相模大野時代のこと、お金のこと

 

Posted on 19 Jun 2017 23:00 in ASKSiddhiのひとりごと by Yoko Deshmukh

幼いころから強い貯金癖のあるわたしは、収入があればまず大部分を貯金に回して、残りわずかな資金での生活を試みる、ということを楽しみながらやっています。



※相模大野で2人暮らしをしていた安アパートは、今も健在で、現役だった。
2017年6月16日。
 

人付き合いのあまりないわたしだが、最近、会う人ごとに新婚当時のことやインドに住むことになった理由を訊ねられることが多くなったので、ここに少しまとめておきたい。

新婚当時、両親は神奈川県相模原市に住んでいたので、半年ほど同居させてもらってから、近所に安アパートを見つけて引っ越した。
それが2002年冬。

そのころ、わたしは相模大野にあったスーパーマーケットの総菜売り場のパートとして、厚生年金や健康保険を引いた手取りで月10~12万円ほどの給与を得ていた。
シッダールタはインドで始めたネット関係のビジネスを自宅で運営しながら、やはり同じスーパーの鮮魚売り場のアルバイトとして、月7~8万円ほどをもらっていた。

そこでシッダールタの給与には手を付けず、10万円でやれるところまでやろうということになった。
住んでいたアパートの家賃は4万円、そこに水道光熱費で多い時は2万円弱ほどの出費があるとして、4~6万円あまりでの生活だ。

ところが、いざとなったら余剰の7~8万円が毎月入ってくるという安心感さえあれば、一般に物価が高いとされる首都圏でも、意外と限られた予算内で生活できるものである。
これは、フリーランス稼業をしている現在とは異なる、「Salaried employees」最大のアドバンテージである。

実際、生活はかなり質素なものであったが、貧困というほどではなく、金はなくとも時々は小田急相模原にあったパキスタン人経営のエスニック食材店でアター(Atta)やダル(Dal)等を調達し、勤め先のスーパーで新鮮な野菜や魚などを仕入れて自炊し、それなりに楽しんでいた。
また近所に両親が住んでいたころは、野菜や米を分けてくれたり、冬はストーブの灯油が切れそうな頃合いに救世主(母)が現れて、灯油のポリタンクを満タンにして持ってきてくれたりしたし、やはり相模大野駅近くに住んでいる祖母が毎週、食パン1斤を近所のベーカリーで買って「寄付」してくれたりしていたので、そうした助けも大いにあったのだ。

よく、「収入がないから結婚できない」という人がいるが、わたしの持論は真逆で、収入がないからこそ結婚すべきではないか。
そうすれば所得はほぼ2倍となり、住居も1つに集約でき、自炊も効率がよくなり経済的だ。

相模大野時代の思い出深いエピソードとしては、休日に上野公園までパンダを見に行こうということになり、わざわざ電車を乗り継ぎ出掛けてみたら、入場料金が600円、2名で計1200円という出費を突き付けられ、そのまま踵を返したことや、外食は一世一代の贅沢であり、マクドナルドでバーガーまたはポテトだけとか、サイゼリアで一番安いミラノドリア1つだけとかの注文をし、店員からやや白い眼で見られたりしたことだろうか。
また、金がかかるので社交を最小限に絞ったことは、今に至る引きこもり体質を作ってしまったかもしれない。

結婚してから両親との同居期間を含めた約2年間を、このように慎ましくも楽しく過ごした後、経済成長が目立ち始めたインドに今のうち、なるべく若いうちに慣れておこうと、2003年末に移住してきたのである。
シッダールタの月給を貯めたお金は、今もプネーで住まいとしているアパートの購入資金となった。

結婚生活は始まりから今に至るまで、このように一般論と照らして決して輝かしいものではなかったが、不思議とお金に困った経験をした実感はまるでない。
自分たちである程度コントロールできていた自覚があったからだろう。

インドに移住してからも、ほぼゼロの状態から生活を組み立ててきた。
この時も、シッダールタ両親が、倉庫に眠っていた使い古しの家具類や食器類、カーテンやベッドシーツに至るまでを、たくさん分けてくれたことが新生活を始めるにあたって大いに助かった。

例えばフリーランスで翻訳稼業をしているわたしだが、未曽有の仕事不足に見舞われて収入が途絶えてしまったとしても、お金に困ることはないと思う。
それは、普段からある程度しっかり貯蓄をして備えているということもあるが、「お金なんて少なければ少ないなりになんとかやっていける」という感覚を、身体に刻み付けたからでもある。
さらに、プネーでも家賃高騰の嵐は数年前から吹き荒れている中、自分たちのものになったアパートで暮らしている限りはその影響に左右されることもなく、野菜や日用品など、日常生活にかかる出費は比較的軽くて済むインド暮らしの利点は無視できない。
実際、これまで家族の危機のたびに、かなりの出費を余儀なくされたことが数回あり、その度に多額の貯金が流出してしまったのだが、幸いにして体勢を立て直すのにさほど時間がかからない境遇で生きて来られた。

お金は便利だし、あるに越したことはないが、お金に振り回されるような人生だけはごめんだ。
そのためにも、コツコツと日々の仕事に打ち込み、努力を惜しまないことが何よりも大切だな。

ちなみにシッダールタは2005年に自ら立ち上げたIT会社を現在も経営しているが、給与は社員の誰よりも低いので、こちらもほぼ貯蓄に回している。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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