10月に突入しても居座るモンスーン、そんなある日の午後

 

Posted on 04 Oct 2019 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

素敵な人、尊敬できる人は、いつだってわたしたちの一番近くにいます。



交差点で信号待ちをしていたら、遠くの方で雷鳴が轟き始めた。

もう10月というのに、プネーにはまだモンスーンが居座っていて、1日に1回はどこかで雨が降っている。
空もどんよりと暗い。

1年のうちの大部分を、晴天の乾燥した気候が占めているプネー。
しかし今年のように長く激しいモンスーンが続くと、束の間でも太陽が顔を覗かせると、久しぶりの青空にさすがにホッとする。
雨の気配が遠ざかれば、たちまち「オクトーバーヒート(セカンドサマー)」の暑さが顔を覗かせてくるはずだ。

さて、朝は晴れていたのに、昼下がりになるとまた灰色の雲が空いっぱいに広がってきた。
雨季の晴れ間で一層埃っぽくなった交差点で、一陣の強風が周囲の砂粒を巻き上げた。
「あっ」と思った時にはすでに遅く、わたしの目に異物が入り込んだようだ。

ところでわたしは強度の近視で乱視も入っているため、コンタクトレンズは高校生の時からハード一択である。
こんな時、目が開かないほどの激痛に見舞われて、どうにもならなくなることは、ハードレンズを使用したことのある方であればよく分かるだろう。

涙が止まらなくなった右目を押さえながら異物が押し流されるまでじっと耐えるわたし。
ようやく嵐のような痛みが落ち着き、恐る恐る目を開けると、そこには心配そうな顔をした見知らぬ女性の姿があった。

「大丈夫ですか?」と声をかけてくださったその女性の背後には、スクーターにまたがり同じく案じるような表情を浮かべた男性がいた。
「あっ、大丈夫です、すみません。コンタクトレンズを使っているものだから...」と慌てて答えると、途端に2人とも安堵の表情になった。
人目をはばからず号泣しているように見えたわたしを心配して、わざわざ停車して様子を見てくれていたようだった。

ちょうど到着したウーバー(Uber)に乗り込む時にも、笑顔で手を振ったら満面の笑みで手を振り返してくれた。
おかげで、なんだかとてもじんわりほんわかした午後になった。

もし、わたしが同じような場面に遭遇したら、彼らのようにその人に関心を向けることはできるだろうか。
しかも相手は、言葉も通じないかもしれない外国人である。

本当の豊かさとは、広く揺るぎない心の余裕にあるのだなと改めて思った。

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About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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