1億6,000万人のバングラデシュにただひとり、女性サイクルリクシャーワーリー
Posted on 17 Feb 2017 23:00 in インドビジネス by Yoko Deshmukh
この世界には、人として当たり前の生活はおろか、人を人たらしめている、お互いの尊重や、心の通い合いといったものから、あまりにも遠くにいることを強いられている人たちが少なからずいます。
本日、「クーリエ・ジャポン」に掲載されていた藤川大樹さんのコラムを読んで、隣国ミャンマーの過激派仏教徒による暴力と、不当に差別され続ける少数派イスラーム教徒ロヒンギャたちの置かれている苦境について読み、ものすごく考えさせられた。
暗殺、集団強姦、憲法をめぐる対立…岐路に立つスーチー政権|『ミャンマー権力闘争』著者緊急寄稿
この国の抱える深い闇や混乱に加えて、「少数派」ロヒンギャたちの運命を思う。
虐げられたロヒンギャたちは周辺諸国に難民として流出、辿り着いた先でも人権を無視され、命さえ軽んじられていることは、誰もが知る通りだ。
当然、イスラーム教徒が人口の多数を占めているバングラデシュにも難民として流出しており、深刻な国際問題となっている。
経済開放して間もないころから、ミャンマーを出張で訪れたことのある日本人から、(特にインド人との比較という文脈で)「仏教徒の国だから」穏やかな性格の人が多く、仕事がしやすいということを、よく聞いてきた。
しかし、その定義は必ずしも当たっていないこと、「過激派仏教徒」という非常に危険な存在が少数派のイスラーム教徒たちに暴力的な行為を尽くしている国があることを、同じ仏教徒として知っておきたいものである。
2つの隣国の抱える重い課題に、暗い気持ちになっていたところへ、バングラデシュは第2の都市、港町チッタゴンで、唯一の女性サイクルリクシャーワーリーとして活躍している方について、ヒンドゥスタン・タイムス(Hindustan Times)紙が報じていた。
Defying conventions: The tale of a lone female rickshaw puller in Bangladesh※
現在45歳のモサンマット・ジャスミン(Mosammat Jasmine)さんは、「アジアで最も保守的な社会」とされるバングラデシュで、社会背景的に非常に珍しい女性リクシャーワーリーとして生計を立てている。
「変なおばさん(Crazy Auntie)」などと悪口を言われてしまうことも多いが、「息子たちを育て、きちんとした教育を受けさせるため、神に与えていただいたこの身体を使って働くことにした」と誇りを持って語る。
それでも5年前に開業した当時は、それは度肝を抜かれたものだという。
夫が別の女性と蒸発し、3人の幼い息子を抱えたジャスミンさんにとって、旧来の家政婦や縫製工場の作業員といった仕事では、満足に家計を支えらず、ましてや子供の教育など夢だった。
それが、サイクルリクシャーワーリーとしてのデビューのきっかけだった。
当初は、「男の仕事をしている」と罵倒されたり、客からの「乗車拒否」に何度も遭遇したという。
中には男性の運転手と同じ運賃を支払うことをしぶるような、あからさまな差別もあった。
1日8時間の運行で、日給600タカ(およそ8米ドル)を稼いでいる。
2015年時点のバングラデシュの1人あたり平均所得が1,314米ドルであることを考えると、比較的よい収入層であると言っていいだろう。
昨年からは、電気自転車を導入し、仕事がだいぶ楽になったようだ。
今では顔見知りの同業者が、ジャスミンさんを見かけると親しみを込めて話しかけてくるようになった。
人口1億6,000万人のバングラデシュで唯一の女性リクシャーワーリーとして、多くの人に勇気を与える存在になっている。
※リンク先にはジャスミンさんが働く姿が豊富に画像として掲載されているので、ぜひご覧ください。
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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