ビルヤーニーのルーツはイランにあり:ムンバイーの本格イラン料理店
Posted on 30 May 2018 21:00 in トラベル・インド by Yoko Deshmukh
写真はベンガルールの老舗イラーニー料理店、「Ayeeda」のベリー入りビルヤーニー。いつかイスファハーンにビルヤーニーのルーツを訪ねることが、いまから楽しみです。
シッダールタが、なぜか「Yes Bank」の「Agriculture」ページに掲載されていた記事を送ってきてくれたので読んでみたら、ムンバイーのポワイで評判の本格イラン料理店、「SodaBottleOpenerWala」のイラン人料理長と思われるアニダ・パルヴェズ(Anida Parvez)という人物が、ビルヤーニー(बिरयानी)の起源について明快に説明していたので興味深く読んだ。
PERSIAN COOKING IN INDIA - Yes Bank
イランでも、インドのアーユルヴェーダに通ずるとされる「Tebb-e-Sonnati」と呼ばれる伝統医学があり、人々は日々、この考えに沿って調理された食事を取ることが望ましいとされている。
ペルシャ料理は数世紀にもわたりインド料理に大きな影響を与え、またインド料理からもスパイスの使い方や調理法などの影響を受けてきた。
また、肉(特に赤肉)を過剰に消費することは身体に毒であると信じるギリシア医学の影響もあり、野菜をふんだんに取り入れた料理法が発達した。
素材が本来持つ温や冷の性質を、薬味や調味料で調節し、バランスを取る手法にも、インド料理との共通性を見出すことができる。
特にライスはペルシャ料理の中心にあり、ペルシア語で「弱火で時間をかけ、圧力を逃さずじっくり火を通した料理」を表す「ダム・ポフト(Dam Pokht)」(※ファールスィー発音について東京の浅田豊先生より教えていただいて修正)と呼ばれる手法で調理が行われる。
インドでは、窯のふちを小麦粉を練った生地で密閉し、旨味を閉じ込めて作る「ダーム・ビルヤーニー(Dum Biryani)」などに、その手法が見られる。
アニダ氏によれば、現代インドのいわゆる「ファールスィー」や「イラーニー・カフェ」など、ペルシャにルーツがあるとされている場面で提供されている料理の数々は、実際にはペルシャ人たちがインドに上陸してから1200年近くの間に、当然インド(特にグジャーラーティー)やイギリス、ポルトガルの影響を多分に受け独自に変化してきたものだ。
それぞれ独立したジャンルとしてみると素晴らしい料理だが、当然のことながら元のペルシャ料理からかけ離れたものになってしまった。
なお、ビルヤーニーの起源はイランのイスファハーン(Esfahan)で食されていた料理にあるとアニダ氏は説明する。
語源となるのは「火で焼く」という動詞を意味する「ベルヤン(Beryan)」で、ビルヤーニーとはもともと、マトンの挽肉(通常は羊)に軽くスパイスで味付け、肉汁だけを使ってじっくりと火を通し、調理したものを、ナーンで挟んで食べるものだった。
この料理がムガール帝国の拡大とともにインドに伝わると、兵糧として便利だった米を使うようになった、とアニダ氏は考えている。
インド化したビルヤーニーの具は鶏肉、魚、そして野菜のみなどと様々なバリエーションが生まれ、世界的にはインド料理として知られることになっていった。
「しかし、元のビルヤーニーはあくまでムガール朝ペルシャの首都だったイスファハーンを起源とするものだ。その元祖『イスファハーン・ビルヤーニー』とも呼ぶべき料理、『Beryani-e-Reyhoon』が食べられるインドで唯一の店こそ、(ムンバイーは)ポワイの『SodaBottleOpenerWala』なのだ。」
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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