インド最高裁、「子どもの教育差別禁止」方針を主張

 

Posted on 12 Feb 2025 21:00 in インドの政治 by Yoko Deshmukh

UNHCRなどの推計によると、デリー都市圏だけで、2,000~3,000人のロヒンギャ難民らが在住するとされています。



インド最高裁は、ロヒンギャ難民の子どもたちが公立学校や病院などを自由に利用できるようにするため、中央政府およびデリー政府に対し差別的な取り扱いをしないよう指示を求める嘆願書を審理中だ。

No child will be discriminated against: Supreme Court on plea for Rohingyas’ access to public schools

Surya Kant判事とN. Kotiswar Singh判事は教育における差別禁止を主張、最高裁として来週には、中央政府およびデリー政府に対し、市内のロヒンギャ難民の子供たちが学校や病院を利用できるよう求める嘆願書を提出する予定だ。

ロヒンギャの人権問題に取り組むNGO団体「Rohingya Human Rights Initiative」の代表として出廷した上級弁護士Colin Gonsalves氏は、ロヒンギャはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)に難民として認定されていることに触れ、詳細を記した宣誓供述書を提出したと述べた。
その上で、裁判所の求めに応じ、10日後の審理を期限にロヒンギャの世帯の場所および所有者などの詳細を提出する。

Gonsalves氏によれば、NGO団体はロヒンギャ難民がアーダール・カード(Aadhaar Card、国民識別番号の記載された公的身分証明書)を持っていないため、子供たちが公立学校に通えず、病院も受診できないと主張している。

同氏によればロヒンギャ難民らはデリーのShaheen Bagh、Kalindi Kunj、Khajuri Khasなどの地区にある、主にスラム街に居住している。

政府に対し、アーダール・カードの有無にかかわらずロヒンギャの子供たち全員に無償で入学を許可し、政府が身分証明書を強制することなく、10年生と12年生、卒業を含むすべての試験を受験できるようにするよう指示を求めている。

公立病院での無料医療サービス、政府スキームである「Antyodya Anna Yojana」で利用できる補助金による食糧支援、市民権に関係なくロヒンギャの世帯が利用できる食糧安全保障法に基づく給付など、すべての政府給付の拡大を求めた。

主な争点は、アーダール・カードを所持していないロヒンギャ難民の子どもたちが、学校入学や病院の受診などの公共サービスを利用できるかどうかである。
ロヒンギャはUNHCRから「難民」として認定を受けているにもかかわらず、アーダール・カードを持たないことで事実上の排除が生じているという。
最高裁は今後、いかなる子どもも教育において差別されることがないようにするための方策を検討すると見られている。

インド最高裁の姿勢として、司法が明確に「教育差別のない社会」を示唆、ロヒンギャ難民をめぐる法的地位が確定していない段階でも、「子どもに対する差別は許されない」という方向性を強く打ち出している。
特に、IDを持たないことで公共サービスから排除される現状を「違憲または違法」と判断する可能性がある点が注目される。

インド最高裁が差別を明確に禁止し、政府に対して具体的な是正措置を命じる判決を下せば、ロヒンギャに限らず他の難民や国内避難民の権利拡大に大きく寄与する可能性がある。
実効的な監督制度や行政側の実施体制の整備がカギとなる。

インド最高裁が「子どもに対する教育差別を許さない」という強いメッセージを打ち出した背景には、IDをめぐる制度上の制約が、弱い立場にある難民層を深刻な教育・福祉の格差へと追い込んでいる現状がある。
一方、日本でも在留資格や言語の壁などにより、難民の子どもたちの教育や福祉が十分に保障されているとは言いがたい。

「一律の公的身分証明を欠く子ども」が公共サービスから排除されがちであるという構造的問題は両国に共通するため、教育・医療・福祉が本来、子どもの将来の可能性を大きく左右する基盤であるだけに、「国籍や在留資格を問わず、すべての子どもが最低限の権利を享受できる仕組み」をどのように整備するかが、今後ますます国際社会の注目を集めるだろう。






About the author

Yoko Deshmukh   (日本語 | English)         
インド・プネ在住歴10年以上の英日・日英フリーランス翻訳者、デシュムク陽子(Yoko Deshmukh)が運営しています。2003年9月30日からインドのプネに住んでいます。

ASKSiddhi is run by Yoko Deshmukh, a native Japanese freelance English - Japanese - English translator who lives in Pune since 30th September 2003.



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