現時点での期限は3月31日まで:アーダール・カードをついに申請、その流れ

 

Posted on 05 Feb 2018 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

予想通りと言うか、悠久のインド4,000年の歴史を感じる、ヨーガのように実にゆったりとした職員の作業を眺めるひとときとなりました。



インドで生体認証情報つき個人識別証、アーダール・カード(Aadhaar Card)を取得する人のために、必要情報と取得の流れを以下に記しておく。

なお、2月5日現在、予期せぬ理由で(申請から数カ月も経ってから)「技術上の不備」で却下されたとの事例も聞こえている。
申請の際には上級そうな職員に必要書類を何度も確認し、また担当職員が申請情報を端末に入力し終えたら、決定する前に可能な限り端末の画面が見えるところまで回り込んで、内容を2度、3度とよく確認し、また印刷した申請受理書が渡されたら、それも署名する前に子細に確認する。

そして申請後は、発行される14桁の登録番号をもとにUIDAI(インド固有識別番号庁)の公式ウェブサイトでその行方をこまめに追跡する、などの方策を取られたい。

1) まず、自宅近くのアーダール登録センターを探す(※UIDAI公式ウェブサイト上にあるプネー市内のセンター一覧)。
2) 登録センターを特定したら、UIDAIの公式ウェブサイトでオンラインで申請予約をする。一応、オンライン予約は行列の待ち時間の短縮を目的として謳っている。
3) 身分証明書や住所証明書(インドに住む外国人のほとんどはパスポートおよびPAN(納税者)カード)を用意する。
4) 申請書を入手し(PDF)、必要事項を記入する。
5) 上記3) と4) の書類一式と、必要に応じて銀行明細などの書類を、1) のセンターに持参、生体情報(指紋と虹彩、顔写真)を登録する。
6) すべての書類と生体データが確認されると、後日自宅住所に14桁の登録番号が記載された登録票の確認通知が届くので、この番号を用いて発行されるまでは申請の受理状況を確認できる。

参照:Apply for Aadhaar card: Here's the process

わたしは本日、ずっと延ばし延ばしにしてきたアーダール・カードの申請を、シッダールタの会社で働くナゲッシュさんの助けを借りて、近所のイェラワダ(Yerwada)にある派出事務所で行ってきた。

人々は相変わらず、列に並ぶでもなく無秩序に押し寄せ、カウンターとおぼしき空間に群がる混沌とした事務所内は鉄道駅を思わせる。
彼ら、いつ順番が回ってくるとも分からぬ人たちを横目に、順番待ちを代行してくれたナゲッシュさんに感謝しつつ、担当職員の女性が空くのを待った。
わたしの前に申請の手続きをしていたのは、どっかりと巨大な体躯を大儀そうにプラスチック椅子にもたせかけた、朱色の化学繊維サリーをまとった中年の女性で、夫なのか小柄な男性がてきぱきと書類を出し、また職員とコミュニケーションを取っていた。

職員も、たくさんの人が待っているのだから、もう少し効率よく作業を進めればいいのに、同僚とおしゃべりしながら、ものすごくゆっくりした動作でひとつひとつのプロセスをこなしているように見える。

わたしの順番が回ってきた。
事前にアーダール・カードの発行を司るUIDAI公式ウェブサイトから申請書類をダウンロードし、内容を記入した紙を渡すと、職員の女性は両手指1本ずつを使ってキーを1個ずつ打ちながら、ゆっくりのんびりとその情報を入力していく。
「オンライン登録とかないのかよ。何のためのアーダールだよ」と心の中でツッコミを入れまくりながら、その様子をただ眺めるしかなかった。

さて、ひと通りの入力を終えた女性が、かなり年季が入り、大勢の指紋でベタベタになった指紋読み取り機と、同じく年季の入った小型カメラ、そして薄汚れた旧式のVRヘッドセットのような形をした虹彩読み取り機の順に差し出し、わたしの生体情報を登録してゆく。
読み込んでいるマシンは、いかにもプロセスの遅そうな安物エースース(ASUS)製ノートパソコン。
案の定、しょっちゅうハングしているようで、女性はその度に同僚に助けを求める。
しかし同僚もよく分かっていないようで、やれこれしろ、あれしろ、と言っている間に、とうとうカメラが臨終し、連動してパソコンが強制再起動されたようだ。
当然わたしの生体情報も飛んだことを、女性がわたしでなくて隣の同僚に笑いながら話したことで了解した。

また初めからベトベトの指紋読み取り機に左手4本指、右手4本指、両手親指の順で指の腹をギリギリと押し付けられる刑、(人がマラーティー語を理解できないと思って)「目が小っせえから読み取りにくいんだ」などと陰口を叩かれながら煤けた虹彩読み取りを目元に押し当てられる刑を繰り返し、カメラを2回交換して顔写真もようやく撮影、すべての流れが完了したのは、30分以上経過してからだ。
最後に女性が、付き添ってくれていたナゲッシュさんに「こいつどうせマラーティー分からないんだろ?」と書類の確認を求めようとしたので、彼が答えるより先に「分かるよ、さぁ話せ」と言ったときの、彼女たちの目は文字通り点になっていた。

莫大な人口を抱えるインドで、1名のアーダール登録にこれだけの悠久の時間をかけていては、モーディー首相の言う「デジタル化」までは程遠いと言わざるを得ない。

※2月6日追記:後から聞いたところによると、こういう出張所(今回わたしが申請したのは行政区(Ward)管轄の税金申告所のようなところ)で雇用されている「職員」は、正式な公務員ではなく、女性の活用を目的とした、日本で言うところのパートのような人たちだったようだ。
だとしたら、こんな人たちが操作するオンボロのマシンで、生体情報のような個人情報のハンドリングを任せてもいいのだろうかという別の不安も。





      



About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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