信心や宗教の本質に忠実に生きる、ケーララ州のヒンドゥー教徒たちとイスラーム教徒たち

 

Posted on 10 May 2018 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

地球上の誰もが、この村の人たちに倣えばよいのに。



ドイツ文学者の小岸 昭(こぎし・あきら)氏が共著した「インド・ユダヤ人の光と闇」を読んでいる。

インド・ユダヤ人の光と闇―ザビエルと異端審問・離散とカースト(徳永 恂、小岸 昭)

冒頭に、次のようなくだりがある。

「(引用開始)ケララ州はインドの周縁的な位置にあって貧しいとはいえ(中略)東西交渉史ににおいてとりわけ重要な役割を果たしてきた。そこには、反ユダヤ主義の根強いヨーロッパ諸国では考えられない、寛容な風土が広がっていたし、それは現在も変わらない(引用終了)」
そんなケーララ州を、まさに象徴するような記事を見つけた。

同州のマンジェシュワラム県にあるウデャヤワル(Udyavar)という村では、ヒンドゥー教徒たちが毎年恒例で実施する、神輿を担いで行進する「ラース・ヤトラ(Rath Yatra)」祭りには必ず、モスクへの巡礼も行い、さらに毎年この祭りにはイスラーム教徒たちも参加しているという、とても珍しい場所だ。
「The Times of India」電子版が伝えた。

Kerala: Here, Muslims take part in a temple 'rath yatra' - The Times of India

主にケーララ州やカルナータカ州のヒンドゥー暦で新年にあたるヴィシュー(Vishu)月になると、この村に古くからあるスリー・ウディヤワラ・アラスマンジュシュナート(Sri Udyavara Arasumanjushnath)寺院の僧侶に率いられた、いわゆる檀家にあたる人たちが、新年の祭りへの招待状を携えて100メートル離れた場所に建つジャマート・モスク(Jama'ath Mosque)まで行進し、「愛と尊敬を込めた」ヒンドゥー新年祭への招待状を、モスクを管理するイマムたちに手渡すことになっている。
これを受けたイマムたちは、この招待状を心から受け入れて、5年に1回、モスクが主催する祭りへの招待状を返礼として渡すという、なんとも微笑ましい交流が、少なくとも100年以上は続いている。

この不思議な慣習の始まりは、ある伝説に由来する。
かつて、このヒンドゥー寺院に宿る神々が海を渡ってこの地に到着した時、既にあったモスクの管理人たちが心からの歓迎をもって出迎えた。
その歓待に喜んだ神々が、毎日モスクに詣でてイスラーム教徒たちを祝福することに決め、また信者たちにもこれを求めたという。
さらに、この絆を破壊しようとする者は誰もが、不審な死を遂げるという言い伝えもある。

この地区で税務官(District Collector)を務める男性の言葉が、心温まる交流の本質を要約している。
「(ヒンドゥーの)寺院と(イスラームの)モスクがこのような形で手を携えることは、単に平和的な宗教的共存を示しているだけではなく、偏狭な宗教的考察を超えた人道的統一を成り立たせている例でもある」
 





      



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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