9月24日博多で翻訳勉強会①:しんハムさんが教えてくださった「翻訳支援ツール超入門」

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Posted on 26 Sep 2016 23:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh

これから3日間は、翻訳どっぷり祭りでお届けします。トップバッターのしんハムさんの講義で、まずは横っ面を殴られました。



一昨年に東京・市ヶ谷で毎年開催されているJTF(日本翻訳連盟)主催の翻訳祭に参加した際、セミナーを受講したときは、満員の会場で遠くからしか拝むことができなかった「しんハムさん」。
今回博多の翻訳勉強会では、45名あまりの会場で少し距離が近づいた気がした。
Twitterアイコンのイラスト通りの気さくなイメージの方だ。

しんハムさんは講義「翻訳支援ツール超入門」で、長年さまざまなツールをご自身で使いこなされ、そうした経験からツールのメリットとデメリットをじっくりと語ってくださった。

CAT(Computer Assisted Translation)ツール」と呼ばれる、翻訳メモリ等、作業者を支援して翻訳効率の向上を図るツールは、現在は無料のものを含めるとかなりの種類がある。
中でもSDLの「Trados」がもっとも有名で、普及率も高いようだが、価格も10万円を超える高額である点がネックとなる。
わたしは「Trados」のほか、インド在住のため発展途上国割引で非常に安く導入できた「Wordfast」をインストールしているが、Macでも実行できる点を除いて、使いにくさを感じていた。

しんハムさんイチオシのツールは「MemoQ」で、Tradosの半額程度でありながら、機能性も遜色なく、さらに翻訳者よりのユーザビリティとしっかりしたサポート体制が特徴とのこと。
このほか無料で導入できるFelix、また秀丸マクロ、Macでも使えるOmega T、Open TM2などのお話をされた。

わたしにとって、もっともショックだったのは、「正規表現」についての言及だ。
「正規表現(Regular Expression)」という単語だけは何度も聞いたことがあったが、翻訳にもそれを活用できることを、恥ずかしながら今まで知らなかった。
しんハムさんは、「(ワイルドカードやAutoHotKeyなどの)正規表現は、翻訳者として最低限知っておくべきだし、使いこなしていて当然だ」というようなことをおっしゃった。
この時点で、業界の標準から2、3歩、遅れを取っているような気分になり、さっそく勉強してみることにした。
これについては、また別の記事を割いてじっくりとまとめようと思う。

2番目にショックだったのは、「ツールというのは、インストールしたものをそのまま使うのでなくて、機能をしっかりと把握して、自分が使いやすいようにカスタマイズできていなければ、使いこなせているとは言えない」ということ。
わたしはTradosも、「使いづらいな」と思いながらほぼデフォルトで使い続けていた。

実は当日、翻訳業界で知らない人のいない「帽子屋」の高橋聡さん(禿頭帽子屋の独語妄言 side A)もサポートで駆けつけていらっしゃったが、高橋さんのブログでも、かなり細部に渡り(使いにくさも含めた)TradosのことやCATツールのことを、具体的な使い方とともに記事にしていらっしゃったため、わたしも困った時に度々読みに行ったりしていたのに、いったい何を学んでいたのだろうかと、恥ずかしい気持ちになった。

このほか、しんハムさんは翻訳作業にはモニターを最低限2台置くことを強くお勧めされていた。
その際には、わざわざ新しくモニターを購入せずとも、持っている資産を活用して、LAN経由で別々のパソコンをつなげることを教えていただいた。
たとえばデスクトップをメインに、ラップトップをサブに使っている場合は、この2台をLANで繋いで、1台のキーボードとマウスで操作できる、Microsoft Without Bordersや、Input Directorなどのソリューションがある。
さらにモニターのアスペクト比は少なくとも16:9、可能であれば16:10(DELL製)がお勧めとのことだ。

わたしの場合、停電がまだ多く、またホコリっぽいインドに在住しているため、自宅にデスクトップPCを置いていない。
また、我が家は狭いので書斎がなく、ダイニングテーブルで作業している。
持っている資産といえば、13インチのWindowsラップトップPCと、11インチのMacbook Air、そしてiPad miniだ。
かつてiPad miniを、専用アプリを利用してサブモニターとして使用することを試みたことがあったが、動きがカクカクしており、また画面が小さすぎて疲れてしまったので、最近はもっぱら原稿を表示するためだけに使っている。
2モニター化については、どのようにすれば自分なりに導入できるかを、引き続き検討していきたい。

最後にしんハムさんは、特に産業翻訳業界の今後の展望として、オンラインツールで複数の翻訳者をつなぎ、機械翻訳と組み合わせて作業する「Post Edit」という形態の業務がますます増えていくだろうとの暗黒の予測をされていた。
そんな状況でも自分が納得のいく仕事をし続けていくためには、「作業者でなく翻訳者であろうとすること」という翻訳者側の意識が非常に大切だとおっしゃっていた。

すなわちツールに関するセミナーながら、講義中一貫してしんハムさんがきっぱりと語っていたのは、「ツールはあくまで効率を上げるためのもの。品質に関しては、ツールを使用することで下がることはあっても、上がることはない」という考え方。
これは、フリーランスになってからツールを使う機会が増えたわたしも、日々うっすらと実感していたことだった。

そしてツールを使うのは、あくまで人間であり、すなわち品質を守ることは人にしかできないということを、下図の円が示すように「ツールが直接翻訳の内容に作用するようであってはならない」と戒めながら、繰り返しおっしゃっていた。
 


その根本的な考え方をもとに、それでは人力に頼らざるをえない品質の担保を、どのようにすれば効率的かつ確実に行えるのか、というお話を、次のテリー齊藤さんがご自身の開発された品質保証ツールのデモとともに、詳しくレクチャーしてくださった。

しんハムさんのホームページ「TRA Cafe



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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