インドに再生可能エネルギー発電の時代が本格的に到来か:原子力を凌ぐ規模に
Posted on 19 Mar 2016 23:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh
原文記事の中では、「海外企業はこぞってインドに原子力発電技術を売り込もうと躍起になっているが、金になるいっぽうで、事故による直接的な被害からは遠ざかっていられるからだろう」というようなことが書かれていました。
*The picture from SunEdison
3月19日付の「The Better India」が、再生可能エネルギーによる発電の比率が原子力発電を上回ったことを伝えた。
Cheaper Renewable Energy Soars Past Nuclear Power In India
この記事によると、現在のインドにおける電源構成は、石炭と天然ガスによる火力発電が80%近くの比重を占めており、原子力発電は3.2%に過ぎないが、再生可能エネルギーに対する注目が高まる中、その割合は5.6%に達し、原子力発電を凌ぎ、かつここ数年で、予想を上回る急速なペースで成長している。
グジャラート州の原発で今週発生した放射能漏れ事故を挙げるまでもなく、再生可能エネルギー発電は原子力発電よりも安全面で信頼性が高いことと、後述の背景より、インドにおいてはより安価に実現・展開できる可能性がある。
インドの再生可能エネルギーの大部分は風力発電によるものが占めている。
太陽光発電については、2016年2月現在、設備容量は5,775メガワットだが、インド政府は2022年までに10万メガワットまで拡大、再生可能エネルギーによる発電を火力発電に次ぐ規模に成長させることを目標としている。
ちなみにインドの原子力発電容量は現状5,780メガワット、建設中の発電所規模は1,500メガワット、建設承認を受けた発電所規模は3,400メガワットほどとなっている。
データ分析に基づく報道サービスを提供する「IndiaSpend」によれば、太陽光発電や風力発電は、設置コストが安くなりつつあることも、急成長の一因となっている。
昨年11月にはインド火力発電公社(National Thermal Power Corporation:NTPC)に対し、米のサンエディソン(SunEdison)社が、続いて今年1月にはフィンランドの公営電力大手フォルトゥム(Fortum)傘下フォルトゥム・フィンスルヤ(Fortum FinnSurya:在デリー)が、それぞれ消費電力量(kWhr)あたり4.23ルピー、4.34ルピーを提案、水力発電と原子力発電よりも安価となっている。
なお、現在タミル・ナードゥ州クダンクラム原子力発電所では、それぞれ1,000メガワット級の発電容量を謳う発電設備2基の増設工事を行っているが、工事が順調に進んだ場合で同6ルピー前後と、再生可能エネルギーよりも割高だ。
しかも工事は相変わらず難航しており、いつ完成するかの見通しが全く立っていないという。
このように原子力発電所の建設には、平均して10年以上の歳月を要することが通説となっている。
一方で、太陽光発電や風力発電の設備は、容量次第では数週間から数カ月程度で建設できることから、政府に頼らず個人や空港、民間企業などで設置を決められる点もメリットが大きい。
参考: 認定NPO法人登録まであと一歩!SWGPの活動ご紹介
課題として、原子力発電のように24時間365日、稼働できるメリットが、現在の再生可能エネルギーにいはない点だ。
暫定的な解決策として、利用可能な時には再生可能エネルギーを使用し、それ以外は石炭ではなく、より二酸化炭素の排出量が少ないクリーンな天然ガスによる火力発電所で電力需要を補うという方法だ。
現在、天然ガスの国際的な取引価格も低下している。
太陽光発電はまた、1メガワットの発電に2ヘクタールとされるほど、膨大な面積の土地を必要とする。
このため、ラジャスターン州、グジャラート州、ヒマーチャル・プラデーシュ州、ラダックの一部など、農地に適さず、野生生物の生態系にも乏しい、乾燥した土地が候補として挙げられる。
また都市部では、建物屋上のスペースにパネルを設置するなどの措置も提案されている。
日々の報道記事からは、インドではたとえば牛糞燃料を利用した発電、また家庭排水やゴミから発生するメタンガスを利用した発電などの研究も進んでいることがうかがい知れる。
ちなみに日本では、原発事故前の原子力発電の割合は30%前後と、電源別では最も大きな比重を占めており、2030年までには20~22%前後に落ち着かせることを目標としているようだ。
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Yoko Deshmukh
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インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
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