9月24日博多で翻訳勉強会②:テリー齊藤さんが教えてくださった「翻訳チェック、そしてWildLight」その2

 

Posted on 18 Oct 2016 23:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh

「博多で翻訳勉強会」、すごい学びの機会に参加できたことの幸運を、ずっと噛み締めながら毎日の仕事に取り組んでいます。



「博多で翻訳勉強会」関連レポート、前回の記事からだいぶ間が空いてしまった。

テリー齊藤さんの講義「翻訳チェック、そしてWildLight」、後半はテリーさんご自身が開発されて無償配布されている、最強のチェックツール「WildLight」についての説明とデモだった。

「WildLight」は、Microsoft Wordのアドインマクロとして機能するチェックツールだ。
テリーさんのツイートでたびたび目にしていて、とても気になっていたが、期待通りのパワフルなものだった。

このツールのすごさは、実際にダウンロードして使ってみないと分からないと思うので、まず以下に入手先である公開リンクを置いておきたい。
WildLight - Microsoft Word Addin for Translators

「WildLight」は、(用語集などの)あらかじめ決められたルールを辞書ファイルに格納しておき、翻訳後に対象となるMicrosoft Word文書内でこれを実行すると、ルールに基づいた形にバッチ変換していくツールだ。
対訳ファイルも生成できるようになっている。

ツールと一緒に、テリーさんご自身が製作した、JTFスタイルガイドや英英辞典、またエラーしやすい単語集などの辞書ファイルが無償配布されている。
これだけの辞書ファイル、(とんでもなく恐れ多いが)わたしが製作者のテリーさんだったら、万里の長城を築いたぐらいの達成感を味わってしまいそう。

講義では、各自でニーズに応じた辞書ファイルを作る方法まで懇切丁寧に伝授していただき、実務での活用に思いを馳せながら聞き入った。
本当は講義後さっそくWildLightを使ってみたかったが、事情により現在の作業環境がMac OSのため、Windows OSでの作業に戻ったらぜひ試し、またリポートしたい。

中田亨さん著「ヒューマンエラーを防ぐ知恵」

またWildLightを活用すると、数字を色分け表示(数字ごとに別の色の蛍光ペンでマーク)して打ち間違いが一目瞭然になるなど、人間の知覚(視覚や聴覚)に訴えたアプローチで、うっかりミス(ポカミス)を防止できる。

さらにWildLightを活用した作業に最適化された、テリーさんの翻訳チェックフローは家宝ものだ。
それは、クロスチェックとリライトをあえて前工程に入れることで、自力で見つけるチャンスを与え、いかに自分が頻繁にミスしているかを自覚し、自己鍛錬を促すというものだ。

わたしはテリーさんのおっしゃった、「ミスを最初から出さない、職人としての翻訳者であろうとする姿勢、継続的な鍛錬」という言葉が、勉強会以降、ずっと心に残っている。

近年、CATツールの急速な台頭により、効率化が一層要求されてきている。
翻訳者として働き始めた当初は、自己鍛錬のために英文はできるだけ自力でスペルアウトし、頭の中に単語や文法などを叩き込む努力をしていた。
それなのに、年々こなすべき業務量が増えていくにつれ、効率的な作業ばかりを追求し、CATツールやスペルチェック機能など、機械の補助ばかりに頼るようになっていた自分がいた。

Twitterでフォローしている金融翻訳のベテランで、訳書や著書多数の鈴木立哉さんのようなすごい方でも、毎日翻訳力を向上するトレーニングに時間を割いていらっしゃる。
このような地道な努力の積み重ねが、次第に大きな実力の差になっていく。

フリーランス翻訳者の端くれとして、自らのスキル向上のために日々努力をし続けることは義務でもある。
いっぽう日々の業務で忙殺されるばかりなのであれば、テリーさんのおっしゃるように、その業務の中にこそ自己鍛錬の機会を組み込むことで、「一石二鳥」を目指すことはよい考えだと思った。

テリーさん配布の資料では巻末に、「ワイルドカード」についても基礎の説明が添えてあった。
何度も読み返し、実践したい。

テリー齊藤さんによる、セミナー当日に関する記事

テリーさんのウェブサイト「翻訳横丁の裏路地」

9月24日「博多で翻訳勉強会」関連の記事:
9月24日博多で翻訳勉強会②:テリー齊藤さんが教えてくださった「翻訳チェック、そしてWildLight」その1
9月24日博多で翻訳勉強会①:しんハムさんが教えてくださった「翻訳支援ツール超入門」
博多で翻訳勉強会と懇親会

ちなみに11月29日に東京は市ヶ谷で開催される毎年恒例の「日本翻訳連盟(JTF)翻訳祭」にて、テリーさんやしんハムさんも講義を持たれることになっている。
わたしも11月28日にインドから到着する便で帰国して、参加する予定だ。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



Share it with


User Comments