プネーが懐かしくなったあなたへ:新作マラーティー映画「グラブジャーム(Gulabjaam)」

 

Posted on 19 Feb 2018 23:00 in エンターテインメント by Yoko Deshmukh

上映前に腹ごしらえをしていたにも関わらず、鑑賞後は案の定お腹が空いてしまいました。



先週末はバーフバリ2部作(Baahubali - The Beginning [伝説誕生]/The Conclusion [王の凱旋])を堪能し、さまざまなご縁に恵まれて先週いっぱい「バーフバリ祭り」に興じたわたくしは、テルグ映画に凄まじい勢いに圧倒され、そのままの流れでインドの映画というものが持つ可能性に、改めて興味関心を喚起された。

これまで、その上映時間の長さから、ボリウッド作品を含めてインド映画をあまり観てこなかったのだが、インドに住んでいるのにそれはあまりにもったいないのではないかとようやく気付いた。
とはいえ、ファンが多く、専門家もたくさんいるボリウッド映画は、どうしても評判をチェックしてから観るかどうか決めてしまうので、ここはひとつ、わが街プネーをはじめとするマハーラーシュトラ州発のマラーティー映画を中心に観てみようかと思い立った。

ヴェネツィア国際映画祭やアカデミー賞(外国映画部門賞インド代表)を授賞した「裁き」をはじめ、近年のマラーティー映画からは優れた作品が多く誕生している。
またボリウッド映画やテルグ映画、タミル映画と異なり、マラーティー映画は社会問題などを描いた作品が多く、歌や踊りなどがあまり出てこないので、日本人には比較的なじみやすいのではないか。

そこでさっそく週末、上映されているマラーティー映画をチェックしてみたところ、今月16日に封切りされたばかりの「グラブジャーム(Gulabjaam)」という、おいしそうなタイトルの作品が目に留まった。
監督はサチン・クンダルカル(Sachin Kundalkar)。



 

ストーリーは、親同士が決めたムンバイーに住む許嫁との結婚を控え、ロンドンの銀行で単身働く27歳のマハーラーシュトリアン男性、アディティヤ(シッダールタ・チャンデカル [Siddharth Chandekar])が、料理家になりたいという幼少期からの夢を諦めきれずに家族に黙って一時帰国し、プネーで評判の弁当作りを稼業とする気難しい女性ラーダ(ショナリ・クルカルニ [Sonali Kulkarni])に伝統的なマハーラーシュトラ料理を学ぼうと「弟子入り」、当地ならではの料理を学んでいく過程で心通わせていくというもの。

物語が進んでいくにつれ、アディティヤが作れる料理の品数は増え、同時にラーダとも心を通わせていくのだが、意外な事実が明らかになったり、またドキドキするような展開もあり、垂涎のマハーラーシュトラ家庭料理の眼福以外にも見どころがいっぱいあった。

個人的には、アディティヤの演技が坊ちゃん風で、もう少し磨き上げて欲しかったかなとは感じたものの、美しいラーダをはじめ、他のキャストがいい味を出しており、ストーリーのよさが不足分を補うのに十分だった。

エンターテインメント系オンラインメディア、「Scroll」に掲載されていた批評「Sachin Kundalkar’s ‘Gulabjaam’ features delicious food, Zoya Akhtar and Marcel Proust」によれば、クンダルカル監督は、わたしとほぼ同世代にあたり40歳。
「40代後半から50代以上の世代のプネー住民は、昔を懐かしみ、失ったものを惜しんでいるかもしれない。しかしそれよりも若い世代は、今の(発展した)プネーの良さを思い切り享受している。私もそのひとりだ。きらびやかなビルやメトロ、スターバックスなどのあるプネーも大好きだ。特に我々の世代は、古いプネーと新しいプネーの両方を知っている。その感覚をこの作品に取り入れたかった」と話している。

確かにラーダの住居はプネーの下町(シャニワール・ペス [Shaniwar Peth])あたりが想定されていたり、序盤に有名なマハーラーシュトリアン・ターリーの店「ドゥルワンカル」がでてきたりと、ロケ地が「あっ、あそこだ」といちいち分かるのが地元民には楽しい。
物語の後半から出てくる、お金持ちの家は、コレガオン・パーク(Koregaon Park)とかカリヤーニー・ナガル(Kalyani Nagar)あたりかな、な~んて予想したり。

なお、作品中に登場する料理の数々は、実際にプネーでデリバリーサービスを営業するジャグタップ・マウシ(Jagtap Maushi、「マウシ」とは「おばさん」の意味)が腕によりをかけた本物だという。

マラーティー語の作品で、大体の会話は理解できたものの、英語の字幕付きは助かった。
泣ける場面もあったし、ラーダの言った「What we've experienced today will be tomorrow's memory.」、「今日の経験は、明日の糧になる」というフレーズに、深い意味が込められていて、とてもよかった。





      



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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