リスボン到着翌日の11月5日は、リスボンの一風変わった旅行会社、「We Hate Tourism Tours(WHTT)」が主催する、シントラとユーラシア大陸最西端ロカ岬(Cabo Da Roca)を巡る1日ツアー、その名も「X-DAY TRIP SINTRA CASCAIS」に参加した。
待ち合わせ場所はロシオ広場。
朝9時ごろ、待ち合わせ場所ロシオ広場に現れたのは、予想通り2人の超イケメン。
この日、ツアーに申し込んでいた人は15人ほどおり、バンが8人乗りなので、2つのグループに分かれることになった。
ただし、それぞれガイド次第の、まったく別のコースを辿るのだという。
わたしたちを担当してくれたのはペドロ(Pedro Dias Costa)さん、ちょっと(かなり)額こそ後退気味だけど同年代と見られ、シントラまでの道中は幅広ビューの助手席に座らせてもらう幸運を得たのだが、ハンサムかつ英語も流ちょうで話がおもしろく、気遣いも抜群な、すてきな男性だった。
往路は高速道路を使い、あっという間にシントラに到着、その道中で、目的地のことはもちろんのこと、ペドロさんのこと、ポルトガルのことなど、いろいろなお話を伺うことができた。
イケメンの隣で素敵な街をドライブ。冥途の土産になったよ。
ペドロさんはもとは歯科技工士だったが、旅行好きが高じて現在の仕事に至ったという。
昨年はインドも訪れ、「旧領地」ゴアではもちろんサーフィン等を楽しんだ。
リスボンには幼いころから住んでいるが、近い将来、少し南の街に移住してサーフィンや趣味のビデオ編集にもっと打ち込みたいと考えている。
そんなペドロさんは、YouTubeにチャンネルも持っている: Pedro Dias Costa
またなぜか犯罪率についての話になったのだが、ポルトガルには死刑はなく、懲役刑は最高でも25年、しかしほとんどの受刑者が獄中で行動を改め、刑期を切り上げて出所する。
塀の中では再犯を防ぐための様々な教育が実施されるほか、出所後も元受刑者が社会にスムーズに溶け込めるよう、政府による命令で一般企業が一定の枠を設けて採用することで、安定した職を保証し、元の犯罪者に戻ることのないような措置を講じている。
とにかく朝から晩まで、ツアーの道中ずっと喋りっぱなしの大変元気な方だった。
あっという間にシントラへ。リスボンから所要およそ30分。
シントラの街では、有名菓子店ピリキータ(Piriquita http://www.piriquita.pt/?lang=en)で、念願のトラヴセイロ(「枕」という意味のお菓子で、軽いパイ生地の中に甘さ控えめのアーモンドクリームが詰まっている)を食べた。
トラヴセイロとガラオン、ガロト(いずれも濃さの違うミルクコーヒー)。
しかしペドロさんから「ピリキータでケイジャーダは食べないで!僕がもっとおすすめのを買っておくから」と言われたのでぐっとがまんした。
ケイジャーダとは、もうひとつのシントラ名物菓子で、細かく砕いた塩抜きチーズと、細かく砕いたココナッツ、シナモンなどの香辛料が詰まったタルト。
このケイジャーダ、どこの店のか訊くの忘れてしまった。
そういえばピリキータで一緒にお菓子を食べた、同じツアー参加者でサンフランシスコから来たアメリカ人大学生カップルのうち彼のほうが、なんと高校生の時にプネのマザーテレサハウスへボランティアに来ていたという。
2人は現在、大学の交換留学プログラムでスペインの大学に在籍して学んでいるそうで、若いうちに異国にしばらく滞在して、このような旅が経験できることはとてもうらやましい。
ピリキータ。
シントラの街並み。
雨が風情を添えている。
雲の上には城が。
その後、謎の城跡「レガレイラ宮殿」を1時間ほど散策した。
この日はリスボンを発つころから雨がちで、シントラでも降っては止みという不安定な気候だったので、まるで雲の中に浮かぶような、この宮殿の怪しさが一層引き立った。
お城の井戸。
高いところからの眺め。
低いところからの眺め。
ハリーポッターか。
テニスコートの片隅にて。
雨風がさえぎられて快適。
どなたかがすてきな演出を。
みんな写真を撮っていた。
そういえば、この宮殿跡で日本人旅行者らしき女性たちとすれ違った。
ランチは、絶品ショリソー・サンドイッチと緑ワイン「ヴィーニョヴェルデ」を、これまた絶品チーズやチェリートマトと一緒に、市場にある屋台(バン)で立ち食いという新しいスタイル。
この市場で絶品チーズをいろいろ試食して、2種類を購入した。
市場にて。
ランチの準備をしてくれているペドロさん。
お腹がいっぱいになったら、いよいよユーラシア大陸最西端、ロカ岬(カボダロカ)へ。
バンを降りるや風速30メートルぐらいの強風が吹き付け非常に寒い。
それでもペドロさんはまっすぐ記念碑に行くようなことはせず、立ち入り禁止っぽい柵を無視してずんずんと進み、断崖ぎりぎりまで連れて行ってくれた。
波はかなり高いものの、幸い雨は上がっていた。
ここから水平線まで遮るものがない真っ青な海と、自由に大空を乱舞するカモメを見ていると、往時のポルトガル人冒険家たちがなぜ、世界を目指し大航海に乗り出したのか、なんとなくその気持ちが伝わってくるような気がしてきた。
「まっすぐ行くとブラジルとかですか?」とペドロさんに訊いたら(愚問)、「残念ながら(アメリカ合衆国)ニュージャージー州さ。冒険家たちは真っすぐ船で進んだつもりだったんだろうけど、風に吹かれて南半球まで行っちまったってところかな」とのこと。
崖からはスマホの落下を恐れて写真を撮る勇気が出なかった。
大西洋を初めてこの目で見た感動。
ひとつ心残りだったのは、カボダロカに生えていた肉厚の植物、あれは何だったのかペドロさんに訊くのを忘れた。
しかしGoogle先生がちゃんと教えてくれた。
思う存分、往時の冒険家たちを未知の世界への船出へと駆り立てた、ユーラシア大陸最西端の風を全身に浴びたところで、次なる目的地ギンチョー浜へ。
ここは夏になればサーファーズ・パラダイスという感じのところらしく、サーフィン・ショップやカフェなどが数件建つだけで、あとはゴアを思い起こさせるようなシンプルな浜辺。
ギンチョー浜。
ウィンドサーフィンをしている人や、パラグライダーをしている人がいる。
突然、ツアー客のひとり、イタリア人お母さん(2人のお母さんとその娘たちが参加していて、うちお母さんたちの年齢は50代と思われるが、非常に若々しい)がビーチランを始め、瞬く間に見えなくなってしまった。
ウィンド・サーフィンを眺めたりしながら、30分ほどみんなそれぞれ、思いにふけりながら浜辺を歩いた時間は、とても貴重ですばらしかった。
カシュカイシュの浜辺。
カシュカイシュの街並み。
カシュカイシュはすてきなリゾート地、リスボンのお金持ちが別荘を持っているのだという。
コーヒー飲みながら散策した。
コルクの絵葉書を買った商店も、インド系の人が働いていた。
リスボンで泊まった宿の近くの商店は、バングラデシュの人が働いている。
カシュカイシュ駅前の風景。
ペドロさんが、ここにバンを止めてくれたので、みなそれぞれ自由行動した。
リスボンと違って高層の建物はほとんどない。
サンティアゴ巡礼の道標が。
いつかは行きたい。
リスボンへの帰りは高速道路を通らず海沿いの美しいドライブコースを取ってくれ、しかも待ち合わせ場所と違うところで降ろされた。
ペドロさんいわく、「円にしてしまったら旅が完結してしまうだろう。また次も会おう、ずっとよい旅を続けてください、という願いを込めて、あえて同じ道を通らないし、同じ場所に帰らないのさ」とのこと。
イケメンは言うことも違う。
別れ際には、時間を惜しまずリスボンで地元の人が行くような、オススメのレストランをたくさん紹介してくれたペドロさん。
このツアーは、本当に地元のお兄さんが、あれこれ連れて行ってくれるような、気軽なもの。
参加者もそのつもりで来ている人たちばかりなので、それぞれが自分の楽しみを上手に見つけて味わっているという感覚がとてもよかった。
また会えたらいいな。
リスボンに帰って来てから、さっそくペドロさんが教えてくれたお店のひとつ、
「Casa de India Lisboa」(リンク先はASKSiddhi)へ。
ペドロさんが降ろしてくれたカモンイス広場には「Web Summit」のでっかいレリーフが。