昨日もお伝えした通り、日本語能力検定試験の受検者数が毎年2,000人を超えるとされる、インド日本語教育の「メッカ」とされるプネーの中でも、日本語学科があることで有名な大学のひとつ、「Tilak Maharashtra Vidyapeeth(TMV)」。
この大学のサダーシヴ・ペス(सदाशिव पेठ)キャンパスで3日に開催された、日本語学習者による日本語の「のど自慢大会(Singing Competition)」に、畏れ多くも審査員としてご招待をいただき、ちょうどはるばるプネーへ遊びに来ていた日本人の友人、Tさんと一緒に行ってきた。
カリヤーニー・ナガルから捕まえたウーバーの運転手さんが、迷路のようなプネー下町の地理に詳しくなく、わたしも自分のスマートフォンのグーグル・マップとにらめっこしながらナビすること30分、開始時刻の午前10時ぎりぎりにキャンパスに到着した。
会場内は既にむせかえるような熱気であふれており、知った顔2、3と挨拶を交わすと、早々に「審査員席」に通された。
「先生」だなんてめっそうもない...
審査員席には我々2名のほか、国際交流基金から派遣され、現在TMVの日本語BA()学科1年生を対象に教鞭を執られている平賀先生と千田先生、同じく青年海外協力隊(JICA)の派遣でプネー大学の日本語学科の学習者を教えていらっしゃる日本人の先生、そして我々を招いてくださった日本語学科総長のシュリカント・アトレ(Shrikant Atre)さんが座られた。
TMVでヒンディー語や社会学などを学ぶ日本人留学生が、自前の演奏器具を持ち込んで「前座」で「恋ダンス」を、「トリ」でウルフルズ(?)の「ええねん」を元気いっぱいに歌い踊り、会場を盛り上げた。
遠く離れた慣れないプネーで生活しながら、粘り強く学業や活動にがんばる彼らのことを、さまざまな方々から伝え聞き、知っているので、わたしはなんだかじーんとしてしまった。
きりっとしたサラリーマン姿に扮して「明日があるさ」を歌うグループ。少し上級生。
懐かしの反戦ソング「翼をください」をメロディアスに歌い上げるグループ。
こちらも少し上級。
なお、中央の男の子の使っている服飾器具を「吊りバンド」と呼んでいた平賀先生に萌え。
ブルーの衣装で揃えて「島んちゅぬ宝」を歌った上級グループ。
沖縄県民ではないものの、九州出身者としてはグッとくる選曲。
マイクの前に立つ男性が「ハモり」を担当し、情緒豊かに歌い上げたのは、「365日の紙ひこうき」。
紙ひこうきを飛ばすパフォーマンスも。
このグループが優勝を勝ち取った。
こちらはBA1年生、すなわち日本語を学習してまだ半年の、ラーダちゃんクラスメイトによるアニメ映画「君の名は」のテーマソング、RADWIMPSの「前々前世」。
難しい曲を、自前の演奏で信じられないほどスムーズに歌ったのは立派だ。
すべての曲目の審査を終えた我々審査員は別室へ通され、サンドイッチやチャーイの軽食をいただきながら集計しつつ、楽しい歓談タイムを過ごした。
集計用紙。
ところが、すっかり堪能して後は安心して表彰式を見守るだけ、と油断していたわたしに、なんと「審査発表係」というとんでもない重責がいきなり言い渡された。
コンペという性格上、順位を付けることこそがモチベーションの源になるとは言え、心の中では全員に拍手喝采しながら、3位から1位までの発表を務めさせていただいた。
審査員を務めさせていただき、楽しんだのはこちらなのに、お礼までいただいてしまった。
インド独立運動の志士で、プネーにガネーシャ祭りをもたらしたロクマンニャ・ティラクの伝記。
内容は全文、日本語で書かれている。
さらに1輪のバラと、1,000ルピーもの謝礼まで。恐縮。
その後、まさかの大トリ中のトリ、平賀先生による「かぐや姫」の「妹」のご披露もあった。
歌詞の内容は少し複雑で、会場内にいた日本語学習者の皆様はどの程度、その深淵なる意味合いをキャッチできているのかちと怪しいものの、しんみりと聴き入っていた。
平賀先生の堂々たる美声に、会場の熱気は最高潮のままに幕を閉じたのであった。
昨日の記事では、日本の歌をこれほど熱心に練習してくださった学習者の皆様には全員に満点を付けたいぐらいだ、と語った。
実際には、個々のグループの練習量の差が如実に現れる内容になっており、全日制に在籍する学生よりも練習時間の取りにくい、社会人学科等の定時制(パートタイム)通学者にとって不利ではないかと気になった。
また、プログラムの進行が全体的に「日本語初級者 → 上級者」となっていたため、いっそのこと日本語レベルを総シャッフルしたらよかったのでは、という改善点はあった。
なお、アトレさんが会の冒頭でそれぞれの審査員を紹介してくださった際に、当サイト「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」について触れてくださったため、後から会場内の何名かの方々に「いつも読んでいる」とお声をおかけいただけたのは、個人的にとても感激だった。
中には「写真家の三井昌志さんの記事を見て三井さんのファンになり、写真集も購入した」とおっしゃる、若き日本人研究者の女性もいらっしゃった。
当日の模様を集めたフォトギャラリーはこちら。