1982年映画「Gandhi」を最も象徴する、たった1分半の場面

 

Posted on 17 Aug 2016 23:30 in エンターテインメント by Yoko Deshmukh

顔の表情そして全身から、すべてを訴えかける力のある、オーム・プリさんの魂の演技に、観る者は引き込まれます。



大英帝国からの独立を、ガーンディが主導した非暴力不服従の力で勝ち取ったインド。
だが、今度は分離独立を望む一部のイスラーム教徒と、ヒンドゥ教徒との間での憎悪が渦巻き、暴力的な闘争が泥沼化、各地で血なまぐさい殺戮が繰り広げられる悲劇が続いていた。

そうした争いを憂い、長期に及ぶ断食で抗議するガーンディが、弱った身体を横たえている。
群衆をかき分けて現れるオーム・プリ(Om Puri)、作中での名はナハリ(Nahari)で、ヒンドゥ教徒である。
ガーンディに「これを食え!」とチャパティを投げつける。
 


ナハリ:「俺は地獄行きだ。[聞き取り予想] あんたが命を犠牲にしたところで俺の魂は救われない」
ガンディ:「誰が地獄へ行くかは、神のみがお決めになることだ」
ナハリ:「俺は子供を殺した。頭を壁に叩きつけてな」
ガンディ:「なぜだね」
ナハリ:「俺の小さな息子を殺されたからだ。ムスリムが、俺の愛する息子を殺した」
ガンディ:「地獄から逃れる道を知っている」「子供を見つけなさい。両親を殺された子供を。殺されたお前の息子ぐらいの男の子をね。その子を、お前の息子として育てるのだ。ただし、必ずムスリムでなければならない。そして、ムスリムとして育てなさい」

BGMも特殊なカメラワークもない、たった1分半の、この場面が、1982年公開のリチャード・アッテンボロー(Richard Attenborough)監督映画、「Gandhi」を最も象徴するシーンとして、オスカー賞授賞式では字幕付きで上映されたという。

Richard Attenborough’s ‘Gandhi’ changed lives of all of us: Om Puri - The Indian Express

ボリウッドなどのインド映画には疎いと言わざるを得ないわたしだが、このオーム・プリという俳優さんは大好きだ。
2006年のコメディ映画「Malamaal Weekly」から、最近はヘレン・ミレン(Helen Mirren)との共演が素晴らしかった2014年の「The Hundred-Foot Journey」(邦題は「マダム・マロリーと魔法のスパイス」)まで、出演作は偶然にも、けっこう観ている。
どの作品も、オーム・プリさんの顔の表情や全身の雰囲気からにじみ出る、登場人物の感情が、ストレートに伝わって来る。

この方と、日本でも公開された「The Lunchbox」(邦題は「めぐり逢わせのお弁当」)のイルファン・カーン(Irrfan Khan)さん、そして「The Japanese Wife」のラフール・ボース(Rahul Bose)さんは、わたしにとっての「3大俳優」だ。

ちなみにイルファン・カーンさんは、第二次世界大戦の敗戦国日本を裁く「極東国際軍事裁判」、通称「東京裁判」で、唯一中立的な立場から被告の全員無罪を主張したことで知られるラダ・ビノード・パール(Radhabinod Pal)判事を描いたドラマシリーズで、パール判事役として撮影中という情報がある。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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