バーフバリ世界の虜になり、ハイダラーバードへ関心を持ったあなたへ

 

Posted on 16 Feb 2018 22:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

いつもとは限らないかもしれませんが、しかし意外と高い割合で、出会いが吉と出るか凶と出るかは、心の持ちようが左右しているように思います。



※ここはタイのバンコク国立博物館
 

今話題の映画バーフバリ。
日本では少しずつ社会現象のようになりつつあるようで、その反響の大きさには正直に言ってとても驚いている。

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単なる流行りもの見たさからのミーハー根性で鑑賞を決め込むつもりであったわたし。
ところが、この数日に渡ってお伝えしているように、バーフバリ愛を表現する日本の漫画ツイートを、何の気なしに共有したことがきっかけで、バーフバリ制作プロデューサーの方とのツイッター上での対話が生まれ、そこで図々しくも、やはり何の気なしにお願いしたノーカット完全版の日本発売を拾っていただくことができ、さらにこの対話をきっかけとしたウェブメディア「Scroll」ジャーナリストとのやり取りから、日本のファンの声をインドに届けるという、とても畏れ多くも楽しいタスクを仰せつかった。

こうした思わぬ偶然がいくつも重なって、この映画のことをいろいろな角度から考える機会を得た時に、バーフバリはもはや、映画の域を出て人々の生活に影響を及ぼし始めていることの大きさに思いを馳せた。

今日は「Scroll」からのメール取材用に、Twitter で集めた日本のバーフバリファンからの意見をまとめる作業を少ししていた。

Twitterハッシュタグ「#インドにバーフバリ叫ぶ」に寄せられた意見をまとめたドキュメント

これを見ていると、バーフバリは日本人にとってのインドのイメージを鮮やかに印象付け、そして強烈に魅了もしていて、これをきっかけに今までまったくインドを知らなかった人までが、インドと言う国そのものに興味関心を持ち始めている。
実際、これからバーフバリの面影を追って、「テルグ語の里」ハイダラーバードや、バーフバリの撮影が実際に行われた映画村、ラモジ・フィルムシティ(Ramoji Film City)などへ観光に来る人も出てくるかもしれない。

わたしはハイダラーバードを訪れたことは数えるほどしかない。
しかし、初めて訪れた時のことは、決して忘れることはできない。

プネーから乗車した列車は、10時間ほどしてハイダラーバードにある2つの大きな駅のうちのひとつ、スィカンダラーバード(Secunderabad)に停車した。
現在はどうなっているか分からないが、当時のスィカンダラーバード駅前は安宿や安食堂が軒を連ねる庶民的な風情で、とても活気があった。
宿をどこに取ったか記憶にないのだが、もしかしたらフセイン・サーガル湖を挟んで反対側の、ハイダラーバード中央駅(現在ナンパリー [Nampally] 駅)の近くだったかもしれない。
とにかく荷物を持ったまま、さっそく名物のビリヤーニーが特においしいと評判の食堂、アルファ(Alpha)に飛び込んだ。

噂に違わぬ山盛りビリヤーニーを思う存分堪能してから、時間がもったいないのでそのまま観光に行こうと、駅前で客待ちしているオートリクシャーに乗ることにした。
すると1人のタキヤー(ムスリム帽)を被った上品な紳士が、「1日案内しましょう」と申し出てくださった。
普段、向こうから話しかけてくる場合はだいたい高額をふっかけてくる人が多いので、少し警戒していたのだが、提示された料金が良心的な内容だったこともあり、この紳士を信頼してみることにした。

この日は確か、ビルラ寺院とフセイン・サーガル湖、チャール・ミーナールなどの観光名所を周って、最後にじっくりと時間をかけてサラール・ジャング博物館を見学する予定だった。
サラール・ジャング博物館では、少なくとも2時間は過ごすだろう。
大きなバッグを持ったまま見て回るのは大変だ。
日本からやってきた一介の観光客であったわたしは、あまり考えもせず、これまで回った名所で待ってもらう間にそうしてきたように、荷物をすべてリクシャーの車内に置いたまま博物館に入った。

展示物をじっくりと鑑賞し、満足した気持ちで博物館の外へ出たら、降車した場所近くで待ち合わせ場所としていたチャーイ露店に、リクシャー紳士の姿がない。
「あれ、2時間後にここで会おうと言っていたのにな」と少しあせった。
当時、インドではまだ携帯電話はそれほど普及しておらず、まして観光客は公衆電話の時代、連絡手段がない。
30分ほど立ち尽くしただろうか、ようやく「もしかしたら、荷物を持ち逃げされたのではないか」といううっすらとした疑惑が頭に浮かんだ。

パスポートと現金は肌身離さなかったのだが、預けていたバッグの中には、今は思い出せないのだが何か大切なものがはいっていたと思う(一眼レフカメラとか、当時持ち運び用の文章入力機として使っていた、懐かしのWindows CE搭載のミニノートPCとか、CDウォークマンとかだったかな)。
絶望的な気分になり、メガネをはずして顔の汗を拭きつつ、気持ちを落ち着けようとしていたところに、裸眼だと強度近眼でろくに見えない目に、遠くで手を振る人の姿のようなものがぼんやり映った。
慌ててメガネを掛け直して目を凝らすと、茶色のサルワール・カミーズ(上下)を着て、タキヤーを上品に被った、あの紳士だ。

オートリクシャーでこちらに乗りつけてきて、笑顔で冗談を言った。
「思ったより長かったね。日本に帰ってしまったかと思ったよ」
疑いを持ってしまった自分を恥じたことは言うまでもない。

わたしにとって、この紳士との出会いこそ、ハイダラーバードというすばらしい街を象徴するものであり続けている。





            



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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