いつのまにか14年:ASKSiddhi(アスクスィッディ)も「中二病」になっちゃわないように

 

Posted on 19 Aug 2017 21:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

インドの、日本の、そして世界中の「誰か読んでくれている人」のために、今日も発信を続けています。



※分かる人には分かっちゃう、4月の友達の誕生会の時のケーキを流用。
 

2003年8月19日。

その日は確かパート勤務が午前中シフトだったため、当時住んでいた神奈川県相模原市の木造アパート2階の自宅で冷房をかけ、寝転がって読書をしたりと、暑い午後をのんびりと過ごしていた。
およそ1カ月後には、このアパートを引き払ってインドへ移住することは、もう決めていた。

インド。
それまでは11月から2月にかけての乾季しか知らなかったから、「日本がこれだけ暑いのだから、インドはもっと暑いのだろうな」とか、未知のインド暮らしについて、日々あれこれと思いを巡らせていた。

その時、パソコンに向かって「Microsoft Frontpage」でページデザインを作成していたシッダールタが、空白のコンテンツ部分を指さして言った。
「このページに、インドについて思うことを書いてみたら?インドのニュースを翻訳してアップロードしてもいいし」

そのアイデアにすぐさま飛びついて始めたのが、「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」だ。
その日はシッダールタが、おすすめ元記事を用意してくれていた。

ニューヨーク停電:インドレストランが食事の無料提供(2003.8.19) - ASKSiddhi

そのころはSNSなどもないし、インド情報を検索しても、在住者がコンスタントに発信しているページがなかなかヒットせず、ましてや旅行者によるお決まりの「ガンガー」、「カレー」、「汚い」が三大キーワードとして満載のホームページや掲示板など以外に、「今のリアルなインド」が伝わる情報を見つけるのは難しかった。
そこで、「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」でなるべく「みんながまだ知らない、今のリアルなインド」を発信したいと思った。

それに、わたしは基本的に無知で無学、かつ引きこもり体質の人間のため、自分の陳腐な意見や体験談よりも、インドのメディア(当時はニュースサイトこそ少数だったが質は今よりもよかった)が報じる最新の話題を和訳していく方が、更新を継続する動機になりそうだし、自分にとっても学びになると判断したのだ。
誰が読んでくれるか分からないが、ネットに発信する以上、必ずいつかは誰かの目に触れる。
それだけを励みに、「Frontpage」を使うためのHTML用語を覚え、毎日コツコツと和訳作業をしていくことが、ひとときの楽しみになっていった。

その年の10月にインドへ渡り、プネーに住居が見つかるまでの2カ月間は、シッダールタ実家のあるマハーラーシュトラ州アコラ(Akola)に滞在させてもらっていた。
辛うじて通じたダイアルアップ接続によるネットの速度は致命的に遅く、また料金も高かったので限定的にしか繋げず、記事のネタは英字新聞からピックアップし、オフラインでコンテンツを作成した上でアップしていた。

またアコラで暮らしていた2カ月間は、義母(アイー)が心を込めて作ってくれた、なかなか普通の人が味わえないようなマハーラーシュトラ州アムラワティ [Amravati] 地方の家庭料理の奥深さに舌鼓を打ち、ローカルならではの親戚づきあいや近所づきあいもいろいろと体験でき、そうした日々を(時には理解できないこと、消化できないことをぶちまけてしまうような形になってしまったとしても)綴ることは楽しかった。

今でこそ、特に仕事で忙しくなってくると、記事を作成する作業を面倒に感じてしまうこともある。
しかしあの頃は、名もなき町アコラに住む、たった一人の外国人だったわたしは、記事を作成してアップロードする瞬間の、ダイアルアップ接続が立てる「ビー」という音が、「今、世界と繋がろうとしている」と実感させてくれて、ワクワクしたものだ。

以来あっという間に14年が経過、「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」はなんとか継続し、友人、仕事、ラジオ番組出演、雑誌の取材など、様々な縁をわたしに呼び込んでくれた。
その中には、全面的にわたしの怠慢のせいで、とどめることができずに手放してしまった縁も数多くあるが、どんな出会いも、出不精なわたしにとっては「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」なくしては、あり得なかったものと言ってもよい。
「ほぼ毎日、何かを発信するだけで、ネット空間で自らの存在を主張でき、好きなことを一生続けていくためのきっかけを掴むことができる」、昨年通った「かさこ塾」のかさこさんが語っていた通りだ。

近年は、深い知識と教養をもとに、ためになるだけでなく、読んで面白いインド関連情報を、日本語で発信している媒体も豊富に存在するようになった。
SNSも高度に発達しているので、情勢は激変している。
そうした中でも、「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」を変わらず見に来ていただけるような、魅力的な価値を提供できるよう、日々是工夫が座右の銘だ。
また本音を綴りつつも、誰が読んでもある程度は楽しめるような、個人的になり過ぎないコンテンツは保っていきたい。

わたしにとっては、「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」の更新作業に向かっているひとときは、「これを読んでくださる見えない誰かと繋がろうとしているのだな」という、あのダイアルアップのワクワク感が蘇る瞬間でもあり、幸せな日々である。

これからも「ASKSiddhi(アスクスィッディ)」に、引き続き遊びに来ていただけたらうれしい。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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