝突に関する注意喚起」
●ラダック連邦直轄領の中国との実効支配線(LAC)付近において,インド及び中国の両国軍による衝突があり,これまでに複数の死傷者が出ています。同地域への渡航は止めてください。
●ニューデリー市内においては,中国大使館前での抗議活動が行われているほか,ディフェンスコロニー地区での中国製品不買運動が起こっている等の情報があります。
●また,マハーラーシュトラ州ムンバイ市の中国総領事館周辺での抗議活動は,現在確認されておりませんが,報道によれば,ムンバイ市やグジャラート州アーメダバード,バドーダラ,スーラト,ラージコートでは,一部の者が路上で中国製の携帯電話やテレビ等電化製品やおもちゃなどを壊す・燃やす,窓から投げ捨てる等の行為に及んだほか,習国家主席の写真を燃やしたとも報じられています。抗議デモの現場やシュプレヒコールをあげる集団には決して近づかないでください。
在留邦人及び短期渡航者の皆様へ
1 ラダック連邦直轄領の中国との実効支配線(LAC)付近において,インド及び中国の両国軍による衝突があり,これまでに複数の死傷者が出ています。
報道によれば,両軍は5月上旬から両国の実効支配線のあるパンゴン湖周辺など数か所でにらみ合い,小競り合いも発生してきています。さらに,今月15日夜から16日未明にはバルワン渓谷で衝突が起き,インド政府によるとインド軍兵士20名が死亡したとのことです。中国側は未発表ですが,43人が死傷したとの報道があります。
このような状況を踏まえ,くれぐれも同地域への渡航は止めてください。
2 ニューデリー市内においては,在インド中国大使館前での抗議活動が行われているほか,ディフェンスコロニー地区での中国製品不買運動が起こっている等の情報があります。今後,市内の他の地域や他の都市においても同様の活動が起こる可能性があります。
3 また,マハーラーシュトラ州ムンバイ市の中国総領事館周辺での抗議活動は,現在確認されておりませんが,報道によれば,ムンバイ市やグジャラート州アーメダバード,バドーダラ,スーラト,ラージコートでは,一部の者が路上で中国製の携帯電話やテレビ等電化製品やおもちゃなどを壊す・燃やす,窓から投げ捨てる等の行為に及んだほか,習国家主席の写真を燃やしたとも報じられています。
中国に対する抗議行動等が今後起こる可能性がありますので,注意してください。
4 在留邦人の皆様及びインド滞在中の皆様におかれましては,今回の衝突に対するデモ活動などの現場付近にいた場合,中国人であると誤解され,不測の事態に巻き込まれる可能性があります。つきましては,最新情報の入手に努め,不測の事態に巻き込まれないよう細心の注意を払うとともに,抗議デモの現場やシュプレヒコールをあげる集団には決して近づかないでください。
このメールは,在留届にて届けられたメールアドレス及び旅レジに登録されたメールアドレスに自動的に配信されております。
【問い合わせ先】
在ムンバイ日本国総領事館・領事班
電話(91-22)2351-7101
メール ryoji@by.mofa.go.jp
=== 転載終わり ===
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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