テーランガーナー州バラプールに逃れたロヒンギャたち、夜間学校を開校

 

Posted on 27 Sep 2017 21:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh

生きることを諦めないことを、いわゆる難民たちから学ぶのです。



※ワット・アルンから眺めたタイ・バンコクのチャオプラヤ川。2012年。
 

日本を含めた世界の情勢が、刻一刻と曇り空になってきているように感じられる昨今。

日本にも隣国からの難民が押し寄せる可能性も否定できないし、ましてや日本人が難民にならないとは言い切れないという指摘があることも、友人がSNS上で共有していた記事から知った。

長有紀枝さんに聞いた「難民になる」可能性は、日本の私たちにだってある - マガジン9

こんな時代だからこそ、人類の英知が成熟しつつある21世紀を生きるわたしたちは、世界のどこかで今日も起きている悲劇や惨劇を、他人事と考えず、自分事として想いを及ばせる態度が必要だ。

そうした中「New Indian Express」電子版では、インドの隣国ミャンマーの少数民族で、住んでいた故郷を突然焼き討ちされて大量の難民となり、現在テーランガーナー州バラプール(Balapur)のキャンプで避難生活を送るロヒンギャたちが、自主的に毎晩、夜間学校を開き、勉学を教え合っているという活動について紹介していた。



 

Telangana: Night school at Rohingya Muslims camp in Balapur a symbol of hope for immigrants - New Indian Express

ちなみに記事のタイトルが「refugees(難民)」ではなく「immigrants(移民)」となっているのは、誤記ではなく意図したものだろうか。
意図したものだとすると、報じる側からも彼らに対する心意気を感じ取ることができる。

間違いなく現代における最悪の人権侵害や迫害を受け、虐げられてきたロヒンギャの多くは、母国語以外の言語を話すことができない。
そして命からがらバングラデシュやインドに逃れても、行く先々で疎まれ、冷淡に扱われてしまう。
キャンプで営む先の見えない避難生活は、物資や満足な衛生環境も得られないことがない過酷なものだ。

一見、絶望的な状況の中にあって、「少なくとも生きてこられたこと」を、かけがえのない価値なのだと語るロヒンギャたち。
このうちバラプールに逃れてきた人々は、1日も早く自立のきっかけが掴めるようにと、夜間に勉学を教えるコミュニティ学校を開校した。
この学校では、ロヒンギャたち自身の中から教師(「マスタージー(Masterji)」)が立候補し、20名の大人を含む42名に数学と英語の基礎を教えている。

マスタージーのひとり、35歳のシャムスル・アラム(Shamsul Alam)さんは、ミャンマー政府軍の武力攻撃により足が不自由になった。
「50~100ルピーという少ない額だが、生徒たちのカンパにより月給までもらっている」同紙の取材に応じて語った。

授業は、アスベストで覆われ、100ワットの薄暗い裸電球がひとつだけ灯る小屋で毎日午後11時まで行われ、ロヒンギャたちが共同体として2,000ルピーの月額賃料を支払っている。

なお子供たちは、徒歩圏内にある国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が運営する学校で、基本的な初等教育を受けることができるようになっているものの、国籍がないために国公立や私立の高等教育機関のために進学することが難しい。

夜間学校は、真っ暗なトンネルの中にいるロヒンギャたちにとって、一筋の光となっている。
自らが生まれ育った国を含む、あらゆる共同体からの差別に直面して、圧倒的に不利な状況の中にありながら、自立して生きていくことを決して諦めない不屈の精神を持つ民族の存在は、心底称賛に価すると、記事では締めくくっている。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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