自動音声通話サービス、スラム街の妊婦や母親に大活躍

 

Posted on 12 Jan 2017 23:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

自動音声による着信は、インドではセールスコールの常とう手段となっていてうざいというイメージしかなかったのですが、このような活用法もあったのかと目から鱗です。



恥ずかしながら、今まであまり考えたことがなかったが、とても大事な問題だ。

インド人の平均寿命は66歳前後と比較的短いが、それは乳児死亡率の高さと無縁ではない。

昨日付の「The Better India」で、都市部のスラム街に住む女性たちの妊娠から出産までをサポートする人たちについて紹介していた。

From Pregnancy to Childbirth: How a Free Voice-Call Service Helps Women in India’s Urban Slums

スラム街で赤ちゃんを産み育てようとする女性たちの中には、劣悪な衛生状態などを原因として、妊娠中や出産中に重大な健康不安を抱えていたり、何らかの合併症に苦しんでいる人が少なくない。
また若くして多産であり、しかも病院にかかる資金が十分でなく、限られた自宅のスペースで十分な知識もなく出産せざるを得ないケースもある。
世界保健機関(WHO)によると、インドでは妊婦の5人に1人が、出産中に発生した合併症により命を落とすという痛ましい現実がある。

そうした女性たちに少しでも安全な出産をしてもらおうと、ユニークな無料音声ガイダンスを提供している団体、それがムンバイの非政府組織(NGO)団体ARMMAN(Advancing Reduction in Mortality and Morbidity of Mothers:母親、児童、および新生児の死亡率および罹患率の大幅削減)だ。
ARMMANが立ち上げた「Mitra(『友達』の意)」プログラムでは、出産前および出産後を問わず、妊婦に必要な医療に関する適切なアドバイスをタイムリーに提供している。
その方法というのが、なんとも逆説的でおもしろい。

インドではよく、特に携帯電話事業者などがその契約者に、自動音声によるセールスコールをしてくることがある。
これはほとんどの場合、迷惑でしかなく、着信があって電話が鳴っているので慌てて取ったら自動音声だったりした時の怒りと脱力感はひとしおで、ゆえに「True Caller」などの発信者特定アプリでブロックすることになる(それでもいたちごっこに別の番号からかかってきたりするが)。

「Mitra」はこの自動音声通話サービスを逆手に取って利用、登録した妊婦の週齢などに合わせて発信している。
例えば、妊婦に必要な栄養についてのアドバイスから、胎児の週齢に応じたタイムリーな定期検診や予防接種のすすめ、出産後の新生児のケアといった情報を毎回2分程度、出産まで145回に渡り、妊婦や新米ママが登録した電話番号に発信している。

こうした情報は、地方の方言を含めて女性の母語に合わせた多言語で提供しているが、それはムンバイ最大のダーラヴィ(Dharavi)などのスラム街に住む女性のほとんどが読み書きできず、音声のみが唯一の情報源となっているためだ。
聞き逃してしまった場合もフリーダイアルで電話をかけて内容を知ることができるほか、翌日に同じ内容がもう1度発信される。

このサービスの効果は徐々に上がってきており、妊娠や出産のみならず、避妊の方法に至るまで、スラム街に住む人たちの家族計画に、信頼できる情報源として受け入れられている。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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