21世紀を生き抜くためにインドが最も必要としているもの
Posted on 29 Jan 2017 23:00 in インドあれこれ by Yoko Deshmukh
教育なくして未来なし。衣食住にも事欠く人たちがまだ多く存在するインドに、質の高い教育という命綱が誰の手にも握られる社会が来るよう、常に考えて行動していきたいです。
先日、ある方とゆっくり夕食をともにする機会があった。
その時、地球上には今、人口爆発の一方で、加速度的に発達する人工知能に人間の存在意義自体が脅かされているかのような時代が到来、増えすぎた人類が共存するためには、われわれ先進国の人間が、これまで通りの生活を少し諦めてダウングレードする覚悟がないと、大量殺戮しか生き残る手段がないような、まるで悪夢の時代が訪れてしまうかもしれない、という話になった。
人々はネット情報を、まるで手のひらの英知であるかのように信じ、それゆえ大衆の思想のコントロールは、かつてないほど簡単になりつつあるようだ。
そんな時代を明るく前向きに生きていくためには、やはり本物の教育というのが絶対に必要になる。
言わずと知れたことだが、インド民衆の大部分は、基本的な教育すら受けることができていない。
昨日付の「The Better India」で、教育の普及はもちろん、抜本的な質の向上に取り組む女性のブログ記事が紹介されており、その考え方に共感できるので、抄訳したい。
TBI Blogs: Here’s How We Can Overhaul India’s Education System to Ensure the Right to Education for Everyone - The Better India
著者は、すべての子供に教育を届けることを使命に活動するNPO団体、「Teach for India」の創始者、シャヒーン・ミストリ(Shaheen Mistri)さん。
「Teach for India」では、教育の不平等と質の低下を是正することで、最終的にはインドが持つ潜在性を最大限に引き出すことを理想として掲げ、活動している。
独立インドの憲法が発布されたことを記念する、今年で68回目となる1月26日の共和国記念日に寄せて、憲法に明記された「すべてのインド国民に正義、自由、そして地位と機会の平等を保証する」との条文が、70年を経ようとするいまもなお絵に描いた餅に過ぎず、すなわち国家としての最も基本的な約束が守られていないと厳しく糾弾する。
「インドの子供は、先進的な教育システムと有能な教師なくしては、21世紀を生き抜くために必要なスキルや価値を享受できることは、決してないだろう」ミストリさん。
また近年、教育の役割が、一個の人間としての総合的な成長を促す媒体としてではなく、試験に合格させるためのラットレースを助長する手段になり下がっていると指摘、急速に変化していく世界で、子供たちが未来を生き抜くための準備をするためにも、教育制度の改革が急務だと訴えている。
ミストリさんによれば、高所得層の子女が通うような私立学校の教育水準は、年々向上している一方、恵まれない家庭から、やっとのことで子供たちを通わせているような学校では劣化が激しく、すなわち教育の内容が時代遅れであったり、教師自身が無学であったりといった重大な欠点がある。
「すべての子供に教育を」としてインド政府が掲げる「Sarva Shiksha Abhiyan」政策の下、確かに学校の数、そして教育を受ける子供の数は大きく進歩したが、その内容にはまったく重点が置かれていないという。
「社会的、経済的背景がどうであれ、子供は例外なく、優れた教育を受けられなければならない。そうしなければ国家として光明はなく、埋もれた可能性が見い出されることは決してない」とミストリさん。
すべての子供が優れた教育を受けられるような改革をもたらすためには、コミュニティ全体が一丸となって責任を負う意識で、時間や資源、思考を投じて、教育制度を改善する方法を練る必要がある。
今こそ、インドは憲法で保証されている基本的事項を、すべての人が享受できる国となるための、「第2の自由独立運動」に向かって動き出す時だ、と力強く締めくくっている。
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Yoko Deshmukh
(日本語 | English)
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。
ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.
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